表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

252/319

テラトータス戦

「ここら辺に一発、入れておくかー」


 俺は天駆スキルでテラトータスの前足のすぐ側を上方向へ駆け上がっているところだった。


 結構な距離を駆けた気がするが、本体があるのは、まだまだ遠い。


 そのため、ここら辺で一度、攻撃を試してみようとメニュー画面を開く。


 ──あったあった。やっぱりこれだよね


 俺は救援クエストの時に追加されていた新聞紙ソードを取り出す。


 しっくりと、手に馴染む。


 目の前にある、巨木よりも太いテラトータスの前足。

 そこに向かって新聞紙ソードを振りかぶったところで、俺は少し動きを止める。


「……えっと、確かこの前、攻撃スキルも習得してたよな──そうそう、確かスキル名は、『全力新聞紙振り(そは かみを ほふる)』!」


 俺はスキル名を告げながら、新聞紙ソードをテラトータスの前足目掛けて横薙ぎに振るう。


 スキルの効果なのだろう。新聞紙ソードに、白と黒の色合いのエフェクトがまとわりついていく。

 俺の振るう軌跡に沿って、その微妙にマーブルっぽいエフェクトが、まっすぐ横方向に、伸長していく。


 ──うーん。前も見たけどなんか、あんまり格好良くないスキルのエフェクトだよなー。まあ、スキル名が全力新聞紙振り、だし。最初に手に入れた攻撃スキルだから、たぶん初歩的なスキルで、その分、エフェクトも地味なんだろうなー。


 そんな事を考えながら振り切った新聞紙ソード。特に爆音が響くとか、スキルの効果音が鳴る、なんて事もない。


 どちらかと言えば、静かなほどだった。まるで先ほどまで聞こえていた風音すらも、消えてしまったかのような、静寂に俺は包まれていた。


 そして気がつくと、俺の目の前には白と黒のマーブル風のエフェクトだけになっていた。

 ただただ、白と黒の色が渦巻くような模様だけが、俺の視界を占める。


「……あれ? ──ああ。攻撃した部分が消し飛んだだけか」


 よくみると、下方と上方には、まだテラトータスの前足が残っている。

 俺が新聞紙ソードを振るった部分を中心に、白黒マーブルエフェクトの幅の分だけ、前足が消し飛んだようだった。


 ──このテラトータス、回復速度がめちゃくちゃなんだよな。ぼーっと観察してないでさっさと追撃しないと。


 この頃になると、世界に音が戻って来ていた。俺はなんで静寂だったんだろうかと、少し不思議に思いながらも、まだ残っている白黒マーブルエフェクトを越えるように上へ。


 そして、テラトータスの本体のある上空に向かって天駆でさらに駆け上っていく。


 そのため、白黒マーブルエフェクトが、どこまでもどこまでも横方向に延び続けていることに、気がついていなかった。


 それは、テラトータスを早く倒さなきゃという俺の意識的なものに加え、ユシが物事のかなりの部分を臭いで認識する、コボルドという種族、だという点も大きかった。


 無臭の白黒マーブルエフェクトは、そもそもがユシには少し認識しにくいのだ。


 ただ、幸いなことに、高い位置で俺が水平に薙ぎ払ったお陰で、地上には被害は生じなかった。


 それでも、その虹の地平より発生した白黒マーブルエフェクトは、ユウトが気づかないまま国土の上空を横断し、さらにはまっすぐユウトたちの住まう星の外へと、延び続けるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] うわあ……地上でなんか超強力なビームをぶっ放したら映像がガンガン引いて地球からまっすぐどこかにビームが飛び去って行くアレですやん……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ