外へ
「ユウトの主張は、わかった」
「良かった。早川なら、話したらわかってくれると──」
「そもそも、今回も撮影のためにユウトを誘ったのは私だ」
「う、うん」
「緊急時で原因不明の昏睡状態だった私を見捨てないでくれた事には、本当に感謝しかない」
「お、おう。いや、俺が早川のこと見捨てる訳ないだろ」
「っ! もぅ……」
そこで急にうつむく早川。
しばしの無言。そしてうつむいたまま、小声で話を再開する。
「だがな」
「はい」
「さすがに私も、お、女の子だ。す巻きにして肩に担ぐのは──酷い、よ……」
うつむいた顔を少しだけあげて、目だけこちらに向けてくる早川。
「はい、すいませんでした」
俺は素直に、心のそこから謝っておく。
「はぁ。す巻きにされちゃった──」
「な、何かお詫びをするからさ。……無事に外に出れたら」
「……そうだな。まずは無事に出れるように最大限、手を打たないとだよな。とりあえず、はい」
「え、ああ。はい」
俺は差しだされた早川の手にピンクのバールを返す。
「ユウトはまだ一度もモンスターと遭遇してないんだよね? 私は一応一匹だけど、モンスター倒してるし」
ブンブンとピンクバールを振る早川。
「ああ、虫ぐらいしかいなかったな。──ちょっと他より薄暗い場所とかは、あったけど」
「ふふ。ユウトはお化けとか苦手だもんね。でもおかしいな。多分下層に落ちているはずだし、最後にタロマロさんがダンジョンが存在進化したって、言ってたよね」
「言ってたな。あと別にお化けが怖い訳じゃないぞ。ただ暗いところだとゾッとするだけで──」
「存在進化して、ここが橙か黄相当まで難化したんだとすると私が魔素酔いで昏倒しちゃったのも納得なんだ。けど、だとすると何でモンスターがいないんだろう。それにユウトは何で大丈夫なのかも──」
「早川?」
小声で呟く早川。声が小さすぎてよく聞き取れない。
「ううん。何でもない、あっ!」
「どうした!」
早川が指差した先。ダンジョンの床や壁から、ふわふわとした白い光のようなものが湧くように出てきていた。
「これ、ダンジョンボスが討伐されたんだよ!」
「どういうこと?」
「私たち、助かるよ!」
ぎゅっと抱きついてきて歓喜の声をあげる早川。
次の瞬間、俺たちは外にいた。