自宅
「ただいまー」
俺は早川の家で夕食をご馳走になって、自宅へと帰ってきた。
夕食は、半分ぐらいは俺が作ったので、あまり早川の手作り料理という感じはしなかった。それに、食べてる最中に早川のお母さんが帰宅したので、途中から三人で食卓を囲んだのだ。
それでも、それは楽しい夕食だった。
早川のお母さんには、なぜか俺の作った料理が大変好評だった。
こんな料理上手の素敵な旦那様がひめちゃんにいてくれたら、ママも安心なんだけどなーと、早川のお母さんが突然言いだして。それを聞いた早川がぷくっと膨れていたのだけは何て答えたらいいかとても悩ましかったけど。ちなみに早川の作ってくれた料理だって、ちゃんと食べられる物だった。
──家族の食卓って感じだったよな。夕食を賑やかに誰かと一緒に食べるのって、やっぱいいよな。
俺はここでずっと一人暮らしで。
夕食も当然一人で食べることが多かった。
それが、思い返せば最近は特別な出来事が一気に増え、その関係で誰かと食事をするという機会がとても多くなっていた。
──そういやこれって、早川からクロをもらってから、だよな。
「おかえりなさい、ユウト」
俺は、玄関で頭を下げて俺におかえりといってくれているクロのホログラムを見ながら、そんなことを考えていた。
ふよふよと浮遊したドローンの機体から投影されているホログラムの少女。
──早川の家の前にいた、クロそっくりだったあの子。早川が腕を掴んでいて、しっかり実体のある体で、クロと同じ声で、なぜか俺を見たあとは顔を真っ赤に染めながら、人違いですと言って立ち去っていった……
見れば見るほど、本当に、そっくりだ。
そもそもが早川とクロの顔立ちはそっくりなのだ。早川の家の前で、二人が顔を近づけたときなんて、まるで双子のように見えた。
「なあ、クロ」
「はい」
頭をあげて、じっとこちらを見つめ返しているクロ。
早川からクロをもらってからの、ちょっと賑やかで、どこか楽しかった日々。
気がつけばいろんな機能が増えているようにしか思えない、クロのドローンの機体。
なぜか俺の倒した害虫の残骸を欲しがることのあるクロ。
たまに勝手にお隣の緑川さんのお宅に行っている様子のあるクロ。
「クロってさ、なにものなの?」
気がつけば、俺は玄関でぽろっと、そんなことをクロに尋ねていた。
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