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食わず嫌い

 クロが去ったあと、加藤はイサイサとシロたちとともに、ダークコボルド達から歓待されていた。

 目の前に並べられた、とても美味しそうな香りを放つ料理の数々。

 どれもが大穴で狩られた高ランクモンスターの素材で作られた料理だそうだ。


 加藤の左右に座るシロたちは、パクパクと料理を食べて、その味を絶賛している。イサイサは優雅な仕草で食事を楽しんでいる様子だ。


「加藤は食べないのー?」「いらないならもらっちゃうよー」「あ、食わず嫌いだなー」「食わず嫌い、いけないんだー」「いけないんだー」


 なかなか手が出ない様子の加藤を見て、口々にそう話しかけてくるシロたち。


 ダンジョン公社で食事をしていた時分より成長したシロたちは、いつの間にか食事マナーを身につけた様子で、しっかりナイフとフォークを使っていた。


 じつは内心、加藤は、食事が出された時は、シロたちが手掴みで食い散らかすのを心配していたのだ。シロたちに対してすっかり保護者目線になっていたのは、加藤の面倒見の良さの現れだろう。


 そんな加藤なので、シロたちから投げ掛けられた言葉に苦笑を返すと、ゆっくりと目の前に置かれた皿の上のよく焼かれた肉片を口に運ぶ。


「うまいな……」


 驚きに目を見開く加藤。それは加藤がこれまでの人生で口にした中で最高の味のステーキと言っても過言ではなかった。


 加藤が勇んで続きを食べようとしたその時だった。急に、ハラドバスチャンが騒がしくなる。

 口元に運びかけた食器の手を止め、近くに歩いて来たダークコボルドへと何があったのか尋ねる。


 その周りでは、無言になったシロたちがまるで今食べてしまわないと食べ損ねるとばかりに一気に食事の速度を上げていた。


「ハラドバスチャンの廃棄が決まりました。これより総力を持って大穴の踏破が開始されます。つきましてはお客人の皆様もどうか祭壇の間へお越し下さい」

「だってさ。シロたち。それに加藤。いこうか」


 イサイサがゆっくりとナプキンで口元を拭うと立ち上がる。


「廃棄? 祭壇の間? どういうことなんだ、イサイサ」

「加藤鈍いー」「そうだそうだー」「クロ様といぶちゃんさんの話し合いがまとまったに決まってるじゃん」「祭壇の間に七武器が二本あるでしょー」「誰かが抜くんだよー」「加藤も挑戦してみたらー」


 きょとんとした様子の加藤に、シロたちが寄ってたかって説明をする。

 言われてみればと納得する加藤は、結局一口しか食べれなかった人生最高の味の食事を名残惜しそうに見る。

 ため息をつくと、さっさと歩きだしたイサイサとシロたちのあとを追うのだった。


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