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レアモンスター?それ、ただの害虫ですよ ~知らぬ間にダンジョン化した自宅での日常生活が配信されてバズったんですが~【コミック三巻発売!】  作者: 御手々ぽんた
第六部 人道

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自壊

 因果律の取り込んだ魂をすべて剥がし終えた俺はやれやれと大きく伸びをする。


 いや、伸びをしたつもりだった。


 しかし集中してハンドメイドに取り組んだあとに伸びをして訪れる解放されたような爽快感を、俺はもう体感出来なかった。


 ──そうだった。今の俺の体はこうだっけ……


 改めて自分の体を見回してみる。


 完全に、闇と化していた。

 この体の母たる存在とよく似ている。


 しかしより黒く、しっとりとした質感を持っているようだ。


 そしてそんな闇と化してしまった俺だったが、少なくとも思考は明晰だった。


 ──いや、自分ではそう思っているだけかもだけど、ね


 そんな自嘲をしながら、闇とかした右手を、目黒さんの腹部へと伸ばす。

 そこに埋め込まれるように存在するドローンの機体。

 丁寧に、こびりついていた数多の魂を剥離したので簡単に目黒さんの腹部からそれが取れる。

 ころんと手のなかに転がり込んできたそれ。

 次に、ドローンの機体から、懐中時計を取り外す。

 こちらは力ずくだった。


 しかし、今の俺の前では容易い。

 僅かに力を込めると、ミシミシと懐中時計が軋みながら押しつぶれていく。

 そのまま力だけで懐中時計をドローンの機体から取り外す。


 ──クロに、これを……


 俺がそんなことを思い浮かべたときだった。

 クロが前に進み出てくる。


「はい、ユウト様。しかとクロコを受け取りさせて頂きます。この度のクロコの件、不首尾はこの身を持ってして──」


 ──あ、考えるだけで伝わるんだ。話さなくて済むのはありがたい。それと、責任とか問うとか、しないからね


「……寛大なお心、ありがとうございます」


 そういって、壊れたクロコのボディを抱えたクロが下がる。


 俺は残された懐中時計をどうするか考える。


 ユシのときの癖で、無意識に鼻をスンスンとされる。

 もうこの体には鼻がないはずなのに、臭いを感じとれる。嗅覚器官はどこかに残っているようだ。


 ──進化率の力の残滓の香り、か。ほとんど残ってないけど。でも危ないし、完全に壊しておくか。


 俺が庭から見つけたこの懐中時計は、どうやら臭い的に、かつて世界の神のような存在だった進化率の力の、チャネル的なものの一つだったようだ。ここから随時、進化率の力が流れてきていた、通路のようなアイテムなのだろう。


 ──というか、これがうちの庭にあったせいで、あんなに大量に虫が沸くようになったってことだもんな。……そう考えると、ちょっとむかついてきた。


 そんな俺の思いが漏れてしまったのだろう。

 俺の手のなかでミシミシと懐中時計が音を立てると、自然と自壊していく。ばきぼきと音をたて、小さく小さく折り畳まれていく、懐中時計。


 そして最後にはとても小さな金属の玉のような塊にまで折り畳まれていた。


 ──うわ、本当に、ちょっと考えただけだったんだけど。勝手にこうなっちゃうか。何、物質が、忖度してくれたってこと?いよいよ、もう、ヤバイかもな。俺……


 手の中の小さな金属の塊と化したそれを眺める俺。


 そして、俺の周囲に控える、俺と縁のある人たちは皆、ひきつった顔をして、俺と、俺の手の中の懐中時計だったものを眺めているのだった。


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