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第58話:みんな無言だ

(カルロって、めっちゃ計画的やん!)


俺が思っていたよりも、カルロは先を見据えて動いている様だ。


(だったら何故、俺に弟子入りなんてするんだ?)


わからんが、カルロはバカではない事がわかったし、明日からの【試験】に耐えられるか次第だ。


メイドさんがメインの2品目を持ってきた。


見た目はボンゴレビアンコだが、この世界では初めて見る麺料理だった。

条件的に、パスタがあってもおかしくはないが、まんまボンゴレで笑いそうになった。


味はこの屋敷で食べたどの料理よりも美味しかった。

貝の旨みがシッカリと感じられて、麺は手作りの生麺でモチモチしていて本当に美味かった。


デザートにイチジクが出たが、苦手だったのでカルロにやった。




「ヨシタカ君、このあとの件だが、準備にどれぐらいかかりそうかね?」


晩酌の事だな。

さっきビールを2本も飲んだのに、まだ飲むつもりか…。


「1時間程、でしょうか?場所は食堂よりも談話室にしませんか?あちらの方が落ち着いて酒も飲めるでしょう。」

「そうしようか。時間もあるし、私は風呂に入ってくるよ。」


バルム子爵は風呂に向かった様だ。俺も準備するか。


取っておきの酒と言っても、昨日飲んだ日本酒の事だから、日本酒に合うツマミを作るだけさ。

ちなみに、日本酒は既に30升程のストックを持っている。



食堂から調理場に移動して調理を始めた。


ラオンやその弟子達は俺の調理を真剣に見つめてくるので、ちょっとやり辛かった。

出来た料理はラオン達にも食べさせて感想を聞いたが、皆が大絶讚だった。


準備には1時間も必要無かったが、直ぐに準備出来ると言えば、早く飲ませろ食わせろと言われるのが目に見えているから1時間と言ったのだ。実際には20分で準備が終わった。


余った時間でラオンと色々な料理の話をした。


さっき食べた様なパスタは珍しい料理ではないが、この時期に頻繁に作るモノでもないらしい。


どうやらパスタ料理は主に夏に食べる事が多いそうだ。

食欲の落ちる夏場に、麺と具材を一緒に取れるパスタは、夏の料理として親しまれているらしい。


それに、さっき食べたボンゴレは海の近い街でしか食べられないし、レパートリーが豊富なトマト系のパスタもこの時期の野菜ではないので、一般的に冬場はパスタの時期ではないらしい。(クリーム系は普及してない)


先程、ミネストローネっぽいスープを食べたが、それに使用したトマトは夏に収穫したトマトを加工して、魔法士団に所属する魔法使いの水魔法により冷凍保存している様だ。




食堂を出て約1時間が過ぎたので、そろそろ談話室に向かう事にした。



談話室に入ると、カルロも交えて双六で遊んでいたみたいだった。

バルム子爵とベルハルトの2人は風呂上がりで、ゆったりとしたラフな格好だった。


「待っていたよ。君のとっておきの酒とは、いったいどんなモノなのかね?」


ごめんよ子爵、スーパーで普通に売ってる大衆的な日本酒だよ。


「こちらです。」


飲みかけの1升瓶を見せる。


「大きな瓶だね?初めて見る大きさだ。」

「これからの季節は温めて飲むのが良いですが、先ずはそのままでどうぞ。」


4人に冷やで日本酒を配った。


別に熱燗を準備する。


「白ワインよりも柔らかい香りだね。いただこうか。」

「そうですね。」


ゴクッ


「白ワインよりも力強い味だが飲み口がスッキリしている。」

「飲んだあとの余韻が長く続きますね。」

「故郷の酒で日本酒と言います。原料に米を使っていますがどうでしょうか?」

「以前飲んだ蒸溜酒なんかよりも美味いな。日本酒か…。このような酒があるなんて知らなかったよ。」

「温めた方も飲んでみたいですね。」


子爵とベルハルトには好評のようだし、2人の夫人も不満はなさそうだ。


酒の飲めない3人は違うテーブルでオセロをしていたので、カル○スを渡しておく。


「次は温めた日本酒、熱燗を飲んでもらいましょうか。」


そう言って、4人にお猪口を渡して注いでいく。


「ほぅ、さっきよりも香りが広がっている様だ。」

「そうね、温かい方が良い香りがするわね。」

「では、いただきますね。」


クイッ


「さっきの日本酒と同じ酒とは思えんな。温かいだけでこうまで違うのか!」

「秋の夜にこの温かさが嬉しいわ。」

「そうですね。ビールも美味しいですが温かいお酒も美味しいですね、お姉様。」

「冷たい時よりも、温かい方が甘く感じるのは気のせいでしょうか?」


ベルハルトよ、なかなか良い事に気が付いたな。


「日本酒は飲む時の温度で味や風味が変わるのですよ。熱燗に合う食べ物も用意してますのでどうぞ。」


テーブルの上に料理を並べていく。


「オムレツかね?それと…、これはなんだね?」


オムレツか、初めて見るのだからそう見えても仕方ないのか。


「これはだし巻き玉子と言います。こっちがこんにゃくの田楽とナスの田楽です。」


今夜、俺が熱燗のお供に用意した料理は幾つかあるが、先ずはだし巻き玉子と田楽だ。

日本酒を飲ませる時点で、万物創造の出し惜しみはやめた。

その結果が田楽味噌であったりこんにゃくだ。実は料理はまだあるので、他にもこの大陸には無いと思われる食材を使っている。


「だし巻き玉子はとても柔らかいので、フォークよりもスプーンの方が良いかもしれませんよ。」


だし巻き玉子はプロの料理人が作るモノに比べればお粗末かもしれないが、そこそこ自信はある。


「本当に柔らかいな。普段のオムレツとは別物だ。」

「どれどれ…」


パク!


…………


………………




あれ?みんな無言だ。

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