第50話:晩酌のスタートだ!
(情けは人の為ならず、かな?)
意味、合ってたっけ?
っていうか、白金貨65枚もの大金をこんなガキに払うバルム子爵はおかしくないか?
普通の庶民が家族で生活するために、月に幾ら必要なのかは知らないが、屋台で売っていた食事の値段が銅貨2枚~5枚だった。
日本の祭りで売っている屋台の料理に近い食べ物だったが、値段は安いしボリュームもあった。
銅貨5枚の料理なんて、分厚いステーキみたいな肉を挟んだサンドイッチだったが、それでも銅貨5枚以上の価値が十分にあると思えた。実際に肉体労働者や冒険者達が食べていたので、ここでは当たり前の食べ物なのだろう。
そんな世界で白金貨65枚って、普通は法外な金額のはずだ。
それをポンと出すこの人はおかしいのではないだろうか?
俺にはわからん。
1つだけ確かな事は、この人は俺の敵ではないという事だ。
敵ではないと言っても実力(物理的)ではなく、俺の脳内マップには友好的な相手として示されている。
最初の森で1人で行動していた時にはわからなかったが、俺の脳内マップは俺・味方(?)・友好的・中立・敵の4種類に分類して確認出来る様だ。
味方に関してはエリアスだけなので確証はないし、中立に関しても街で気付いた。中立というよりも、第三者という位置付けに近く、赤の他人がこれにあたるようだった。
ちなみに、バルム子爵の弟であるマノンは最初から敵の表示だったよ。だから嫌がらせくらいならすると、バルム子爵に言った。(殺しはしない)
まあ、考えても仕方ないし、お互いに納得しているので良しとしようかな。
その後、子爵と少し話をしてから談話室に行くと、他の人達は双六で遊んでいた。
(ホントに気に入ったんだなぁ)
「私を置いて双六をしていたのか‼」
「アナタが遅いからです。」
「父上、良いところに!さあ、父上も来たことですし始めからやりましょう♪」
「ベルハルト、貴方は最下位確定ですものね?」
「お兄様に賛成よ!」
「お姉様も借金まみれですからね。」
本当に仲の良い家族だよ。
「お菓子を置いておきますので、後は皆さんで楽しんでください。」
「悪いね、ヨシタカ君。」
「ありがとうございます。ヨシタカさん。」
さてと、風呂だフロ。
相変わらずの小洒落た風呂にユックリと浸かり、先程バルム子爵と話した内容を振り返る。エリアスも風呂に慣れた様で、ぷかぷかと浮いていた。
ここに滞在する間の行動に関しては自由だが、何度か料理を作る約束をした。カレー料理以外にも、醤油を使った料理も作る事になった。(こっちはサービスだな)
大金を貰うんだ、これくらいはするさ。
実は、醤油についてもオネダリされたが、その話は後日詰めることにしたよ。(俺の金銭感覚がマヒしだしたからね)
レグナール公爵領への移動にしても、ギルドに指名依頼を出す事になった。依頼の内容は護衛という形だが、手数料がもったいない…。
それを言ったらバルム子爵が笑い出した。
どうやら、そういった手数料はギルドへの援助の一環だそうで、気にしなくてもいいらしい。
移動の際はルクセニア侯爵という人と一緒に向かうそうだ。
ルクセニア侯爵領はニードラング領から南に他領を跨いだ場所にあり、そこの娘さんがベルハルトの婚約者だそうな。(金髪イケメンのクセに婚約者もいるんだぞ!死ねばいいのに‼)
ルクセニア侯爵は一旦、ニードラング邸に滞在して一緒に向かう計画らしい。
変な目的はなく、婚約者も一緒に連れてきて当分の間、ニードラング邸で結婚へ向けて準備をするらしい。
結婚の予定は来年だそうだ。(……良かったね)
貴族同士の結婚だから所謂、政略結婚になるが仕方がない。それが貴族なのだから。(相手の容姿が気になるな)
そんな話があったので、バルム子爵からはベルハルトを街に連れ出して欲しいと頼まれた。(結婚前に遊ばせてやりたい様だ)
今度、ガランを誘って何人かで飲みに行こうと思う。その時にでもマノンの野郎に嫌がらせをしてやるかな。
ふーっ、気持ちいい。のんびりと風呂に入れるのも子爵のおかげだな。
世間一般の風呂事情も調べておかないと。
そろそろ上がるか。
「エリアス、そろそろ出ようか。」
エリアスに声をかけると、泳いで(?)近寄ってきた。
疑問に思ったのだが、スライムは呼吸をしているのか?
神の知識…は止めとこう。知らない方がいい気がする。
プシュ!
ゴクッゴクッゴクッ………カハァーーーー!
美味い!風呂上がりのビールサイコー‼
風呂から上がり、火照った身体をビールで冷ます。エリアスにはリンゴジュースだ。
以前、ポ○ジュースをあげたら嫌がった。酸っぱかったのかな?
この屋敷の来客用の風呂は脱衣所すらも広くて快適だ。貸切状態だから素っ裸でビールも飲める。幸せだ~。
つんつん
ん、なんだ?エリアスか。
「どうしたんだ?エリアス?」
すりすり
足にスリスリしている。甘えているように見えるな。
すりすり
オネダリか!
「おかわりか?」
ぴょん!
こいつも知恵を付けたな。お代わりをねだるだなんて。可愛いヤツだ。
「ほれ、沢山お飲み~。」
ぴょん
部屋に戻ったらカレー粉の瓶詰め作業をせねば。
◆◆◆◆◆
結局、脱衣所で缶ビールを2本も空けた。
色んな意味で気持ちが良い。
瓶詰めなんて内職は明日しよう!
明日やればいい事は明日やればいい♪
カセットコンロに片手鍋をアイテムボックスから出し、鍋に水を入れて湯を沸かす。
次に用意するものをイメージする。
日本酒と徳利にお猪口。イメージ、イメージ。
重っ!
流石に一升瓶を出したら重かった。(約2キロだからな)
銘柄はスーパーでも買える菊の正宗だ。辛口で燗にすると旨い。
肴は夕食の残りの筑前煮。ちょっと多めに作ったからまだまだある。醤油は少ない量しか使わなかったが、出汁はシッカリと取ったので、美味く出来ている。
時刻はまだ21時にもなっていない。
幸い、窓から月も見える。秋の夜長を晩酌と洒落こもう。
椅子に座り、酒が温まるのを待つ。
日本で生きていた時は不便も、不自由も特に感じなかったが、不満はこれといって無かったと思う。
こっちに来て、今のところは順調だ。運が良かっただけかも知れないが…。
(住めばナントカじゃないが、気楽に生きていくのも悪くないな)
そろそろいいかな?
どれどれ、トクトクトク
クイッ!
ふーっ、美味い。
いい感じだ。
それでは、晩酌のスタートだ!
昨日の第49話で風呂に入る辺りまで投稿したかったです…。
データが消えるって悲しいですね。