表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

286/319

戦闘開始

 俺は新たに獲得したスキルを見ながら困惑していた。


 ──せ、扇動って……。一言というか、ちょっと声を出しただけなんだけど。それでこんなスキルを獲得しちゃうのか……


 思わず、俺はごくりと喉を鳴らしてしまう。

 その間にも、コボルド達からの熱い視線は変わらず。じっと俺に向かってきていた。


 ──これ、どうしよう……


 俺がそんな困惑に襲われている時だった。

 急に空気に悪臭が混ざる。


 月明かりで遠くのは見えないのだが、その分、コボルドとしての鼻が教えてくれる。

 俺の隣でごろんとお腹を見せている、いぶがその身を持って教えてくれたコボルドとしての鼻の使い方だ。


 ──敵? この臭いは……確か大穴ダンジョンの下、雪のフィールドで嗅いだことあるな。


 次の瞬間だった。遠くで何かが爆発するような音とともに、何かが吹き出す。


 月明かりに浮かぶそれは、白っぽい肉の塊に見える。それが大量に噴き上がり、宙を舞う。


 よく見ると、短いが手足がある。


 ──この距離であのサイズ……大きい、赤ん坊?


「あだむ、いぶ。あれ」


 俺はあれは何だと思うと、左右にいたあだむといぶに尋ねようとした。

 しかし、それは途中で途切れてしまう。


 敵の悪臭に混じるように、嗅ぎ覚えのある存在の臭いをいくつか、俺の鼻が捉えたのだ。


 ──これは、イサイサ? ドーバーナとメラニーも一緒か。


 ここまでは良かったのだ。

 問題はその次だった。


 ──え、加藤さん? それに、オボロ? 何でゲームであの二人の臭いが、するんだ……?


 混乱のあまり、あだむたちへの質問が尻切れとんぼとなる。


 そしてそれは、意図せずして新たに獲得したスキルによって増幅され補完されていく。


 気がつけばあだむといぶが叫んでいた。


「偉大なるお方。我らが主にして真に黒きお方よりの下知なり!」

「全軍、状況を開始だ! 偉大なるお方のお目を汚すかの敵を討ち滅ぼせ!」


 まるで、俺が攻撃を指示したかのように、コボルドたちか雄叫びを一つあげ、動き出す。

 巨大赤ん坊を打ち倒さんと、大地を埋めるコボルドたちの進軍が開始されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
状況開始、自衛隊の模擬訓練で「今回はこういう状況を仮定してやります。敵は赫赫で配備は然然。用意できてますか?それじゃあ状況開始!」のような感じで使われるものなのです。実際の作戦行動開始や進軍などの合図…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ