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G化

「我を呼び出しし不埒ものはそなたか、黒の影よ」

「進化律。あなたは触れてはいけない領域に手を出しました」


 十三人のシロたちの輪のなかで、クロと顕現した進化律が対峙していた。

 進化律から発せられる神気とも言うべき圧倒的な威圧感と覇気。常人であれば膝まづいてしまいそうなそれに、その場にいたものたちのうち、ユウトの係累たるものたちはみな、端然としていた。


 どちらかと言えばシロたちは姦しい。


「やったよー」「無事成功。イエイ」「ほらほら。わを乱さない」「そだよー、逃がしちゃうでしょ」「やっぱりご飯の力は偉大だ」「だねー。お腹すいてると、力はいらないし」「でもそろそろお腹空いてきたかも」「双竜寺、めしー」「「めしー」」


 十三対、二十六の瞳が双竜寺を捉える。

 双竜寺は、萎縮しかけていた足に力を込めてしっかりと立つと自らの責務を果たさんとスマホを取り出す。

 それは当然、追加の食事の準備の指示だ。


 そうして双竜寺が部下に指示だしをしている間にも、クロと進化律のやり取りは継続していく。


「ユニークスキル、ワンタイムボディ」


 進化律を指差し、ユニークスキルを発動するクロ。


「ふ、我に我が力より分かたれしユニークスキルが効くとでも?」


 冷笑して告げる進化律。

 しかし、その余裕もあっという間に霧散してしまう。

 いつの間にか腹を上に向けていた姿勢から立ち上がっていたイサイサが、ひょいっとシロたちの輪を跨いでクロの背後へといた。

 そのままそっと優しくクロを抱き締めるイサイサ。

 その顔は愛に満ち満ちている。


 次の瞬間だった。

 進化律の体が、ポコンと音を立ててへこむ。

 その、女性の姿を象った肉体が縮み始めていく。


 それと共にその肌色は黒く変色し、キチン質特有のぬめっとした質感へと変わっていく。その腹部を突き破るようにして、三対の尖ったものが現れ、逆に元あった手足が腐り落ちていく。


 進化律が絶叫をあげながら暴れだす。


「……クロ様、私の愛を持ってしても、お支えできる時間は短そうです」


 暴れださんばかりの愛に顔を上気させながら、イサイサがどこか辛そうに背後からクロに告げる。


「だめです。ユウト様はまだご自宅です。目黒が、目黒の家に出たと告げています。まだ、だめです」

「あ、もうっ。もう、だめ……っ。たえられません」


 いったん親指サイズまで縮んだ進化律が、今度は徐々に大きくなり始めていく。


「仕方ありません。シロ達」

「はーい」「うたうよー」「おっけー」「せーの」

「通りゃんせ 通りゃんせ

 ここはどこの 細道じゃ

 天神さまの 細道じゃ

 ちっと通して 下しゃんせ──」


 手のひらサイズまで大きさを戻した進化律の姿が、さっとその場から消えていった。


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