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サードアイ

「緑川先輩、ひどいです。急に押し付けるなんて!」

「目黒、急いで解析を。とくにそうめんは、のびてしまう前に」


 ブーブーと文句を言い始める目黒に加藤先輩からの指示。


 緑川と同じ探索者上がりである目黒も、スキル持ちだ。

 そのスキルは、『解析補助(サードアイ)』。効果としては、道具を使用して物事を調べるときに、さまざまな補助がされるスキルだ。例えば虫眼鏡で手の平を見ると、その人のとくに注目すべき手相が自然とわかる、らしい。

 緑川のユニークスキルである『不運(ハードラック)』ほどは珍しくはないが、非常に有用なスキルだった。


 目黒はブーブー言いながら廃屋に入っていく。解析用のノートPCと簡単なスキャナーやら検査キットを持ち込み済みなので、そちらへ行ったのだろう。


 緑川はその間に、加藤へと質問する。

 なぜ、そうめんから解析を指示したのか。そこにあるであろう、加藤先輩の深い思惑が残念ながら緑川には理解出来なかったからだ。


「加藤先輩、なぜそうめんから? どちらかといえば、英霊草の真贋では?」

「黒1ダンジョンだろ。あれは英霊草さ。それよりも──」

「それよりも?」

「せっかくのそうめんが、のびたら美味しくないだろ?」


 緑川は思わずガックリとくる。


 ──そうだった。加藤先輩は見た目通り、食いしん坊だった。SNSのアカウントもそんな感じのふざけた名前のを使ってるんだった、この人。


「ただのそうめんだったら、もしかして食べる気ですか?」

「当たり前だろ。俺たちの最重要ミッションはなんだ? 良き隣人であることだろう。であればそうめんは食べて感謝を伝えるべきだ」

「──まあ、確かに。でも、ただのそうめんだったら、ですよ。いいですね」

「おーけーおーけー」


 軽く論破されてしまう緑川。

 そこへ目黒が戻ってくる。


「加藤先輩、緑川先輩。解析結果です」


 簡易的なハンドプリンターで出力された紙を手渡してくる目黒。

 加藤と緑川は頭を寄せ合うようにしてその紙を覗き込む。その勢いにじゃっかん引き気味の目黒。


「霊草と英霊草は間違いなし。最高品質──」

「そうめんとめんつゆは、一般的な店売りの品のまま、各種食器にも変なところはなし。だってさ、緑川」


 にやっと笑って緑川を見る加藤。


 その笑顔に、思わず加藤のすねを蹴る緑川。

 しかし加藤はどこ吹く風とばかりに、水筒から器にめんつゆを注ぎ始める。


「さてさて」

「え、えーっ? 食べるんですかな!?」


 うろたえる目黒。その手のお盆から、そうめんを箸で持ち上げると、器のめんつゆにつけてすする加藤。


「せめてなかに入ってからにしてください。加藤先輩。というか、我慢できないこどもかっ!」


 本日二度目の緑川のすねキック。加藤の器のめんつゆが、振動でちゃぽんと揺れた。



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― 新着の感想 ―
加藤パイセンは思考が柔軟だな
[一言] のびたら、ダメだもんね、そうめん(笑)
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