第61話:抱き締めんでくれ…
皆様、いつも【いわゆる異世界転生】をお読みいただき、ありがとうございます。
今日は纏まった分量を投稿する事が出来ました。
文字数は約3800字ですが、出来る事なら毎日これぐらいの量を投稿したいですね。
唯の二日酔いだ!
「風邪かな?」
「いや、酒の飲み過ぎだろう。」
「昨日の卵料理は本当に美味かったから、酒が進んだのだろう。田楽も良かったし、豆腐も素晴らしい食材だった。」
「ありがとう。トマス、子爵の様子は?」
「確かに、飲み過ぎの可能性が高いと思われます。咳や熱もなく、身体がダルいそうです。」
普通に二日酔いだな。
「トマス、バルム子爵にこれを飲ましてくれ。それと、少しでも食べた方が良い。食べやすいモノを作るから、子爵に食わせる。」
「わかりました。」
水差しにポ○リを入れてトマスに渡した。
周囲にポ○リのペットボトルが見えないように気を配るのが面倒だ。
朝起きて、酒が抜けてなければ水分を取って、少しでも食べた方が良いと思う。(俺の経験)
本当に唯の二日酔いならば昼には調子が戻るだろう。
「それでヨシタカ、今度はどんな料理を見せてくれるんだ?」
「【お粥】だ。」
「お粥?麦粥か?」
「俺の故郷では、朝食や体調が悪い時等で食べたりする米料理でな、今日は普段のお粥よりも手の込んだお粥を作ろうと思う。」
「ほう、楽しみだ。」
「時間的に、子爵の分しか用意しないが、他の人達には普通の朝食を出してくれよ。」
「勿論だ。折角用意した朝食が勿体ないだろう。」
よし、それでは俺も調理に取りかかろう。
お粥を作ると言っても、生米から作ったら2時間以上もかかるので、ここは【なんちゃって】お粥にする。
親子丼を作った時に炊いた米が少し残っているのでそれを使えば楽チンさ。
小さめの鍋を2つ用意して、お湯を沸かし残っている米を軽く水で洗ってから、鍋に入れて弱火で煮る。
もう片方の鍋には少しだけ白だしを入れておく。
ニンジン・シイタケ・シャドーバードのモモ肉を順番に小さく賽の目に切って鍋で煮る。
ニンジンに火が通り、柔らかくなったら味を確認しておく。メッチャ薄いから白だしを足そう。
片栗粉でとろみをつけて、鍋の中身を混ぜながら溶き卵を流し入れる。【餡】の完成だ。
お粥の本体はインディカ米風の米を使っているので、日本風のお粥とは違う感じかもしれないが、米が水分を吸って柔らかくなり膨れているので、これなら消化にも良いだろう。
俺は実家で風邪をひいてもお粥を食べた事はない。家庭環境にもよるかもしれないが、ウチは風邪をひいたら【うどん】や【雑炊】だった。
以前、母に何故お粥ではないのか訊ねたら、「お粥はあんまり美味しいと思わない。雑炊の方が美味しいから。」と、言われた。
確かに、その通りだったよ。
1人暮らしを始めてその冬に体調が悪くなった時、人生で初めてお粥を作って食べたら母の言葉を思い出した。
慌ててお粥を鍋に戻して、めんつゆを入れて味付けしたよ。
それからは、体調が悪い時は素直にうどんや雑炊を食べている。
よし、できた。
後は食べる直前にお粥に餡をかけるだけだ。
完成品の味をラオンに確認してもらい、二日酔いの子爵でも食べられるだろうと言ってくれた。
「ヨシタカ様、旦那様が食堂にて朝食を召し上がるそうです。」
「わかった。出来た食事を持っていく。」
鍋ごとアイテムボックスに保管して食堂に向かった。
食堂にバルム子爵の姿は無かったが、もうすぐこちらに来るそうだ。
なんだろう、2人の夫人の肌がツヤツヤしている気がするし、こころなしか機嫌が良さげだ。…気のせいだな。
ガチャ
バルム子爵がきた。
「皆、おはよう。」
「おはようございます。お身体は大丈夫ですか?」
「いやぁ、熱燗が美味しすぎてね。足りなくなってワインも空けたらこの調子さ。」
おっさんチャンポンしたんかい!
「少し身体がダルくて休んでおこうかと思ったら、君が朝食を作ってくれると聞いてね。食べない訳にはいかないよ。それに、さっきの飲み物のおかげで身体も軽くなったよ。何を食べさせてくれるのかな?」
心配した俺がバカみたいだ…。
「体調が優れなくても食べられる消化に良い料理を作りました。お粥と言います。」
「お粥かね?私は麦粥が苦手なのだが…。」
うん、俺も得意じゃないよ。
以前、ラノベで興味を持ったので、大麦をネットで買って作ったのだが、俺には合わなかったと言っておこう。
「ご心配なく。俺の故郷では米が主食でしてね、米を使ってお粥は作ってありますし、バルム子爵に気に入ってもらえる様に普段のお粥よりも手をかけています。」
「そうか、君がそこまで言うのならばいただこうか。さあ、食事にしようか。」
子爵の言葉をきっかけに、メイドさん達が朝食を運んできた。
今日のメニューはチーズの香りがするパンに蜂蜜入りのホットミルク、ポトフみたいな野菜たっぷりのスープとハムステーキだった。
実は調理場でハムステーキを味見させてもらったのだが、これは絶品だった。
アイテムボックスから、お粥を入れる皿をとり出して子爵の目の前で【餡かけ粥】の仕上げにかかる。
急いで作ったので、白だしと片栗粉は自前だが、それ以外は調理場の食材で作ったから、もしも子爵が気に入ったらラオンが作ってくれるさ。
「どうぞ、餡かけ粥です。米には味を付けてないので、上の餡と一緒に召し上がってください。熱いですから気を付けてくださいね。」
「では、いただくよ。」
フー、フー、パクッ
「っほっ!美味しいよ、とても優しい味だ。柔らかいニンジンやシイタケも良いが、主張しない肉の味が満足感を与えてくれるね。何よりも、この温かさが身体の調子を整えてくれるようだ。」
「お口に合ったようで良かったです。」
さてと、俺も食べようか。
「アニキ、朝から美味いメシが食えてオイラ幸せだよ。今日の試験ってヤツもクリアしてやるぜ!」
「気分良く食ってるとこ悪いが、【今日の】じゃなくて【今日から】の試験だからシッカリやってくれよ?」
「エッ⁉マジ?」
「マジも大マジだ。俺に付いて来るだけの覚悟があるのか試すんだからな。」
「イヤイヤ、覚悟ならあるって。」
「お前には言ってなかったが、2週間くらいしたら子爵のお供でレグナール公爵の所に行くし、その後もチョコチョコ行動する予定だからお荷物は要らん。その辺を見極める為の今日からの試験だ。シッカリ食って頑張れよ。」
「まあ、大変そう。頑張ってくださいね。」
「ヨシタカさん、試験というのはどんな事をするのですか?」
「一応、考えてはいるのですが、子爵に少しご相談がありますし、後でお時間をいただけますか?」
「もちろん構わないとも。それよりも、お代りを貰えるかね。食事のおかげか、身体の調子が良くなったよ。」
そりゃあ、軽い二日酔いだったからな。
ポ○リ飲んでお粥食ったら元気にもなるだろうさ。
「パンが美味いね、アニキ。」
「ああ、ここの屋敷で食べるパンは本当に美味いよな。【シウバ】のパンらしいぞ。」
「えっ!あの有名なシウバのパンなのか⁉」
「商業区画のシウバじゃなくて一般区画のシウバだぞ?」
「そうなのか、オイラてっきりアッチかと思ったよ…。でも美味いパンだね。」
一連の会話について説明しよう。
子爵邸で食べているパンは【シウバ】というパン屋から購入しているのだ。
毎朝、出来たてのパンが子爵邸に届けられているのだが、シウバのパン屋は一般区画と商業区画にあり、一般区画の店が古くから続く本店なのだ。
商業区画の店は、当代の店主の息子が金持ち相手に営業している高級志向のパン屋だ。
本店では普通の住民が毎日、美味しいパンを食べられる様にパンを販売しており、子爵邸のパンは店主の特製パンなのだが、息子さんの店は高品質の高級パンをウリに販売しており、シウバのパンは一種のブランドでもあるそうだ。(ラオンに教えてもらった)
その内、両方の店に向かいたいと考えている。
結局、バルム子爵はお粥を全て平らげ、二日酔いからもすっかり快復していた。
食事の後、バルム子爵の執務室で俺と子爵の秘密の会話が始まる。
「さっきのお粥はとても美味しかったよ。おかげで体調も良くなったよ。」
「それは何よりです。カルロの件もあるので、順番に用件を片付けさせていただきます。」
「わかった。」
「何から話しましょうか…。」
「では、今日のお菓子から…、どうかね?」
あー、それか…。
「わかりました。容器は手に入りましたか?」
「トマスに買いに行かせたが、こんなのはどうかな?」
そう言って、バルム子爵は容器をテーブルに置いた。
(…容器?これに入れるのか?)
バルム子爵が用意していた容器とは、大きな瓶だった…。
どれぐらい大きいかって?
例えるなら、梅酒を作る際に使う瓶って言えばわかりやすいと思うよ。
(どれだけの量を欲しがってるんだ?)
「子爵、その瓶に入るだけお菓子を入れたら、次は無いですよ?」
「何?!そうなのか?」
「どれだけの量を食べるつもりですか?そんなにお菓子を食べたら太りますよ?」
「それはマズイな…。」
リステリア王国の王族や貴族において、太った体型というのは良くない事らしいぞ。
太った王族や貴族というのは、贅沢・浪費・怠惰を連想させるという事を昔の王様が提唱したらしく、その考え方は今でも受け継がれているのだ。
だから、貴族の昼食が軽食だったりするらしい。(俺はその軽食の内容を知らんが…)
「子爵、俺はこの屋敷には2週間くらい滞在する予定ですよ?もっと小さい容器を準備してくださいね。」
そう言いつつも、かっぱえ○せん・板チョコ・青リンゴ味のハイチ○ウを瓶に入れて渡した。
「明後日までの分です。3日後にまたお渡ししますね。」
「うむ、わかった。どんな味がするのか楽しみだ…。」
子爵、頼むから嬉しげに瓶を抱き締めんでくれ…。
当作品は食事のシーンが多く、今のところ戦闘や冒険シーンが少ないですが、ニードラング領での今の活動が今後の物語には重要だと考えているので、もう暫くお付き合いください。
読んでくださっている方にとっては、食事シーンが多い事は受け入れてくださっているのでしょうか?
今後とも、宜しくお願い致します。




