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レアモンスター?それ、ただの害虫ですよ ~知らぬ間にダンジョン化した自宅での日常生活が配信されてバズったんですが~【コミック三巻発売!】  作者: 御手々ぽんた
第六部 人道

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愛の形

 無数のうごめく触手のような腕に埋もれながら、俺は手渡した早川の魂の行方を視線で追う。


 おしいだくように受け取ったクロが、眷属たるワケミタマドローンのパスを通してその魂を早川の肉体の元へと送る。


 そもそもが魂は肉体への帰巣性が高い。

 わざわざこんな手間をかけなくてもほぼ間違いなく、解放された魂は肉体へと自然に戻るのだ。


 ただ、俺としては早川のことに関しては万全を期したかった。


 そのかいあってか、無事に早川の肉体が魂を取り込んでいく姿がワケミタマドローンのホログラムに映っている。


「ユウト様、現在ホログラムおよび音声は一方通行としております」


 早川の様子をじっと見つめる俺に、クロが囁くように告げる。

 それは、クロの優しさだった。


 異形と化した肉体と、それへと適応してしまった自身の精神。

 それを早川に見せたくないだろうという、配慮。


 俺は感謝するように、頷き返す。


 その俺が頷く様子が、まるできっかけだったかのように。

 クロがさらに一歩、さらに俺の方へと歩み寄ってくる。


 ただでさえ、手を伸ばさなくても届くほどに近い距離にいたクロだったが、その一歩で、そのお互いの距離はほんの紙一枚の隙間が残るぐらいに近い。


 俺が前のままであったなら、顔を赤らめてしまっていたほどに、クロの顔が間近にある。


 ポタポタと力を垂れ流してしまっている俺のそれほど近くに在れるのは、もう、クロとたぶん、オボロぐらいだろう。


 実際のところ、オボロを除く者たちはみなそんな俺たちを遠巻きにしている。それでも辛そうな姿が見え隠れしている。

 それにオボロですら、俺から二歩は離れた距離だ。


 そんな至近距離までつめてきたクロが囁く。


「ユウト様。ユウト様のフルダイブされていない肉体はまだ人の形をとって在ります。──はい、わかっております。今のままユウト様がそちらに精神をお戻しになれば、その人としての肉体の方でも、変質が起きるでしょう」


 俺が言葉を発せずとも、その意思をくんだクロが自問自答するように俺に囁き続ける。


「ただ、人として生きる道が、一つだけ、まだユウト様にはございます」


 ──クロが言っているのは、身代わりを作れということだろう。


「おっしゃる通りです、ユウト様。ユウトの御身に宿る二柱の神の力。その余りの強大な力を、別のものに手渡すのです」


 ──うーん、それって身代わりになったものが、死よりも辛いことになるよね


「はい。並大抵の存在では引き受けきれません。ユウト様は、お優しさですね」


 ──そういうのは良いって


「失礼しました。話を戻します。ユウト様の御身の中で混じりあったことで、神の力自体が変質しているはずです。ユウト様のお色に染まるように。ですから」


 ──クロが引き受けると?


「まて、クロ! なに一人で美味しいところを持っていこうとしている! そこは私にも半分寄越すべきところだろうっ」


 そこに二歩離れたところからオボロが叫ぶ。


「この距離を詰められないオボロには無理です」

「……な、生意気な」

「事実です」


 つんっと答えるクロに、オボロがとても悔しそうだ。


「それに、オボロには帰りを待っている人がいるのでは。それでは、ユウト様が気にされます」

「──いや、それは。マドカなら多分、わかってくれる……」


 歯切れの悪くなるオボロ。


「私には、誰もおりませんから。ただ、ただ、ユウト様だけです。だから、私だけがユウト様のすべてを貰うのが、ふさわしいのです」


 頬を赤らめて、異形と化した俺の体へとゆっくりと腕をまわしてくる、クロ。


 クロが優しく、しかし強欲に、囁く。


「お願いいたします。私に、ユウト様の全てをください。そして、ユウト様は人として、早川姫と幸せになってください」


 そして俺とクロの間に空いていた隙間が、完全に消え去った。

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