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ダンジョン&キングダムの不調

「このダンジョン&キングダムって、聞いたことないやー。ユウトって、マイナーな奴が好きなの? 面白い?」


 早川が俺に聞きながら、とても自然にゲーム機の電源を入れる。

 先程からアワアワしていた目黒さんが、なぜかそこで急に早川に抱きつく。


「は、早川さんっ。勝手にだめです~」

「ちょっ、目黒さん、くすぐったいですってー」


 パジャマ姿の二人による、よくわからない攻防が、俺の目の前で繰り広げられる。

 ゲーム機の電源をつけさせまいとする目黒さんと、その妨害を掻い潜りゲーム機の電源をつけようとする早川。


 何故二人が争っているのか、意味不明だ。

 ただ、その争いを止めなければいけないことだけは間違いなかった。


「あの……大丈夫ですよ、目黒さん。早川、それは面白いけど、シミュレーションっぽいから皆でやるなら別の物の方が良くないか?」


 俺は争いを止めようと言葉をかけながら、早川達から、急いで目をそらす。

 既に、あまりじっと見ていると、いらぬ疑いを持たれそうな絵面だったのだ。


「ふーん。シミュレーションねー。あれ、ユウト。これ、つかないよ?」


 迫る目黒さんを体でガードしながらも、くすぐったそうにクスクス笑っている早川。巧みな体さばきで、目黒さんの妨害を掻い潜りゲーム機の電源をつけた早川だが一転、訝しげに告げる。


「え? ああ、本当だ。どうしたんだろ? 停電したからな。その時、何かあったのかも──」


 早川の声に、そらしていた顔を思わず戻してしまう俺。視線に飛び込んできた、目に毒な光景にどぎまぎしながらも、ゲーム機の確認をする。


 ──本当に、停電した時に壊れちゃった? そうだとしたら、けっこうショックかも……


 俺はダンジョン&キングダムにフルダイブしたときに出会ったダークコボルド達を思い出して悲しくなってくる。

 ここ最近は、本当にこのゲームにはまって、少ない自由になる時間の大半を注いでプレイしていたのだ。

 混沌達によるダンジョンの探索もかなり進んでいて、これからいよいよ佳境だった。


「あー。なんかごめんね、ユウト」


 俺がひっそりと落ち込んでいたのが伝わってしまったらしい。

 早川がそっと慰めるようにゲーム機の前にしゃがみこんだ俺の背に手を置く。


「いや、大丈夫! ほら、それよりみんなで出来るゲームでもしよう。たしかここら辺に……」


 俺は、落ち込んだ気分を振り切って押し入れを開けて、中をあさる。


 ──まだ俺が子供の頃に父親と遊んだのがしまってたのが、あったはず。


「おっ、あったぞ。どれにする?」


 俺が取り出したのは、何種類かのカードゲームやボードゲームを詰め込んでしまっていたダンボール。


「へぇー。色々あるんだ、ユウト。あ、これなんてどう? あと、負けたら当然罰ゲームねー」


 煽るように告げる早川に、俺も、そのノリに応える。


「ふっ。受けて立とう」

「お、いったなー。罰ゲームは何にしようかなー」

「……あの、僕もやるんです?」

「当然ですよっ、目黒さん。さあ、まずはさ、罰ゲームを決めよう? それぞれ紙に罰ゲームの内容を書いてクジにしとくのはどう?」

「……随分とこるな、早川」

「こういうのは真剣にやらなきゃ!」

「はいはい。じゃあこれ。紙と鉛筆」


 こうして、負けられない戦いの幕が切って落とされたのだった。


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