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見つかっちゃった

「なんか、凄い音がしたけど……あれ、クロ、だよね。何してるの?」


 早川の家の玄関を開けたユウトと、クロの目が合う。

 目黒の追跡に全リソースを割いていたせいで、クロは不覚にもユウトが早川の家から出てくるのを把握するのが遅れてしまったのだ。


「ユウト、何かあったー? ……あら、そちらの可愛らしい女性は、ユウトのお知り合い?」


 受肉して、まじまじとユウトの姿を見るのが実際は初めてとなるクロ。その衝撃のせいで対応が遅れてしまっていた。

 ドクドクと早鐘のように打ち付ける心臓の鼓動がクロから冷静な判断を奪い、体の芯の奥の方から涌き出る高揚感が、脳内を駆け巡る。


 そのせいで、ユウトを追って外へと出てきた早川にまで、その姿をばっちり見られてしまう。


「──ひ、人違いです……」


 そんな沸騰した頭で捻り出したクロの言い訳は、それはそれは酷いものだった。

 それでも、その言い訳にすがって、そのまま立ち去ろうとぎくしゃくと歩きだすクロ。


「あ、()()()。クロ」


 しかし当然、納得するはずもないユウトが、クロを呼び止める。


 そのユウトの言葉は、クロにしてみれば偉大なる主からの直接のお声がけによる、絶対的な御言葉だった。


 理性ではこのまま立ち去るのが、ここにいる全員にとって最適だと理解していても、クロの本能の部分で絶対に抗うことのできないものだった。


 そのため、片足を踏み出し、腕を振りだした姿勢でクロはピタリと制止する。まるで横断歩道のすすめのポーズのようだ。


 そんなクロとユウトを見て、早川がポツリと呟く。


「──ユウト。クロって、どういうこと? ドローンにつけた名前って、前にいってなかったっけ?」


 とことこと制止したクロに近づいてくる早川。そのまま早川はニコニコとしながらクロの手を取ると顔を近づけて話しかけてくる。その二人の顔立ちは相変わらずそっくりだった。


「こんにちは、クロさん? 私は早川って言います。良かったら、少しお話ししていきませんか?」


 とても朗らかに笑顔で告げられた早川からクロへのお誘い。しかしクロの手を掴む早川の手は、逃がさないとばかりに力が込められている。


「ほ、本当に人違いです。あの、すいません、ちょっと急ぎの用があって……」


 実際のところ、クロは追跡中のオボロたちへのナビが、疎かになっていた。オボロたちはそのせいで、逃亡する目黒の超小型ドローンの姿を、見失いかけていた。


 今も、オボロに渡したワケミタマドローンを通じて、さっきからしっかりナビしてくれと再三文句が飛んできている。


 しかし、ユウトから待てと言われたクロは、その絶対の命によって、その場から動く訳にはいかなかった。


「あー。早川。ごめん、本当に人違いかも? すいません、勘違いで呼び止めてしまったみたいで……」


 そこへユウトがくると、早川の肩にそっとその手をかける。そのユウトの視線は早川のつかんだ、実体のあるクロの手を見ていた。そしてそのユウトの言葉は、クロの制止の解除を許すものだった。


「そ、そうなんです。人違いなんですっー!」

「あっ……」


 ユウトがすぐそばまで来て、その声が間近で耳に届いただけで、顔が真っ赤になってしまうクロ。早川の手を簡単に振り払うと、クロは自分の真っ赤に染まった顔を両手で隠すようにして、走り出すのだった。



本日はコミカライズ5話の更新日です!

クロの上目遣いのお願いがとても可愛いので、是非カドコミ、ご覧になってみてください~

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