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タワー

 緑川さんに案内されて駅構内を歩いて着いたのは、なんとなく裏口のような場所。

 人気があまり無い。


 ──そういえば、ここまで歩いてくる間も、あんまり人がいなかったな。もっと沢山人がいるものかと思ってたけど。


 俺たちが裏口っぽいところに到着したのとほぼ同じタイミングで、スッと一台の車が停まる。


「さ、ホテルまでタクシーで行きましょうか」

「──うわ、タクシーってこんな感じなんですね。シート、ふかふかだよ。ユウト」


 いの一番に乗り込む早川。

 俺もタクシー乗るのははじめてだ。てっきり電車を乗り継いでホテルまで行くのかと思っていた。


「早川、荷物ぐらい自分でやりなよ……」


 俺は置きっぱなしの早川のスーツケースを見ながら一つため息をつくと、タクシーの運転手さんに渡して、トランクにしまってもらう。

 緑川さんと目黒さんは荷物が少ない。ホテル宛に事前に宅配済みらしく、旅慣れした雰囲気がある。

 俺も一泊なので荷物は少なめだ。そのままもってタクシーへと乗り込む。


「……これは確かにフカフカだ」

「でしょー。すごいねー」


 俺たちがそんなやり取りをしている間に、助手席に乗った目黒さんがなにやら運転手さんに話しかけ、タクシーが動き出す。


「二人とも、小さい子供みたいよ?」

「はーい」「すいません、緑川さん」

「まあ、いいけどね。それより、ほら。早川さんは興味があるんじゃない? あれが広域帯総合魔素結晶塔、『タワー』よ」

「うわっ。大きいですね!」

「タワー? なんでしたっけ?」


俺もつられて窓の外を見る。そこには天を突くように巨大な塔があった。明らかにダンジョン産と思われる有機的な素材が所々に使われたそれは、その巨大さもあってどこか生々しい圧倒的な存在感がある。


「何言ってるのよ、ユウト。あれがあるからダンジョン配信、出来るんだよ!」


 急にスイッチの入る早川。そこからタクシーのなかで、ダンジョン配信の仕組みやらタワー建造の歴史やらを熱弁し始める。

 俺は微笑ましいものを見つめる、生暖かい視線をそんな早川に送りながら、相づちを打っていく。

 その時だった。ふと、緑川さんの方を見る。緑川さんも生暖かな視線になっている。ただ、その視線はなぜか俺達二人に向けられているように感じられた。

 俺が焦って何か言おうとしたところで、緑川さんに先を越される。


「さあ、着くわよ。降りる準備をしましょう」


 その言葉が合図だったかのように、タクシーは立派なホテルの前に停まったのだった。





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