浮かれ騒いで
「ドーバーナ、浮かれすぎ。鼻歌、うるさい」
採取済みの危険物を満載した専用ケースを担いだメラニーからそんな指摘が入る。
「あら、ごめんなさい。でもメラニーも表情が緩みきってるよ」
「……うるさくは、してない」
「はいはい、そうだね」
隣を歩くメラニー。自身の身長の倍はある専用ケースを担いでいるが、全く苦にした様子もない。
それどころか、メラニーも、ニコニコ、ニヤニヤとした表情が隠しきれない様子だ。
自身の顔の毛皮に何度も触れて、その感触を確かめているメラニー。たぶん顔を拭かれた感触でも思い出しているのだろう。
そんなメラニーを横目に、私も自分の顔を触ってみる。
──うん、完全に緩みきってる
そう、私もメラニーと同様だという自覚はあった。
しかし、どう考えても仕方ないことだろう。
何せ、偉大なるお方より直接お声がけ頂いたばかりか、宝物まで賜ってしまったのだ。
しかも、首輪だ。
──これは明らかに私たちのことを飼い犬として、御認定頂けた証。飼い犬! なんと素敵な響き。ああ、嬉しすぎてまた溢れてしまいそうっ
さすがに歩きながらは、はしたないと、私は必死に我慢をする。
濡れてしまった所もようやく乾いたばかり。
それでも溢れんばかりの歓喜が、色々な形で漏れ出てしまうのは致し方なかった。
「ドーバーナ。ドーバーナ」
──大して目立った活躍をしていない私たちがこのような破格のお情けを頂けたのは、今後の活躍を期待されているからよね。気合いを入れてかなくちゃ
「ドーバーナ」
「い、痛いわ。なに、メラニー?」
メラニーの蹴りに、考察を邪魔される。地味に痛い。
「ぼーとしてるのが、悪い。あれ」
「あら、見たことのない、超大型ね。どうしたの?」
メラニーの指差す方向には、超大型のモンスターがいた。
「かなり特殊な個体。体内にダンジョンがある」
「へぇー」
「あれ、テイム出来る」
メラニーのコボルドヴィラネスとしての固有のスキル、婚約破棄からの逆ハー。
オスのイケメンであれば何匹でもテイム出来るそのスキルに、どうやら反応したみたいだ。
「あれは良い。役に立つ」
「メラニーがそこまで言うなんて珍しい。でも戦闘許可が──あ、制限が解除されてる?」
「この御下賜頂いた首輪の効果」
どうやら、この飼い犬としての首輪のお陰で、今の私たちにはかなりの自由行動が許可されているようだった。
「て、ことは?」
「そう。戦える」
久しぶりの戦闘の予感に、私のコボルドととしての本能が昂ります。
「ちょうどよい発散になりそうね。良かった。このままだと、また色々我慢できなさそうだったの」
「はしたない、ドーバーナ」
「だから必死に抑えていたでしょ。さあ、狩りにいきましょ」
「勢い余って殺さないこと」
「わかってるわ」
私たちは牙を剥いて笑い合うと、遠くに現れた巨大な獲物へと向かって駆け出すのだった。