白光
どくどくと、全身が脈打つ。
それは自分自身の体の境界がなくなり、溶けていくような、不思議な感覚だった。
体感的に、俺の中で二割ぐらいを、因果律と進化律由来の力が占めている。
その二つは比較的俺の体内の、表層近くにあったようで、まずは先にその二柱の力が俺の中から、クロへと移っていく。
それだけで、俺の異形と化していた体にも変化が起きる。
無数に生えていた触手のようになっていた腕が、半減していく。
闇と化した腕が中身を失い、宙に溶けるように、塵芥になって消えていく。
俺の体のシルエットがそうやって少しだけスリムになるにつれて、俺とクロの繋がった部分を通じて、クロの感じているものが俺にも伝わってくる。
幸悦と、苦悶。
歓喜と、苦痛。
それらがない交ぜになって、時に割合を変えつつ、クロの中で渦巻いていく。
それが、手に取るように、まさにクロが感じているままの感覚と感情として、俺に共有されてくる。
俺は思わずクロへと注ぎ込まれていく力の奔流を、抑制してしまう。
ただ、一度勢いのついた流れを完全に止めることは、力の主たる俺でもすでに不可能だった。
なので俺のしたことは、ただ、流れ込む力の奔流に抑揚をつけただけの結果となる。
それでも、完全に無駄ではなかった。
クロの苦悶と苦痛の感覚のタイミングでは力の奔流を抑え。
逆に幸悦と歓喜を覚えている時には抑制を緩める。
そうすることで、クロの感じる幸悦と歓喜の感覚が、明らかに増していく。
そうしているうちに、二柱の神の力は完全に俺の中から流れだす。
──なくなった。
次に待っていたのは、俺の中で長年かけて溜まり続けていた力。ダンジョンと化した自宅での生活によって積もるように集められたもの。
それが次に俺の中から表へと噴出し、そのまま直接、クロへと流れ込み始める。
その変化は、劇的だった。
苦悶と苦痛が混じっていたクロの感覚が、一変する。
まさに、喜び一色に染まる。
クロからすると、自身の存在の根幹を形づくるものと、完全に同一のそれが、大量に注ぎ込まれてくるのだ。
なんの抑制も不純物もなく。
クロ自身の存在が、高みへと強引に引き上げられ続ける。
ただ、余りの喜悦は、逆に、力を受け入れる作業においては負荷が高まったとも言える。
ここまで来るともう、俺の力の放出の抑制も、クロには関係ないようだ。
法悦とも言える感覚だけが無限にクロの中でフィードバックされハレーションを起こし始める。
それでも、目の前に在るクロの顔は、ただただ、幸せそうだ。
──不思議、だ
急速に異形の部分が消失して、縮んでいく俺の体に対して、クロの生体には、その力のハレーションが一見、表層に現れてこない。
ただ、そのクロの黒髪だけが、根本から白く染まり、そしてすぐに眩しいほどに輝き始める。
そのクロの髪より発せられた輝きが、元から白かった俺たちのいるスペースの空間をさらに白く白く、包み込んでいく。
世界が、真なる白に、染まっていく。




