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最深部

 クロが大穴ダンジョンの最深部に降り立つと、そこは一面の雪だった。


 生まれて初めて見るそれに、クロは思わずきょとんとした顔をする。

 そのクロの顔に、風に乗った雪が次々に打ち付けられる。


 吹雪気味なせいで、視野が悪い。


「冷たい……くちゅん」


 手のひらで、顔についた雪を払いのけるクロ。


「わ、ワケミタマたち」


 片手をあげ一言、クロが告げる。寒さのせいか、語尾が少し震えている。

 それでも、クロのあげた手のひらから、無事にワケミタマドローンたちが次々に現れはじめる。


 現れたワケミタマドローンは、まるでクロを暖めるかのようにその体に次々にくっついて行く。

 すぐにクロの全身がワケミタマドローンで覆われていく。


 その無数のワケミタマドローンがクロにくっついた姿は、意図せずして、まるで雪だるまのような見た目となっていた。


「周辺、探査」


 その黒い雪だるまから、数十体のワケミタマドローンが分離すると、吹雪の中、クロ雪だるまの周囲を螺旋状に旋回し始める。しかし、その数のワケミタマドローンが分離しても、黒い雪だるまは十分な大きさを維持し、クロが寒くないようにその身を完全に覆っていた。


「──この付近には、何もないようです。……ゆきなさい」


 クロの指示に従い、ワケミタマドローンが吹雪のなかを散っていく。

 その目標は当然、おぼろの探索だった。


「クロ殿、これは?」

「うわー」「寒いよ」「冷たい」「これあれじゃない?」「そうだね、きっとそう」「なんか、クロ様だけ暖かそうなんだけど?」「仕方ないね。シロたちはこうしよう」「あ、確かに温かいや」


 クロがワケミタマドローンを送り出すタイミングで、時の狭間の回廊から、いぶとシロたち、そしてダークコボルド達が次々に現れる。


 みな、雪を見たことのないゆえか、最初は戸惑った様子だ。

 しかしシロたちはすぐに寒さ対策として手近なダークコボルドたちに抱きついていく。その毛深い毛皮に顔を埋めるようにして、一人一匹づつ、ダークコボルドを抱き上げて暖をとるシロたち。


 抱き上げられたダークコボルドたちは耳を伏せ、尻尾を丸めて、おとなしくされるがままになっていた。


 そして最初は雪に戸惑っていた、いぶと、その他のダークコボルドたちだったが、すぐにソワソワとした様子を見せはじめる。

 駆け回りたくなる足を、理性で必死に押さえるコボルドたち。しかしその尻尾は正直だ。パタパタと、せわしなく動いている。


「うわなんだっ! 雪? え、なんだ、その黒い雪だるま!?」


 状況が混沌としはじめたなか、回廊からすべてのダークコボルドが出た後に、ついに加藤が最深部へと降り立つ。


「そう、雪だ!」「ゆきゆきっ!」「そんな名前だったね」


 騒ぐシロたちをよそに、クロが静かに告げる。


「おぼろを見つけました」

「あっ。その雪だるまみたいなのは、クロか」

「それと、敵です。二時の方向」


 華麗にスルーされる加藤のコメント。

 動きたくてたまらない様子だったダークコボルド達が勇んだ様子で戦列を整える。

 ほぼ同時に、吹雪く雪の中から、クロが告げた敵が現れた。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん、ストーリーの大筋は興味深く読んでいるが、細かい描写が足りないと言うか説明せずに流すスタイルな感じになってきて、今何が起こっててどうなったのかよくわからん場面が増えたのが惜しい感…
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