第3話:だが断る‼
敢えて言おう、ファンタジーなのだから!
心の中の演説がきまったところで、
「熱くなっとるとこ悪いが、用件済ましても良いか?」
声に反応すると、便所スリッパ片手にオッサ、……いやオジサマが軽く威嚇しながら訊ねてきた。
「……どうぞ」
「ウム。先ずはオレの名はタナトス。死を司る神だ。」
ププッ!!
「何が可笑しい?」
「いや、だって、いいトシした大人が自分のことを神って、ねぇ……」(それに中二病宜しく「死を司る神だ」だぜぇ~。胡散臭さ全開だろうが)
「胡散臭くて悪かったな(怒)」
「!」(オカシイ、さっきから口に出していないハズの内容が知られている! 知らず知らずの内に口から漏れていたか?)
「別に漏れてはおらん。オレが心を読んでいるだけだ。取り敢えず、オレの話を聞けよ。藤原義孝クン」
相手は自分のことを神と言い、俺の事を知っているみたいだ。ここは大人しく目の前のオジサマ改めタナトス様(神様らしいから様付けで)の話を聞くことにする。
「そうそう。最初からそうしてればいいんだよ」
「はぁ……」
「改めてもう1度言おう、オレの名はタナトス。死を司る神だ。そして、お前はもう死んでいる」
何処のケンシ○ウだよ‼ と、心の内でツッ込んだら案の定、便所スリッパが炸裂したよ…。
スパーーン!
ってね。
「なかなか話が進まんではないか……。お前ちょっと大人しくしとけ」
「はぃ……」
◆◆◆◆◆
あれから20分。
タナトス様の話を要約すると、
①タナトス様は俺の住む地球を含めた、この世界の神様の1人で、死を司る神様であるとの事。
②神様なので心の声が聞こえる。(タナトス様にはだだ漏れらしい)
③俺はあの金曜日の夜に車にはねられて死んだ。(即死)
④命あるものは死ぬと基本的には転生し、同じ世界で生まれ変わって新たな生を歩む。
⑤転生には幾つかの例外が有り、今回の俺はこの例外になるらしい。
こんな感じだった。
「お前の例外に関してだが、違う世界のある星に転生してもらいたいのだ!」
「何故に俺? それに普通、生まれ変わると記憶無くして生きるんちゃうの? こんな会話意味あるん?」
「地の関西弁が出とるぞ。お前の疑問にはちゃんと答えよう。わかりやすく簡単に説明するとだな……」
◆◆◆◆◆
それから30分。
要約するとこんな感じ。
①平行世界の惑星【イシュルガーツ】が転生先。
②イシュルガーツは剣と魔法なファンタジーの世界。
③転生先の平行世界には全ての星に魔法や魔力が存在する。
④イシュルガーツには魔法や魔力があるので、科学はあまり発展せずに、文明がこれといって進歩せずにここ2000年程、文明の発展や進歩が停滞しているらしい。(2000年も停滞ってある意味凄いよね)
⑤この平行世界を統括している神様が、俺のいる世界を統括しているゼウス様に相談したところ、20人分の魂をあっちの世界に転生させて、イシュルガーツに何らかの刺激を与えて発展を促すことになったそうな。
⑥そんで死を司るタナトス様が、死んだ魂から20人分を見繕って送っている。
「と、いう訳でお前を含めた20人分の魂が、向こうの世界で転生することになった訳だ」
「ほぅ~」
「んでな、あっちの世界に刺激を与える為に送るのに、記憶を消しては意味がないだろう。だから事前に説明して送り出しているのだ」
「なるほど……」
「だから向こうの世界に転生してくれ。お前は異世界の生活に憧れてただろうからな。頼んだぞ‼」
「いえ、お断りします」
「何故だ? ファンタジーに憧れてただろう! ケモノ娘をモフりたいんだろう? あっちにはケモノ娘もエルフも女騎士だって、魔王だっているんだぞ‼」
「魔王はいらんわボケ!」
スパーーン!
いかん、関西人の血が反応して神様から便所スリッパを奪った挙げ句に、その頭を全力で叩いてしまった!
いや待てよ、死んでいるのに血が反応するとはこれ如何に?
「ただの条件反射だ(怒)」
「オゥ~、ゴメンナサィ~」
「詫びは要らん、取り敢えず行ってこい!」
「断る!」
スパーーン!
再度、神様に便所スリッパを奪われて叩かれた。
「お前は神を舐めてんのかぁ? アアァン?」
「いや、スミマセン、スリッパでグリグリするんはちょっと……。アッ、ゴメンナサイ、何でも無いですぅ……」
「だったら行ってくれるよなぁ? アアァン?」
「だが断る‼」