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第53話:あんた強いんだな

不味かった…。


不味いと言うよりも、慣れない味に戸惑ってしまった。


味の説明としては、日本で飲んでいた黒ビールを温くして炭酸が抜けた状態だ。雑味が多くて温いからか、酸味が強い印象だ。アルコール度数もビールよりも高いと思う。


(冷やした方が飲みやすくて酸味も抑えられるんじゃないかな)


そんな事を考えていると、近くから声がした。


「冒険者同士のトラブルと聞いて来たら宴会か。」


レグがいた。


「なんか酔っぱらいに絡まれてな。介抱したら金をくれたんだよ。なあ?」


隣の男に話を振ると、男達は話に乗っかった。


「そうなんですよ、レグさん!この兄ちゃんがいいヤツでね、感謝して帰って行きましたよ♪」

「そうそう!」

「その礼を俺達にも分けてくれてるんですよ。」

「タダ酒はウマイ!」


レグは呆れていた。


「金は渡しておく。これで飲ませてやってくれ。足りなかったら子爵邸に俺宛で請求してくれ。」


皮袋を5つ、レグに渡した。


「わかった。お前は俺よりも強いんだから程々にしとけよ。」

「わかってるって。」


俺とレグの会話を聞いていた周りの冒険者達は、驚いた表情で固まっていた。


「レグさん、さっきの話は本当ですかい?」

「この兄ちゃんがレグさんよりも強いんですか⁉」


そりゃあ驚くわな。

こんなガキが元Bランクの冒険者よりも強いらしいのだから。


「ああ、手も足も出なかった。こいつはBランクだ。お前らもちょっかい出すなら相手を選べよ。」


そう言ってレグは奥へ戻った。


さっきまで驚いていた連中が大笑いを始める。


聞けば、俺が倒した連中は問題のある連中らしく、腕は悪くはないが暫しトラブルを起こしていたようだ。

ちなみに、リーダー格のドブラがDランクで、他の4人がEランクらしい。


エールを飲みきり、揉みくちゃにされながら受付に行くとセリアが対応している受付だった。


「こんにちは、ヨシタカさん。随分と気前が良いのですね。」

「成り行きだよ。ハニービーの依頼は残っているか?」

「はい。まだ残っていますね、受けられますか?」

「ああ、頼むよ。」

「では冒険者カードをお願いします。」


カードを渡すとセリアは手続きをしてカードと1枚の紙を渡してくれた。


この紙が依頼内容を纏めたモノであり、依頼を受けた証明書らしい。


口頭でも注意事項を説明してくれたが、一般的な巣の除去の方法も教えてくれたので、こちらの方が為になった。


説明によると、巣の除去には複数人で挑むのがセオリーらしい。最低でも100体弱のハニービーを相手にするらしいので、1人では厳しいみたいだ。

蚊取り線香の様な薬草の煙で巣からハニービーを追い出して倒すらしい。


ハニービー単体では魔物としてはGランクだが、その数が厄介らしい。

巣の除去ともなれば、大人しいハニービーも防衛の為に襲って来るそうだ。

女王蜂でEランクだが、総合的な判断としてCランク以上の冒険者が受ける依頼になるんだって。


除去に使う薬草はギルドでも販売していたので、大量に買っておいた。


ギルドを出ると時刻は11時前。その辺の屋台で昼飯を買って森に行くとしよう。




昨日の串焼きと肉を挟んだサンドイッチを多めに買って馬車に戻った。


馬車で門まで移動して、馬車は子爵邸に帰した。ここからは自力での移動だ。


目的の森は10キロ程離れた場所にあるが、ランニング程度に軽く走っても30分くらいで着くだろう。


街の周辺は安全なので、エリアスと歩きながら昼食を食べた。


街道沿いに広大な畑が見え、農作業に勤しむ人々がいる。

ここだけを見ればのどかな風景とも取れるが、街の近くは安全とは言え、いつ魔物が襲って来るかわからない世界だ。農作業も安全とは言えないよな。


サンドイッチを食べ終え、本格的に移動を始める。


軽いランニング感覚でも、20分くらいで森に到着した。


森に入り、脳内マップで魔物の場所を確認すると、スライム・ゴブリン・コボルト・オークの存在が目立った。

他にも魔物はいるが、数は多くない。

目当てのハニービーは3キロ程先にいるのが確認できた。


冒険者も確認したが、所々で魔物と戦っているようだ。

ハニービー目的の冒険者ではないだろう。1パーティーあたりの人数が少ない。



巣へと一直線に進みつつ、襲って来る魔物をエリアスと倒しながら進む。オークは2足歩行する豚って感じの見ためだったが、体が力士の様にデカくて驚いた。


食用の魔物は回収しているが、俺のアイテムボックスにはどれぐらいの量が収納出来るのか不思議に思った。(力士並みのオークを5体収納しても余裕だ)



巣まであと1キロ程といった所で、複数の声が聞こえてきた。どうやら魔物から逃げている様な内容だ。

森を抜けようとしているのか、こちらに近づいている。


連中を追っている魔物はジャイアントボアか。

ジャイアントと言うからにはデカイのだろう。いっちょ加勢してやるか。


連中が進む先に先回りすると、正面から5人が走ってきた。

5人?さっき確認したら6人だったぞ?


「オイ!どけ!」

「ジャマだ!」


障害物を避ける様にして俺の隣を通り過ぎて行った。


(気ぃ悪いわ~)


ちょっとムカついた!


「うわ~!」


少し遅れて1人が来た。

さっきの5人よりも明らかに走るスピードが遅く、幼い。

アイツらの仲間か?


「でかいジャイアントボアだ!逃げろ!」


こいつはちゃんと忠告をしてきた。


「大丈夫だ。俺がヤる!そのまま走れ!」


少年(仮)の直ぐ後ろには猪っぽいのがいた、確かに猪型の魔物だったよ。しかし大きい!

サイズ的には牛ぐらいあると思う。


少年(仮)の言うように、コイツが普通よりも大きいのかな?


少年(仮)は俺の後ろの木に隠れた様だ。


迫り来るジャイアントボアは俺に照準を合わせて向かって来る。

昨晩、ギルドの冊子でジャイアントボアの習性は知っているから大丈夫だ。


猪突猛進とはよく言ったもんだ。ホントに真っ直ぐ進んでくる。


ジャイアントボアは牙があり顔面が硬くて、その体重を活かした突進に注意しなければならない。

逆に言えば、真っ直ぐに進むのを回避しつつ、体の側面に攻撃を仕掛けるのが得策らしい。


…知ったことか。


ジャイアントボアが2メートルまで迫り、素早く左に避けつつ重心を落として刀を低めの水平に振りかぶる!


狙うのはジャイアントボアの四肢!


僅かに骨と肉を断つ手応えを感じるが、ほんの僅かでしかない。

半ばジャイアントボアが自らのスピードで神気刀に切られているのだ。俺はしっかりと、神気刀を握っているだけの様なモノだった。


綺麗に四肢を切断されたジャイアントボアは勢いのまま、地面を派手に転がってゆく。


近くの木にぶつかって、ようやく止まったがちゃんと生きている。


最後の仕上げだ。


四肢を切断され動けないジャイアントボアに近づく。

慣れたもんで、エリアスがジャイアントボアの頭に移動して止めを差した。


見れば立派な体格のジャイアントボアだったよ。下手な牛よりも大きい。

これの肉がマジで旨いんだから、見た目で判断しちゃダメだよな。このサイズでも美味いのか?


ジャイアントボアの血抜きをして、魔石を回収しているとさっきの少年(仮)が近づいてきた。


「オイラはカルロ、助かったよ。あんた強いんだな。」

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