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突然の雨

「おいしかったー。食べ過ぎたー」


 お腹をパンパンと叩きながら畳に横になる早川。

 どうやら俺の作った料理は好評だったようだ。


「特にあの角煮。なにあれ。あんな美味しいの食べたことないよ」


 畳の上でぐでっと伸びながら早川がこちらを見上げてくる。


「まあまあだったろ?」

「いや、本当においしかった。あれ? ユウト的にはまだ満足してない味とか?」

「まあな。この世にはもっと旨い角煮があるんだぜ」

「……ユウトって前から思ってたけど、凝り性だよね」

「はは。そうかもね。さあ、片付けるからそこどいてー」

「お腹いっぱいすぎて動けないー。運んでー」

「おいおい。じゃあ跨ぐからな」

「はーい」


 俺はほっとしながら食器を片付け始める。


「もう少し待ってくれたら、片付け手伝うよ?」

「いいよ。そのままで」


 とりあえずここまでは順調だった。

 自宅についたのもほぼ時間通り。クロ(クロコ)から連絡のあった沸いた害虫も、裏庭だけでしかもカマキリが数匹のみ。


 ──なんかカマキリにしては色が少し変だった気がしたけど、早川を家に案内した隙間時間で速攻で倒したから……たぶん見間違いだろう。


 それにクロは気を利かせてくれたのかホロをといて俺の部屋の充電機の上で、ずっと静かにしてくれていた。


 料理のできは畳の上でゴロゴロしている早川の様子が物語っている。


 そんな感じで台所で胸を撫で下ろしていたのだが、そこに隣の部屋の早川の声が聞こえてくる。


「あれ、雨?」

「え、天気予報だと終日晴れのはず」


 皿を流しにおくと、隣の部屋へ。


 窓越し、ぽつりぽつりと雨の滴りが見える。

 それがすぐさま強まってくる。


「雨脚、強くない?」

「ああ。本当に」


 俺はすぐさまスマホで雨雲レーダーを確認する。


「線状降水帯になっている。おかしいな。そんな兆候、全くなかったはずなのに」


 国土を横断するような、巨大な線状降水帯がスマホの地図上に表記されている。


「ユウト、警報も出たよ。──え、これどういうこと?」

「どうした?」

「SNSで情報が錯綜しているんだけど……虹の地平のダンジョンから何か出たみたい。あっ。ユウト見てこれ」


 立ち上がった早川が見ていたスマホ画面をこちらに向けてくる。


「これは、ドラゴン?」


 早川のスマホに表示されたのはダンジョン配信者の動画なのだろう。

 炎で出来たように見えるドラゴンのような存在が、撮影者の上空を通過する動画だ。

 早川が俺の隣に移動すると体を押し付けるようにして一緒に動画を見始める。


「もう一体、きたよ」

「今度は水の竜か?」


 反対側から現れた水の竜。火のドラゴンに衝突するコースだ。そこで画面が激しく揺れて動画は終わる。

 そのまま俺にぺたりとくっついたまま早川がスマホで検索を続けている。


「あの竜みたいなのは、首都の方から現れたみたい。SNSにはダンジョン公社の社屋から出たって目撃情報が上がり始めてるよ、ユウト」

「──確かに虹の地平と首都を繋ぐ範囲で線状降水帯が出来てる。それがこの豪雨の原因?」

「たぶん」


 そう言ってこっちを見る早川。その顔がとても近い。

 バシャバシャと屋根に叩きつける雨音が室内に大きく響いていた。




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― 新着の感想 ―
雨、降らせときますね
[一言] 水の竜「ほら、豪雨だし泊まっていきなよとか言えって」
[一言] 2人が幸せな毎日送れますように!
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