第89話:早かったのね?
「お呼びの様だ、行ってくる」
「大変ね、期待のルーキーさんは」
「行ってらっしゃーい」
「お気をつけて」
残った食事を掻き込み、エリアスを持って声のした方に向かう。
「Bランクのヨシタカさーん!」
変に注目を集めるからそんな風に呼ぶな!
「ここだ!」
俺に気付いた若い男が近寄ってきた。
「ヨシタカさんですね? レグさんが呼んでいます、テントに行ってください」
「解った」
作戦会議用のテントに入ると、10人程の姿があった。
俺が入るなり、一斉に此方に視線が向けられる。
「来たか」
「呼んだのはそっちだろ?」
「まあな。取り敢えず座れ」
空いている席に座ると、エリアスが頬擦りをしてきた。
くっ! 食後のお菓子か⁉
机の下でエクレアを出し、肩にいるエクレアに突き刺す。
ぽっ! ふるふるふる!
ちょっと乱暴だったが、味には満足している様なので怒ってはないだろう。
「何をやってるんだ?」
レグがへんな顔をしている。
「エリアスの世話だよ! 文句あるんか!」
俺の関西弁に若干、周りが引いている。
「そう言えば、お前は従魔を連れていたな」
「飯の途中で呼ばれたんだ、用件は?」
「おう、その事だが、偵察に行かせた連中の報告から、お前が探しだした集落の信憑性が高まった」
信憑性もなにも、実在しているモノだから信じるしかないぞ。
「そこで、当初考えていた作戦内容に手を加える事になった」
「なんだ? 俺のせいか? 俺が悪いのか?」
なんか言い方が悪かったのでムカついた。
それに、手を加えるレベルで済むのか?
「なんなら、俺が1人で全ての集落を潰してくるぞ? 3日あれば充分だ」
これは本当だ。形振り構わず立ち回れば可能だろう。
「おまっ! 本気で言っているのか⁉」
他の者達も周囲でヒソヒソと言葉を交わしているが、レグは明らかに動揺している。
「じゃあ逆に訊くが、今回の参加メンバーで、オークジェネラルをタイマンで倒せるヤツはいるか? 集落を1人で潰せるヤツは?」
「それは……、いる訳ないだろう」
「いないだろうが! 今日、潰した集落にはジェネラルがいたんだ、他の集落にもいると考えた方がいい。最悪、キングだってな」
「そこまでになると、話が変わるぞ」
「だったらジェネラルがいる前提で動いた場合、どうやって集落を攻めるんだ? 此方の被害規模の想定は?ちゃんとそこまで考えているのか?」
「………………」
厳しい言い方かも知れないが、俺でさえ決め手に欠けて手こずったオークジェネラルを、他の冒険者達が束になって倒すとなれば、相当な犠牲が出るだろう。
レグ達からは危機感が感じられなかった。
作戦を見直す程度でどうにかできる相手なら、俺が3日で片付けてやるよ。
「俺の言った事を踏まえて作戦を見直せ。納得出来る内容なら協力してやる。出来なかったら、全部1人で潰すからお前等はニードラングに帰れ、邪魔だ!」
そう言い放ち、テントを出る。
言い過ぎたし、言い方も悪かったが、これぐらい言わないといけない気がした。
オークジェネラルと闘った際の、肌に感じた感覚を忘れられない。あれが強者の放つ存在感やプレッシャーなのだろう。
俺でも感じたあの感覚の前で、並の冒険者達が普段通りの戦闘なんて出来る訳がない。
最悪の場合、オークジェネラルの気に呑まれて殺されるだけだ。
レグにはよく考えて欲しい。俺の使い方を。
ここに集まった冒険者達の命を無駄に散らさない為の最善の手を。
レイライン達と食事を取った場所に戻ると、3人はまだその場所にいた。
「あら、早かったのね?」




