第62話: 人は見かけによらないな
区切りが良かったので、一端投稿しました。
夜中か、遅くても明日の午前中に次話を投稿します。
宜しくお願い致します。
子爵、頼むから嬉しげに瓶を抱き締めんでくれ…。
「子爵、次のお話なのですが…。」
「おう、そうだったね。何かな?」
「お話と言うよりも、お願いになるんですが………」
◆◆◆◆◆
バルム子爵と話し込んでしまったが、俺のお願いも快く了承してくれたし、昼食を俺が作ると言ったら子爵は大喜びした。
ついでに、卵を使った料理にしてほしいと注文までしてきた。(白メシが遠退いたよ…)
食堂にいるカルロを回収しようとしたら、食堂には誰もいなかった。
掃除をしていたメイドさんに訊くと、談話室でオセロをやってた。カルロはニードラング姉妹にコテンパンにヤられていたようだった。
「お嬢様方、カルロを借りますね?」
「ヨシタカさん、これは失礼しました。」
「失礼しました。」
「アニキィ~、頭が痛いよ~。」
だらしないヤツだ。
カルロを連れて屋敷を出る。
「試験をするのかい?」
「そんなトコだな。とりあえず、ついてこい。」
「緊張するな~。」
歩くこと3分、目的の場所に着いた。(近っ!)
「アニキ、ここって…。」
「見ての通りだ。入るぞ。」
「アニキ!ここはマズイって!」
「子爵の許可は貰ってるから大丈夫だ、ついてこい。」
建物のドアを開けると、そこは汗臭い男臭がした。
(臭っ!運動部の部室の臭いだ)
「何者だ?ここを騎士団本部と知って入ってきたのか?」
入り口に入ると2人の騎士がいて声をかけられた。
知ってるとも。ここはニードラング子爵家騎士団本部だろ?
ニードラング領都の中心にある子爵邸の広大な敷地内には騎士団本部・魔法士団本部・その他の重要施設がある。
これは有事の際に、子爵邸がこの街の最終防衛拠点になるからである。
今日は騎士団本部に用事があって、ここに来たのだ。
「俺はヨシタカ、子爵邸で少し世話になっている冒険者だ。ガランに取り次いでくれ。」
「貴方がヨシタカ殿ですか。わかりました、少々お待ちください。」
俺の事を知っていたか、話が速くて助かるよ。
待つこと数分。
ガランのいる第1部隊の待機所に案内された。
「おう、ヨシタカ。久しぶりだな!」
「そこまで久しぶりでもないだろう。」
「そうか?まあいい、今日はどうした?こんな所に?」
「ちょっと頼みたい事があってな。2人で話がしたい。」
「よし、こっちだ。」
「カルロはちょっと待ってろ。」
「うん…。」
個室に入り、ガランが俺を促す。
「で、何の用だ?」
「ガランに、というよりも騎士団に頼みたい事があって来た。先ずはこれを読んでくれ。」
ガランにバルム子爵の手紙を2通渡す。
「1通はガランに、もう1通は団長宛だ。それと、これは俺からだ。」
そう言って、白ワインを1本出した。
買収とか賄賂なんかじゃないんだからね‼
「お前の酒は嬉しいが、先ずは内容を確認させてくれ。」
…………
……………………
「はあ、バルムのヤツ…。」
「手紙の内容は知らんが、俺からも説明しようか?」
「ああ、頼む。手紙の内容はこれだ。」
どれどれ?
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ガランへ
ヨシタカ君の言う通りにやってくれ
バルム
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こんな内容だった…。(内容が無いよう)
騎士団長宛の手紙がスッゴイ気になるぜ。
仕方がないので、ガランには俺が詳しく説明をしたよ。(ゴメンなガラン)
◆◆◆◆◆
「はぁ、話は解った。俺としては問題ないが、後は団長だな。」
「ワインはもう1本用意してる。団長宛の手紙が怖いが大丈夫か?」
「その辺は大丈夫だと思いたい。団長室へ行くぞ。」
なんか胃が痛くなってきた…。(バルム子爵に頼んだのが失敗だったかも…)
団長室に入ると、ガランよりも厳ついオッサンがいたよ。
正しく騎士って感じの堅物な感じだ。
「君がヨシタカ君か?」
「ええ、冒険者のヨシタカです。」
「君の事はガランやアレンから聞いている。私の部下が世話になった、礼を言わせてくれ。君には本当に感謝している、ありがとう。」
「いえ、たまたまですよ。」
「そう言ってもらえると、こちらもありがたい。今日はどうしたのかね?」
「団長、バルム子爵から手紙を預かっております。どうぞ。」
「ああ。」
…………
……………………
「話は解った。騎士団としてはこれくらいなら良いだろう。ガラン、お前の隊に任せる。護衛にも関わる事だからな。」
「わかりました。」
「約束の期間中はガランに任せるから、後はガランとやりとりをしてくれ。」
「ありがとうございます。お礼と言ってはアレですけど、良かったら飲んでください。」
白ワインを団長に差し出す。
ちなみに、団長の名前はダグマス。
年齢はもうすぐ50になるが、ステータス値はガランよりも高い。実戦だったら、冒険者ギルドのギルマスよりも強いのではないだろうか。
確実に、ニードラング領ではトップクラスの実力者だろう。
「これは?」
「俺の故郷の酒で白ワインといいます。少しの間、迷惑をかけますので。」
べつに、買収とか賄賂なんかじゃないんだからね‼
「悪いな、いただいておこう。異国の酒か…。」
「団長、その酒は美味いですぞ。」
「そうなのか?楽しみだ。今夜、妻といただくよ。」
意外に愛妻家なのか⁉
人は見かけによらないな。




