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side オボロ 2

 オボロは他の式典参加者とともに避難誘導に従って舞台裏を進んでいた。


 そして、その身の存在変容は絶賛継続中だった。


 主人であるユウトの憂いをはらすために生まれでた存在のオボロ。その行動理由はこれまですべて、ユウトのためだった。

 しかしその行動理由の中に、つい今しがたまでは、害意や破壊衝動といった攻撃に直結する感情は一切なかったのだ。


 しかし、オボロ自体はその存在理由の大部分を、戦いのなかに確立した存在。


 そんなオボロにとって、初めてだったのだ。


 ユウトから絆を通して流れ込んでくる、『戦意』。


 それは、大いなる存在であるユウトから半ば強制的に、オボロの魂へ、脳髄内へ。そして肉体の隅々へと差し込まれ、その身を完全に満たしていく。


 オボロにとっては、これまでに感じたことのない、大いなるよろこびだった。

 満たされて、初めてそれを心底、渇望していた事を理解させられるオボロ。


 おのが存在理由たる『戦い』を全肯定されるのだ。

 指先の一つ一つまで溢れ出さんばかりに、快楽といっても過言ではない、それが満ち満ちていく。


 そんな至高のよろこびを体験しているさなかだった。

 ふと、おのが仮の名を呼ぶ声を耳が拾う。


 その声は、無視してはいけないと体に刷り込まれたものの一つ。

 その刷り込みのままに、振り返る。


 そこにいた存在。


 主人たるユウトと、その想い人たるお方。


 おのが肉体を満たすよろこびの、根元たる存在。その御姿を肉眼で視認した瞬間、オボロの中で継続していた存在変容が、一気に加速する。

 よろこびと混在一体となった戦意が物理的な力となって今にも溢れださんとする。


 もう、どうにも堪えられないとばかりにその身をよじると、最後の理性を働かせてオボロはエクストラスキルを発動する。


「『天駆』」


 その身を宙へと解き放つオボロ。

 耳につけたインカムから、ちょうどクロの声が伝わってくる。それはクロの分体たるドローンが追跡している存在が、その巣へとたどり着いたという知らせ。


 宙に身を踊らせたオボロは安堵の吐息をもらす。

 我が身を満たし、今にも溢れだそうとしていた戦意を、心おきなく吐き出しぶつけられる場所を知りえた、安堵だ。

 インカムの導きのままに天を駆けるオボロ。


 こうして、大地に一つ、深淵へと至る大穴が穿たれることとなる。

 これまで数多の富とともに無数の犠牲者を生み出してきた、ダンジョン。

 そのダンジョンと人との関わりの、転換期の象徴となっていく大穴が、この日、生まれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] あーパパさんこれは死んだかなぁ
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