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side 緑川 9

「緑川、今回の件ご苦労だったな」


 ダンジョン公社本社に顔を出した緑川に、課長が労いの言葉をかける。


「ありがとうございます」

「うむ。お陰で地方議員の先生方にも十分に恩を売れた」


 苦いものを噛み潰したような顔をしながらも笑みを浮かべる課長。

 どこか獰猛な肉食獣のような印象さえ受ける。


 スタンピードの主を倒す順番について、偶々幸運なことに緑川の言をオボロが受け入れてくれていたのだ。

 その優先順を対価に、裏では課長が各先生方とばちばちにやりあっていた。


「これで、かなりの無理も通せるだろう」

「それは、何よりです」

「それで、だ」


 緑川はきたかと、身構える。ここまでの話は当然緑川も把握していたこと。わざわざ本社に呼び出されるということは、それなりの案件があるとは覚悟はしていた。


「オボロへ、勲一等の授与の話が出ている」

「女性で、準戦時下によるものということは……もしかして勲一等桜花剣章、ですか?」


 それは勲一等の中でも特別なものだった。

 女性で、かつ戦いに置いて特出した戦果をおさめ、国に多大な貢献をしたと認められた証。

 今回の件で言えば、まさにオボロに相応しいものと言える。

 そして、実際に授与されれば、歴代でオボロが二人目の授章者となるのだ。


「そうだ。一般公開した授与式典も予定されている。そこでは、今回のヨンナナスタンピードにて功績のある他の者たちへの勲章授与も行われる予定だ。まずは緑川、オボロ本人への内示と受諾をとらねばならん」

「オボロさんの行動は、事が、ユウト君のためになるか否かに依ります。前にもお伝えしましたが、一般的な判断基準は全く当てになりません」

「理解している。しかし今疲弊した我が国の国威発揚のためには、必須なのだ。何よりも、勲一等桜花剣章の授章者となれば、我々がオボロのためにはかれる便宜も桁違いに大きくなる。よろしく頼む」


 そういって、深々と頭を下げる課長。


「わかりました。尽力します」


 そう告げて、緑川も退出するしかなかった。オボロを国公認の英雄として祭り上げる任務。それを課せられた緑川の背中はどこか煤けて見えた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 一度国民の命に優先順位を付けた国家の国威発揚とか、誰も真に受けないけどなぁ。無いものを誇示しても虚しいだけじゃない?少なくとも既存の体制とそれに紐付く団体はアウトな気がする。
[一言] 言うだけ聞くだけで地雷踏む案件って非常に多いのにな 文句があるのでしたら政治家本人にどうぞって丸投げしたら処してくれるかな
[一言] 100話到達おめでとうございます。 姐さん何処までも苦労人で癒しの猫ちゃんと気楽に戯れる事もままならないとか可哀想… これがハードラックか…
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