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いぶとの邂逅

「最後の敵は……あれかっ。──あ、もしかして戦っているのは、いぶかな」


 彼女は、このダンジョン&キングダムというゲームで、最も見慣れたキャラといっても良かった。


 最初に創造した二体の混沌。

 あだむといぶ。


 フルダイブして歩き回っていたハラドバスチャンで、実はこっそり会いに行こうと思えば行けたのだが、他にやりたいことを優先していた結果、結局会いに行かずじまい。

 で、ずるずると今にいたっていた。


 ──仕方ない。ご飯が美味しすぎるのがいけなかったんだ。それにしてもいぶ、思ってたより小柄なんだなー


 いぶの相対している敵が、いわゆるゴスロリっぽい格好の、一見女性の敵キャラだった。

 全身白っぽいゴスロリ服に、こんな雪原なのに、ヒールも高い服を着ているからだろう。

 いっそういぶが小さく見えたのだ。


 敵キャラは先程のと同じ様に、とても悪臭を放っているようにこのユシの鼻には感じられる。

 これまでで一番臭いかもしれない。


 鼻が曲がるのを覚悟で、俺は雪上を駆け、一気に敵を倒してしまおうと近づいていく。


 接近する俺を見て、腕を振るおうとする敵。


「遅いなー」


 その敵の動きは、不思議なほど遅かった。それこそ、本当にあくびをしても間に合うぐらいだ。

 もちろん、そんな自殺まがいのことはしない。臭すぎて窒息する危険がある。


 俺は息を吸う前にかたをつけようと新聞紙ソードを振るう。

 ちょうど敵の振り回し始めた腕と俺の新聞紙ソードが接触するも、柔らかい手応えに、そのまま新聞紙ソードを振り切る。


 敵が一気に爆散する。


 俺は慌てて後退しようと後ろへと飛び退く。


「あぶなっ。あれ浴びてたら絶対臭くなってたよ」


 距離を取ったことで一気に臭いが落ち着く。そのまま黒いもやになりかけて、この敵も空中へ溶けるように消えていった。同時に、悪臭も薄れて行く。最後の敵も、あっけないものだった。しかし、今回ばかりはそれで助かった。


 ゆっくりと安堵のため息をつくと、くるりと振り向き、いぶの方を向くと、軽く手をあげて挨拶をする。


「やあ。いぶ、だよね?」


 ちょっと、いぶとは話してみたかったのだ。

 近づく俺を、いぶは最初きょとんとした表情で見ていたが、次の瞬間、思いもよらない行動に出たのだった。

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