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新たなる強敵

 早川と駅前で別れた俺は、ようやく家に辿り着く。辺りは薄暗くなり始めていた。


 ──よかった。パフェを食べたあとは、いつもの早川だった。やっぱり約束を守るのは、大事だよな。


 自転車を停めて、自宅に入ろうとしたところで、俺はピタリと動きを止める。

 辺りは薄暗くてハッキリとは見えない。


 ──ああ。やめてくれ。それだけはダメだ……


 背筋を、震えがはしる。

 ギシギシと首がなるような幻想に襲われながら、ぎゅっと目をつむり、俺はゆっくりと横を向く。


 ──みたくない。本当に見たくない。でも、もし見間違いならそう、確定させておきたい。


 嫌だ嫌だと内心大声で叫びながら、うっすらと目を開ける。

 少しでも見ないですむように。


「おかえりなさい、ユウト」

「っつ!」


 突然のことに、思わずビクッとしてしまう。クロが家から出てきて挨拶してくれたのだ。

 その衝撃で、思わず目を、開いてしまう。


 飛び込んでくる家の壁の光景。

 そこにはびっしりと、ヌメヌメとした軟体動物がいく匹もいく匹も張り付いていた。


「ぎゃぁぁぁー」


 思わず叫びながら、手頃な物に抱きついてしまう。

 クロのホログラムを俺の腕が突き抜け、その本体のドローンをかき抱くようにして抱き締める。


「ナメクジが、苦手なんですか。ユウトは」

「く、クロ! そのワードは、禁句だから!」

「はあ。了解しました。とりあえず家に入られては」

「お、おう」


 俺は壁の方を見ないようにして一気に駆け抜ける。


「はぁ。はぁ。もう嫌だ。そ、そうだ! く、駆除業者を!」

「ナメクジくらいなら、いつもみたいに簡単にご自身で駆除できるのでは?」

「クロ! だからそれは禁句だから!」

「はい」

「──置くタイプの殺虫剤すら触りたくない! だいたい絵が書いてあるし。何よりあいつらが、これから食べるものに触れるとか、絶対無理だから!」

「はぁ。そこまでですか……」

「ああああ」


 俺は思わず耳を押さえて意味不明の言葉を発してしまう。


「なら、緑川さんたちにお願いしてみるのは?

 普通の人はナメ──」

「クロッ!」

「はい。普通の人はあれらをそこまで恐れないので。殺虫剤なりなんなりで倒してくれるかもしれませんよ」

「うぅ。頼んでみてもいいの、かな?」

「ダメ元でも聞いてみる価値はあるのでは? それでユウト」

「うん?」

「そろそろ離してくれませんか」


 俺に抱き締められた状態のクロ。

 俺はクロの言い分はあえて無視して、くつを履きなおすと、目を閉じてドアを開ける。


 そしてそのまま緑川さんたちの家に向かって猛然とダッシュした。

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― 新着の感想 ―
塩かけようぜ
[一言] えっと……………………普通のナメクジ?
[一言] 魔素をふんだんに仕込んだ[塩]容器と 握りしめた拳の中の塩を さらに投げ撃つように ─── 討つべし ────
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