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緊急クエスト

「うわー。フルダイブのVRって初めてだよ。ねえねえ、ユウト、やってみていい?」


 俺が、なぜか直った雰囲気のダンジョン&キングダムの確認をしていると、俺の肩にのし掛かるようにして早川がきいてくる。


「あ、ああ。──じゃあ、これ。頭に被るやつ。あ、被る前に、先に横になった方がいいぞ」

「ありがとー。うわー。本格的だね。結構重たい」


 俺からVR用のヘッドディスプレイを受けとると、そのまま俺のベッドに横になる早川。

 本当に楽しみなのか、待ちきれない様子で勢いよく横になる。そのせいか、服の裾が少しまくれる。


 俺は思わず、それを凝視しかけて、慌てて早川の顔の方をみると、早速ヘッドディスプレイを装着したところだった。


 さっきまではしゃいであげていた早川の声が消え、手足が脱力したように力が抜けていくのがはた目にもわかる。

 これまで何度もフルダイブしてきた経験から、早川がいまちょうど意識がゲームの方へ移行したのだとわかる。


「──ふーん。フルダイブ中って、こんな感じに見えるんだ」


 俺は照れ隠しに呟く。

 というのも、横たわった早川を思わず、まじまじと見いってしまっていたからだ。

 ゆっくりとした呼吸で微かに着ているパジャマの胸元が上下する以外、ピクリとも動かない早川。

 それに、さきほどまくれた服の裾も、そのままだった。


 どうにも目が離せなかったせいで、俺はモニターに表示されていたゲーム内での早川の動きを、すっかり見落としていた。


「あー。毛布か何か、かけてあげるか……」


 理性を総動員して、普段使っている毛布を手に取る。しかしそこでためらっていると、フルダイブ中の早川から声をかけられる。


「ねえねえ、ユウト」

「はひっ!」


 思わず、返事を噛んでしまう。


「もう、どうしたの?」


 俺の手元をみた早川にクスクスと笑われてしまう。


「あ、ああ。フルダイブからもどったんか。もういいの?」

「それがさ、何か操作を間違っちゃったみたいで。何か、緊急クエスト的なものを受諾しちゃったんだよね。これはユウトに勝手にやっちゃダメかなーって。あれ、モニターに映ってなかった?」

「あー。ごめん、見てなかった……」

「そうなの。とりあえず、返すね、これ。なんだか時間制限あるみたいで」

「おっけー。じゃあちょっと確認してみる。時間かかっちゃったら、ごめん」

「ううん、そもそも変なとこ押しちゃった私のせいだし。見てるから気にせずやってよ」


 俺は早川から返されたヘッドディスプレイをつけると、ダンジョン&キングダムへとフルダイブする。


 するとそこには、『緊急クエスト:友軍への救援。成功条件:魂の簒奪者の完全撃破 及び 友軍の一名以上の生存』の文字が浮かんでいた。




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楽勝じゃん 棒茄子棒茄子
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