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一掃

「さて、始めるか」

「ユウト、これは何ですか?」

「え、掃除だけど」

「なんでまたそんなことを?」


 俺が掃除の準備を終えた気合いをいれているとクロ(クロコ)が話しかけてくる。


「あー。……早川が次の休みに来るんだ」

「──そうですか」

「いや、ほら! 早川、虫が苦手だって言ってたしさ。少しでも綺麗にしとこうかなって」

「──少し、ですか」


 広げられた掃除道具と、ツナギをきて、完全武装した俺の姿をゆっくりと見回すクロ。


「──はぁ」

「なんだよ」

「いえ、何でもありません。お手伝いします。虫が気になるようでしたら、まずは雑草や雑木を完全に刈り取るのがいいかと。虫が沸きやすいですし」

「なるほど! 道具とってくる!」


 俺はありがたいクロの助言にしたがって、草刈り鎌などの庭掃除用の道具を地下の倉庫から急ぎとってくる。


 地下の倉庫はいつもより、なんだかどんより淀んで、黒々とした影がいっぱいあったような感じもした。しかし、急いでいてあまり気にならなかった。

 どちらにしろ軽く手ではらったら消えたから、気のせいだろう。


「とってきた! じゃあ早速庭からやるかな」


 俺は片手に鎌、反対の手にノコギリを持つと庭へと出る。


「今こそ、俺の本気を見せてやるからなっ」


 ちょっとだけテンションが上がっていたのだろう。そんなことを庭に向かって宣言すると、うねうねと庭に蔓延る有象無象を早速刈り取り始めたのだった。

 背後から、ついてきたクロのため息が聞こえた気がした。


 ◇◆


「ふぅ、こんなものかな」


 俺は更地と化した庭を前に額の汗を拭う。なかなか厳しい戦いではあったが、からくも勝ちをおさめたと言えるだろう。

 俺の背後には刈り取った有象無象が山となっていた。


「ユウト、もういっぱいです。これ以上は無理です」

「なんだ、クロ。ほらまだまだ。いけるだろ。こう、少し向きを変えてだな。おらっ」


 珍しく泣き言めいたことを言うクロ。俺は生ゴミ処理機の前にいるクロとかわると、力ずくで押し込み始める。

 隙間を埋めるように押し込んで追加で少しゴミが入る。しかしまだまだ刈り取った物は山となっていた。


「後は、……焼くか。クロ、焚き火ってして大丈夫か調べてくれる?」

「日常生活で通常行われる廃棄物の焼却で、軽微なものは法令としては例外的に良いようです。ただ、消防に届け出がいりますね。こちらはダンジョンが出来てから制度改正があったようで、ネットで申請出来るようですね。いま、申請しました」


俺もダンジョン配信で焚き火をしている動画を見たことがあった。確かにいちいちダンジョンから出て直接書類を提出した申請、って言うのは現実的ではない気がする。


「申請、ありがとう。これで大丈夫?」

「後は近隣トラブルにならないように先に焚き火をすることを、ご近所に伝える方がよいみたいです」

「あー。緑川さんのとこか。わかった。ちょっと伝えてくる」

「はい。その間に、消火用の準備をしておきます」

「よろしくー」


 俺は後のことをクロに任せると、緑川さんの家に向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] それを焼いてしまうなんて勿体ない
[一言] それを やいてしまうなんて とんでもない! ニア はい いいえ
[一言] 燃え尽き 出来た灰,,, フェニックス(ばさぁぁあ(羽)) できちゃったりして
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