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とおりゃんせ

 産まれたばかりの赤ちゃんたちが並ぶ、ダンジョン公社地下の会議室。

 そこは可愛らしくも騒々しい泣き声に満ちていた。


「残念ながら、母体……いえ、あの、生んだ男性たちはみな助かりませんでした」

「そう、ですか。ご苦労さまです。慣れない執刀で、大変だったでしょう。赤子たちが全員無事なのは、先生方のご尽力の賜物です」


 執刀医の中で最年長の医師から報告をうけ、労う双竜寺。


 その視線は会議室に並べられたベビーベッドでいつの間にかすでに掴まり立ちを始めた十三人の女児たちをどこか不安げに見ていた。


「それで、双竜寺課長。あの子達はいったい、なんなのですか。あり得ないほどの生命力。そして明らかにおかしい成長速度──」

「申し訳ありませんが、ことは国家の存亡にも

 関わる機密事項となります。皆様のご指定の口座には予めお伝えしておりました金額がすでに振り込み済みとなります。ご確認いただければと」

「──わかりました」


 執刀を担当した医師たちが退室していく。

 入れ替わりに現れたのは、ストレッチャーに乗せられたクロと、それに付き添う加藤。そしてその背後には楽しそうに白羅ゆりと談笑しているイサイサの姿があった。


 イサイサと白羅ゆりは時たまぎゅっと互いを抱き締め合っている。

 ユニークスキルを使用しているのだろう。注意するかと口を開きかけたところで、白羅ゆりから話しかけてくる。


「女の子同士の間に挟まる殿方は嫌われますよ?」

「──ふん。それでイサイサ殿。あの子達は通常の赤子の保育と同じでよいのですか?」


 視線をイサイサへと変えて質問をする双竜寺。


「うーんと。すぐに赤子の時期は終わるので……」


 その言葉が終わらぬうちに、会議室に用意された寝台から元赤子だった幼女たちが降りると、こちらへと歩いてくる。


「イサイサだー」「イサイサー」「お腹すいたー」「ごはんーごほんー初ごはんー」


 わらわらとイサイサの周りに集まると、口々に騒ぐ幼女たち。


「準備をお願いできますか、双竜寺さん」

「──はい、すぐに。イサイサ殿」


 頭が痛いとばかりに首を振りながらすぐさまスマホでどこかへと指示を出す双竜寺。


「急いでねー」「もうすぐくるー」「ご飯はあとかなー」「さき食べたいなー」「しかたないよ」「あ、きちゃった」「みんな。手を」「「「はーい」」」


 なにやら口々に騒ぐとお互いの手を取り合って円を作るように並ぶ幼女たち。

 その中心には、ストレッチャーの上で眠ったままのクロ。


 そして幼女たちが、声をあわせて歌い始めた。


「通りゃんせ 通りゃんせ

 ここはどこの 細道じゃ

 天神さまの 細道じゃ

 ちっと通して 下しゃんせ──」




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