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第87話:グルメなスライムだ

「オマエ、本当に人間か?」


「その言葉は聞き飽きたぞ」


この場合の人間とは人族の事ではなく、エルフや獣人、ドワーフといった亜人種を含んでいる。

レイラインの場合はエルフという立場から、【人間】とい言った様だが……。


「イルクはいるか⁉」

「はい! レグさん!」

「こっちにこい!」


レグが誰かの名前を呼ぶと、人混みを掻き分けて1人の男が近付いてきた。顔は知っている、同じ馬車で移動していたギルドの職員だ。


「ヨシタカ、コイツ等の魔石は?」

「まだそのままだ、そこまでする時間は無かった。暗くなる前に帰りたかったからな。どうせ新人達にやらすんだろ?」

「ああ。イルク、聞いてただろ、新人達を集めてこの豚共を解体させろ!今日の晩飯が豪華になったぞ!」

「分かりました、急いで取りかかります」


そう言って、イルクは人混みに消えていった。


「詳しい話を聞く、付いてこい」



レグのあとを追い、ベースキャンプの中央辺りに移動すると、作戦会議用のテントに入った。一応は作戦会議用だが、レグが寝起きする為のテントらしい。


椅子に座り、レグが口を開いた。


「で、何があった?」


単刀直入すぎて嬉しくなるね……。


「先ずはこれを見てくれ」


アイテムボックスから、さっき作った地図を出す。


「この森の地図か⁉」

「そうだ、そしてこの丸い印がオークの集落の場所だ」

「1・2・3…………13、オークの集落は13もあるのか⁉」

「13?!」×2


レグ、ビニッツ、ナデタの3人がメッチャ驚いてる。


「ああ、俺がギルマスに聞いていた数よりも多かったから、俺の実力を示す為に1人で集落を潰した。他に聞きたいことは?」

「あの短時間で集落を潰した事もそうだが、どうやって広い森にある集落を13ヶ所も見つけてきたんだ?」

「レグさん、俺がナデタと確認した集落の位置は合ってますよ」

「そうだな、こことこれだ。場所は合ってると思う」

「なら余計に疑問になるな。どうやって場所を知ったんだ?」


それは言えねー。


「それを含めて俺の実力だ。別に他の斥候役をバカにしてる訳じゃない。この2人が確認したからこの2ヶ所は信じられるだろう? 他の斥候役とも答え合わせをすればいい。オークジェネラルだって俺がいればなんとかなると解ったはずだ。それでも俺の能力に難癖をつけるなら、このままニードラングに帰るだけだ」


脅しではないが、俺の能力に関しては全てをコイツ等に公開する気はない。


ギルマス自身がわざわざ協力を求め、オークジェネラルを、いやオークの集落を1人で対処出来る人材をレグが手放す訳はない。

ギルマスにも自由行動を許可されているのだ、文句はギルマスに言え。


もしも俺が抜け、他の冒険者達で挑んだ挙げ句に甚大な被害が出れば、レグの責任になる。レグの管理能力が問われる事態だ。


「お前がここまで規格外だったとは思ってなかった。確かに冒険者として手の内を晒す義務はない。お前のいう様に、他の場所の確認はさせてもらうから、それまで風呂に入ってこい」


え!


「風呂があるのか⁉」

「その為にも魔法使いを連れてきた。討伐戦の場合、今のお前みたいに前衛職は汚れるからな」

「それなら風呂に行ってくる、何かあれば呼んでくれ」


そうかそうか、風呂があるのか♪


テントを出て進むと、周囲の冒険者達の視線を集めるが気にしたら負けだ。どうやっても俺の存在は注目を集めてしまうのだからな。


辺りを見回すと湯気が見えたのでそちらに向かう。



おお~、ここが風呂か。


2メートル程の壁が広がり、入り口が男女で分かれている。

中は簡単な脱衣所と大きな浴槽があった。それぞれを仕切るモノはなく、脱衣所と浴槽があるのだ。

上を見れば天井がなく夜空が見えるので解放感がハンパない。露天風呂と諦めればオツなモンだよ、たぶん。



既に数人の利用者がいるが、浴槽が大きいので狭くは感じない。銭湯の風呂みたいで、なんかワクワクするね。



この風呂がどうやって出来上がったのか、湯槽に浸かっていた連中に訊くと、レグが言っていた様に、魔法使い達が協力して風呂を用意したらしい。


土魔法使いが壁や浴槽、水魔法使いが水を、火魔法使いが水をお湯にと、それぞれが協力してこのデカイ浴場施設が完成したそうだ。


このベースキャンプで腰を据えるから風呂を用意したらしく、この規模の冒険者達が集まれば当たり前の事らしい。


夜空を見上げながらの風呂も良いもんだ。


すりすり


「どうしたんだ?」


すりすり


飯か……。


「解った解った。腹が減ったんだろ?」


ぴょん!


そうだな、色々あって忘れてたが腹も減ったな。




◆◆◆◆◆




風呂上がりに軽く喉を潤し、脱衣所を出ると何処からともなく、肉を焼く匂いがしてきた。


すりすり


「オークの肉を焼いてるんだろう、行ってみるか」


ぴょん


匂いを辿ると、新人冒険者達が大きな鉄板で肉を焼いていた。見た目はポークステーキだ。


肉を貰う為に列に並ぶと、先に並んでいた連中が順番を譲ってくれた。


「アンタがオークの集落を潰してくれたから手に入った肉なんだ、並ばせられないぜ」

「流石は期待のBランクだよ」

「そうそう、明日からも頼りにさせてもらうからな」

「しっかり食ってくれよ」


調子のいい連中だと思ったけど、俺の実力を示す事は出来た様だ。戦意高揚は微妙だが。


一気に列の先頭に移動すると、レイライン達がいた。


「あ、ヨシタカさんとエリアスちゃん!」

「聞いたわよ、1人でオークの集落を潰してきたそうね」

「1人で、とは凄いですね」

「今後の為に少し動いただけだよ」


4人で近くの敷物に座り込み食事を始める。


3人はオーク肉のポークステーキの他にパンとスープ。

スープはジャガイモとニンジンが入った塩味らしい。


俺とエリアスはポークステーキの他にスープ、炊き立て状態をキープした白米にきんぴらごぼうだ。

今朝、朝食の際に気付いたが、俺とエリアス用の味噌汁やスープを用意してなかったので、仕方なく皆と同じスープを飲んでいる。


正直なところ、スープは美味くない。明日の朝に味噌汁を作り置きするつもりだ。

今日だけは我慢するが、エリアスはここで出されるスープは飲まない様なので、エリアスの分は貰ってない。


食欲は旺盛だが、料理の味には妥協しないらしい……。


グルメなスライムだ。

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