前編
登場人物の設定に関しては気にしないでください。大人の男女と大人になりかけの男女のツーマンセル・ツーセットです。
飾り気のない部屋に四人の男女が集められていた。
「何だこの部屋は、殺風景だな」
「会議室に何を求めているのかしら」
「あのー。何が始まるんですか」
緑色の軍服を纏った男女の会話にメイド服姿の若い女が声を掛ける。
「心配しなさんな。お嬢さん。大本営からの嫌がらせだ。すぐに済ませる」
「何ですか。大本営って。日本軍? 」
「おい。エリカ。この人たちは何なんだ」
「今聞いてるから、ちょっと待って」
青年が心配そうにあたりを見渡す。
「さて、お集まりいただいた紳士淑女の諸君。ここから世界線をぶち壊した座談会を行えとの命令が下された。お付き合い頂きたい」
「もう少し、詳しく説明したら」
軍服姿の男の宣言に銀髪の女性士官がたしなめた。
「もっともな意見だが、本職もよく分かっていないからな。なんなら貴官が変わるか」
「結構。始めて頂戴」
「では、自己紹介といこう。本職は人類共生統合連邦軍所属、カルロ・バルバリーゴ少佐。こちらは同僚のアデレシア・ラ・ロンバッハ少佐。二人とも軍艦の艦長職を拝命している」
「やっぱり軍人さんだったわ。エリック。貴方と同じよ」
「同じか? 」
青年は首をかしげた。
「名乗られたからには、名乗り返さないとな。ニースの村で代官を務めている。エリック・シンクレア・センプローズだ」
「窪塚江莉香です」
「それだけか」
「それだけでいいの」
二人の言葉にカルロは頷く。
カルロ 「お二人ともよろしく。名前で呼んでも構わないかね」
江莉香 「いいですけど」
エリック 「構わない」
カルロ 「では、本題に入ろう。今回の会合は、小説家になろうにおける人気。簡単に言えば、評価ポイントの稼ぎ方について考察してみようと言うのが趣旨だ」
ロンバッハ 「急にメタい話になったわね」
江莉香 「世界観は大丈夫なんですか」
エリック 「無理だろうな」
カルロ 「心配はいらない。全ての責任は大本営にある。我々は与えられた任務を只こなすだけの歯車だ」
ロンバッハ 「若い二人に悲しいことを言わないでいいから、進めなさい」
カルロ 「了解だ。さて、読者の皆様に改めて説明の必要はないと思うが、小説家になろうに置いて評価ポイントというものは非常に重要だ」
ロンバッハ 「これしか客観的な評価基準が無いから致し方ないわね」
江莉香 「でもでも、読者の人の感想とかでも評価できるんじゃないですか」
エリック 「手間を考えたら難しいぞ。一度その作品に接しないとな」
カルロ 「かような訳で、必然的にポイントを多く稼ぐことが求められる」
江莉香 「別に好きで書いて投稿しているだけなんですから、ポイントとか関係なくないですか」
カルロ 「誰にも評価されずとも、己が作品をただ黙々と投稿できる胆力のある持ち主なら、まさにその通り」
ロンバッハ 「貴方には無理ね」
エリック 「俺にも無理だ。評価もされず、ただ働くなんて」
江莉香 「言われてみればそうかな」
カルロ 「では、どうすればポイントを得られるか。簡単だな。傑作を書けばいい」
江莉香 「無理ゲーキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
ロンバッハ 「そんな人はこの場に居ないわよ。聖杯を探しに行かないで」
エリック 「正論だが、俺みたいな凡人には無理だ」
カルロ 「よって、ポイントを稼ぐためのテクニックというものが介在する余地が生まれるのだ」
ロンバッハ 「何を偉そうに、貴方が考えたものではないでしょう」
カルロ 「うむ。この戦果ポイントの稼ぎ方については、数々の賢者たちが考察し、動画も数多く上がっているので、それを参照することを強く勧める」
江莉香 「じゃ、私たちいらなくないですか」
カルロ 「ここからは、作者の加藤一等兵の体験と考察になる」
ロンバッハ 「二等兵じゃなかったかしら」
エリック 「二等兵ってなんだ」
江莉香 「一番下っ端っていう意味よ」
カルロ 「泣くからやめてやれ。さて、余談はさておき、我々が華麗なる活躍をする『突撃艦コンコルディア』と、君たちが活躍する『異世界チート知識で領地経営しましょう』は、登録者様が100名を超えることができた」
江莉香 「ありがとうございます」
ロンバッハ 「活躍はともかく、皆様に感謝いたします」
カルロ 「この、100名の登録者様と言う数は、小説家になろうに置いて一つの目安となるらしい」
ロンバッハ 「そうなの。ソースのある数字なのでしょうね」
カルロ 「小説家になろうのデータを解析されている賢者の方の情報を参照している。信用度はうちの情報部より高いだろう」
ロンバッハ 「了解」
カルロ 「そのデータによると登録者様100名を超えると、小説家になろう全体の上位10%には確実に入っているらしい」
ロンバッハ 「凄いわね」
エリック 「10%ってなんだ」
江莉香 「100人で競争して、上から10人以内にいるって事よ」
エリック 「凄いじゃないか」
江莉香 「うん。凄い」
ロンバッハ 「だから、大本営もこんな無茶な作戦を捻じ込んだのね」
カルロ 「応援してくださる、皆々様のおかげだ」
①読んでもらうためにはジャンルが大事
カルロ 「評価されるにはまず、読んでもらわないと話にならない」
ロンバッハ 「当然ね」
江莉香 「無料だから敷居は低いですよね。お金かかったら嫌だもん」
カルロ 「エリカの言う通り。取りあえず読んでもらえる敷居はとても低いので、ここを心配する必要はない。誰かは読んでくれる」
エリック 「でも、何かしないとダメなんだろう」
カルロ 「うむ。まず第一は、その作品のジャンル分けだ」
ロンバッハ 「ファンタジーとか恋愛とかホラーとかの区分のことね」
江莉香 「恋愛がいいと思います」
カルロ 「言うまでもないが、人気のあるジャンルに投稿すれば、読者の母数が多いから、多くの人の関心を呼びやすい。必然手に取ってもらえる確率も上がる」
エリック 「俺たちのファンタジー部門は恋愛と一二を争う部門だな」
ロンバッハ 「私たちのSF部門は弱いわね」
江莉香 「てっ事は、ファンタジーか恋愛物語を書けって事? 」
カルロ 「データから言えばそうなるな」
江莉香 「でも、作者の人が書きたい内容とマッチしなかったらどうすればいいんですか」
ロンバッハ 「簡単よ。無理にでも恋愛要素を混ぜて、恋愛と言い張ればいいのよ。ゾンビが大量に出てくるけど、これは少年少女の恋の物語と銘打てば問題解決ね」
エリック 「詭弁だな」
ロンバッハ 「間違えてはいないし、嘘もついていないわ」
カルロ 「落ち着け。話がそれている。ここで言いたいのは人気のジャンルは読者が多いから評価されやすいと言うことだ」
江莉香 「ガッテン」
エリック 「なぜ机をたたくんだ」
②タイトルだけで勝負が決まる
エリック 「作品の題名の事だな。俺たちの題名っておかしくないか」
江莉香 「私も思ってた。変な言葉遣いだし」
カルロ 「だが、小説家になろうにおいては、それが効果的なのだ」
ロンバッハ 「多くの作品で文章みたいな題名が氾濫しているわね」
カルロ 「理由は明白。タイトルだけで中身を類推できることが好まれるからだ」
ロンバッハ 「なぜ? もっと、文学的な題名でもいいと思うのだけど。私は『夏への扉』という小説のタイトルが素晴らしいと思うわ」
江莉香 「同意します。『夏への扉』は古典SFの傑作だと思います」
カルロ 「二人の気持ちはわかるが、それで小説の中身が類推できるか」
ロンバッハ 「読めばわかるわ」
エリック 「読むまでの話をしているのでは」
カルロ 「確かに文学的なタイトルでも需要はあるだろが、いかんせん読者は少数派だ。ポイントは稼ぎにくい。完全に中身での勝負になるぞ。いけるのか」
エリック 「それが出来ないから、悩んでいるんだけどな」
江莉香 「でもそれで、逆に目立つかも」
エリック 「否定はしないが、全体の傾向としては難しいのかもしれないぞ」
江莉香 「流れに掉さすって言うことかな」
カルロ 「題名はそれ単体で小説の中身が類推されることが望ましい」
ロンバッハ 「馬鹿げた現象ね」
カルロ 「これは作者の問題というよりも、小説家になろうというフォーマットの問題だ」
ロンバッハ 「いいでしょう。次は」
③あらすじも大事
江莉香 「これは、考えるまでもないでしょ。リアルの書籍を買う時だって帯のキャッチコピーとか、店員さんの紹介文とか読むもん」
カルロ 「だが、実際として手を抜く者がいる」
エリック 「そんな奴いるのか。誰だ」
カルロ 「加藤一等兵だ。『突撃艦コンコルディア』のあらすじは僅か一行。これではあらすじともいえん」
ロンバッハ 「だから一等兵なのよ」
エリック 「なぜそんな真似を? 何かの信仰か? 」
ロンバッハ 「思いつかなかったそうよ」
エリック 「いや、自分で書いているんだろ。なぜ思いつかないんだ」
江莉香 「エリック。私たちの作品も最初は一行だけだったわよ。今は頑張って三行にしたけど」
カルロ 「我々の作品も、今は三行だ」
エリック 「頑張って三行か。わざとやっているんじゃないのか」
カルロ 「半分はそうだろうな。中には本編か!!と言いたくなるほどの分量であらすじを書いている作者もいるからな。差別化できると思ったのだろう」
ロンバッハ 「結果は」
カルロ 「効果なし。悪影響の方が多いだろう」
江莉香 「結局。あらすじはしっかり書けと言うことですね」
エリック 「具体的には何を書けばいいんだ。冒頭の部分か」
江莉香 「あらすじなんだから、全体の流れを書けばいいんじゃないかな」
ロンバッハ 「キーワードを書いていくのも一つの手段ね。読者が興味を持ちそうなワードをちりばめて、小説の内容を想像してもらえると、より効果的でしょうね」
江莉香 「例えば、お嬢様、恋愛、出世、願望、背伸び、身分違い、美人の魔法使い、とかかな」
エリック 「遠回しに俺の事を馬鹿にしているだろう。その上、自分だけよく言いやがって」
江莉香 「ありゃ。ばれちゃったか。ごめんなさい」
カルロ 「それらはキーワード検索用のワードだな。それも有効な方法だ。読者の興味の引けそうなワードはどんどん使うべきだ」
ロンバッハ 「今、上げたものを全て入れ込んだら、それなりに長いものになりそうね」
カルロ 「長すぎるのはどうかと思うがな。これはデータの取りようがないので、これ以上の言及は控える」
ロンバッハ 「くどい文章は嫌いよ」
④定期的な投稿が大事
江莉香 「締め切りですね。漫画雑誌でたまにネームみたいな掲載がありますけど、あれ出すぐらいなら一週休んだ方がよくないかな」
カルロ 「決った期日の話しではないんだ。読者の記憶から消えないうちに次の話を出せと言うだけの話だ」
ロンバッハ 「せっかく手にしてもらったのに、忘れられては悲しいものね」
カルロ 「最低でも一週間に一本。内容、文章量により違うがな。ものによっては半月に一本」
江莉香 「二週間に一本か。待てるっちゃ待てるかな」
エリック 「理想は? 」
カルロ 「毎日一本」
江莉香 「無理よ。失敗した、失敗した、失敗した、失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。だけでいいならできるけど」
エリック 「うるさいぞ。魔法の呪文か? 」
カルロ 「普通は無理だな。だが、やりようはある」
江莉香 「どうやって」
ロンバッハ 「完成した作品を、毎日一話ずつ小出しに出していけば可能でしょうね」
エリック 「なるほど、賢いな」
カルロ 「実際、この手法は効果的だ。だが越えなければならないハードルも多いい。4~5話程度の短い話ならともかく、長編には向いていないな。己を信じる心と、投稿したいという欲求に勝てる強い自制心を持っていれば可能だが」
ロンバッハ 「現実的とは言い難いわね」
カルロ 「これを実践する場合は、作品を紙に書いて完成させてから、毎日文字起こしをして、投稿すればいいと思うが」
江莉香 「今日日、紙に小説書く人って絶滅危惧種だと思いますけど」
エリック 「そうなのか」
江莉香 「いや、勝手な想像だけど」
カルロ 「読者に忘れられる前に何か書けと言うことだな」
ロンバッハ 「忘れられないうちに。ねぇ」
カルロ 「言うな。きっと暗号解読に手間取っているだけだ」
ロンバッハ 「作戦司令部が夜逃げしてなければいいのだけれど」
カルロ 「今回はここまでにしよう。続きは後編でやることにするから待っていてくれ」
ロンバッハ 「お願いします」
エリック 「喉が渇いた。エリカ。そこの水を取ってくれ」
江莉香 「エリック。これ、カフィよ。飲めるの」
エリック 「なんだって・・・・・」
ロンバッハ 「紅茶でよければ入れるわよ」
江莉香 「あっ。お願いします」
続く
予定より長くなったので2部構成にします。
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