表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

169/319

ソラミミ

「白羅さんっ! どうやってここに! いくら貴女でも、ここは部外者立ち入り禁止だ!」


 イサイサの視線をおって振り向いた双竜寺が語気鋭く告げる。

 そんなことはお構い無しとばかりに、朗らかに応じる白羅ゆり。


「こんにちは、双竜寺課長。もちろん、私のユニークスキルによって、ですよ。ご存知でしょう? 空耳(ミスヒアリング)のことは」


 ぐっと詰まる双竜寺。


「……もちろんです。ハードラックやハローフューチャーと並ぶ運命操作系。その制約と代償の多さの代わりに必ず、ソラミミした運命が必ず実現するというユニークスキル。いったい、誰の発言をソラミミしたのですか」

「もちろん、ユウトさんですよ。彼は最も力ある存在、でしょう?」

「そうか、あの時か……。いったいなんと聞こえたか、お教えいただいても?」


 加藤は、そんな二人のやり取りを聞きながら、自らの近接戦闘特化のユニークスキルの発動を構える。そして、そっと双竜寺に確認をとる。

 OKが出れば、いつでも動けるようにしながら。


「課長、いいんですかい? 追い出さなくて」

「ここに白羅さんがいることがユニークスキルによる運命なら、そんなことは無駄だ」

「……わかりました」

「あらあら。ユニークスキルを使われるのでしたら私の博愛(ラブ)を与えようと思ったのですけど」

「結構ですっ」


 そんな加藤に少しからかうように声をかけるイサイサ。


「ふふ。そういう訳で、私はここに居てよろしいようね。さて、ソラミミしたのはユウトさんの名乗って頂いたお名前です。白羽黝人(シラハユウト)


 その場にいる誰もが黙り、白羅の次の言葉に耳を傾ける。

 しんとした室内に、処置室から届く野太い悲鳴だけが響いている。


「私のユニークスキルで、『シロはクロと』とソラミミしましたの。クロさんは、今こちらの施設にいらっしゃるのでしょう? そしてこれから産まれてくる女の子たち。彼女たちこそが、クロさんと対となる『シロ』たる存在なのですよね、イサイサさん」


 白羅ゆりの問いにただ、微笑みで返すイサイサ。

 白羅ゆりも、それだけで満足したように笑っている。


「いや、それ。耳悪すぎないか。というか、漢字の読み方が変わってるから、そもそも空耳じゃないんじゃ……」


 そんな加藤のツッコミは、残念ながら全員からスルーされてしまったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ