ミラちゃん、散策する。
ミラちゃんはとあるアパートの近くを歩いています。神様からもらったプリントのうちの一枚を読んでいます。
友坂勇輝27歳男会社員一人暮らし。趣味なし。特にすごい経歴もなし。
ーーーなんでこんな男が救世主?
なんて思いながら便利ポケットから
「千里眼双眼鏡〜」
とどこかの青狸よろしく双眼鏡を取り出します。さてさてと双眼鏡で友坂勇輝が住んでいるアパートを覗きます。
アパートの壁が透けて中がありありと見える。ベッドに寝そべった男が一人。
その時、ミラちゃんのそばを二人の女子高生が通ります。
「あの人やばくね?」
「なんか覗いてるよ」
女子高生たちはこそこそとミラちゃんの方を見ています。
「こ、こほん」
とミラちゃんはいそいそとその場を離れます。
ミラちゃん、牛丼をかきこんでその日は漫画喫茶で泊まります。ブースのタイプはフラットタイプを選びました。結構居心地いいね、と漫画を探します。ドリンクバーはカルピスを飲みます。最近の漫画を読んでいないので新刊一覧から面白そうな漫画をチェックしてその一巻から読もうとします。しかしすぐに頓挫してしまいます。新しい世界観を理解するのがめんどくさいのです。
ーーー精神的な老いね
などとアンニュイにため息をつきながら漫画を棚に戻します。そして次に選んできたのは自分が若い頃熱中した既読の漫画です。展開は分かっていながらも面白い面白いと読み進めます。
ーーーやっぱカス○ードって至高のライバルだわ
などと昔の自分に戻っていると、、隣のブースからラーメンを啜る音が聞こえます。ミラちゃんも小腹が空きました。こんな時ぐらいいいよね、とカップ麺を買いに行きます。通路ですれ違う大学生っぽい男、ドリンクバーを取りに来ているスーツのおじさん、トイレで歯磨きをするジャージの女の子。なぜか全て仲間に見えます。別に話すわけではありません。さて、深夜のカップ麺で思い出すのは受験期です。あの頃はよく次の日など気にせず深夜にカップ麺を食べました。天使大学を目指していたあの頃。家で一人で勉強しながら、でも友達と「今日は寝ず勉」などとくだらないメールしたりしながらでもやっぱりテレビをつけちゃったりして、あらび○団を見ちゃったりして風船おじさんに笑ったりしたものです。なんてどうでもいいのです。深夜に食べるカップ麺はカス○ード並に至高です。うまい。うまいというか、うまい。食べ終わり、再び漫画を読み始めます。
ーーーあの蜂が戦うやつも面白いんだよな〜3巻で打ち切りっぽいけど結構ちょうどいい長さだったような
なんて他にも読んでいたら結構な時間になっていました。朝日が昇りかけている時間でしょう。ちょっと仮眠するか、と眠ります。ブランケットが暖かいのです。
朝9時前です。寝覚の悪さは異常です。身体の節々が凝っています。顔は脂っぽいといか、とにかく気持ち悪い。口の中もなんか気持ち悪い。カップ麺のせいでお腹も気持ち悪い。頭も痒い。年齢を感じます。トイレで歯磨きを済ませ、外へ。太陽の光が眩しい。この漫画喫茶は商店街の中にあります。自転車に乗ったおじさん、シルバーカーを押すおばあさん、口達者そうなおばちゃん、どちらかというと平日のこの時間は若者はいません。ぶらりと歩いていると少しずつ気持ちも上向きになります。24時間やっている立ち食いうどんそば屋があります。食券を渡します。水をごくりと飲みます。うまい。まもなく山菜そばがきました。すすります。味もまあ悪くない。山菜の少しの酸っぱさがとても好きなのです。食べ終わるとまた外へ出ます。ゲーセンに寄ってみたり、パチンコ屋でトイレを借りたり。ギャンブルはしません。それで人生破滅になった人を知っているので。でもトイレは借ります。パチンコ屋のトイレはとっても綺麗だから。パチンコの休憩スペースで漫画を読んでいるおじさんがいました。ここで漫画読んだら無料だな、なんてミラちゃん思ったりもしたけど、いやそれはよくないな、なんて店を出ます。トイレはいいのです。コンビニでジャ○プを立ち読みします。立ち読みは良くないと思いながらも立ち読みします。読むのはワ○ピだけ。ワ○ピだけはいまだに追っています。定期的に面白くなるから、あと世界情勢が気になるから。
コンビニを出て、どうするかな、なんて歩いているとカラオケがありました。カラオケいいね、と一人で入っていきます。何年振りでしょう。カラオケを行く友達もみんな結婚してしまいました。20歳前後は遊ぶと言ったらカラオケ、みたいな時期もあったのですが、25あたりからはお酒が入っていないと恥ずかしくなりました。一人で久しぶりに歌っているとなかなか気持ちの良いもので、あれもこれもと気づけば3時間一人で歌いっぱなしです。外に出ると、商店街に人が賑わってきています。夕方です。中華料理屋があります。結構混んでいます。店先に書かれたメニューを見ます。どんだけメニューの数多いんだとミラちゃん唸ります。お手頃なAセットを頼みます。味は他の店と比べて可もなく不可もなくですが、中華ってそれでいいんです。中華ってそれだけでそこそこうまいから。満腹です。昨日読もうとしていた漫画読みたいな、とミラちゃんは再び漫画喫茶へと向かおうとして足を止めます。風呂入りてえな、と。少し歩いて、健康ランドへやってきました。風呂は兎にも角にも気持ち良い。そして雑魚寝スペースにやってきました。
ーーー漫画読めるじゃん!
漫画が棚に結構な数あります。
ダークファンタジーといえばこれ、と漫画を手に取ります。実はミラちゃん、この超有名漫画を未読なのです。作者が最近亡くなって未完ですが、ミラちゃんそれも把握しながら読み始めます。周りから「これ読んでないの?」と言われるのが嫌なのでいつかは読まないとと思っていた作品なのです。別に誰が「これ読んでないの?」と聞くわけでもありませんが、でも読んでおきたいのです。「これ読んでないの?」と聞かれた時のために。そして「ダークファンタジーといえばこれだよね」と言いたいがために。
読み始めると止まりません。止まらず13巻まで読み終え、棚へ。
ーーーは?
14巻が抜けてます。14巻がありません。周りを見渡します。雑魚寝漫画勢の中に、べル○セルクを読んでいる人はいません。健康ランド側のミスじゃねえか!とフロントへ文句を言いたい気持ちをなんとか抑え、健康ランドを出ます。向かう先はやはり漫画喫茶です。続きが気になったらもう止まりません。
でもふと思います。多分13巻が物語のピークだったんじゃないかな、なんて。そんなこと考えずに漫画を読み進めていた新鮮な10代の頃に戻りたいものです。それでもやっぱりミラちゃんは漫画喫茶へ向かうのです。
ミラちゃんは、漫画が好きなんです。




