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第38話:寝よ

「ええ、単刀直入に伺います」


「何かね?」

「マノン氏の事はどうするんですか?」

「どう、とは?」

「ベルハルトの件です。全部言った方がいいですか?」

「イヤ、いい。正直、私もその件に関しては頭を悩ませているのだよ。まさかベルハルトを襲うとは……」


何の話かわかるよね?

ベルハルト達が盗賊に襲われた件だよ!

盗賊をけしかけたのは、バルム子爵の弟マノンなのだ。(もしくはマノンの周辺の誰か)


リステリア王国の貴族のルールとして、領地貴族の場合は当主の長男が一般的に家督を継ぐ。

次男以降がいる場合は領地の一部を割譲して新たに独立した領地貴族になる場合があるが、それは少数の事例だ。

大概の場合、領地内の何処かの代官になるか、家を出て自らの力で生きていくしかない。

どちらも貴族として名乗れるのはその代までで、その子供達は貴族ではなく、平民となる。


早い話マノンは一応、貴族にあたるが、その子供達は貴族ではなく平民なのだ。

勿論、ニードラングを名乗る事は許されない。(名乗れば罪になる)


今回マノンはベルハルトを殺害し、子爵家を乗っ取ろうとしたのであった!


ガランやベルハルトとの会話と、神の知識の情報によりこの結論に至った。たぶん、間違ってないと思うよ。


「私とマノンは母が違う。私の母は第1夫人、マノンの母は第3夫人だ。マノンは昔からプライドが高くて変な選民意識を持っていたからね。今は近くの街を任せているが、彼にはガマン出来ないのだろう。困ったものだ……」

「どうします?」

「間違いなくマノンが関わっているが、証拠がない。裁く事が出来ないのであれば現状維持しかあるまい。難しいな……」


確かにそうだよな。


「そうですか、あっちのお子さんはどんな感じですか?」

「長男は大人しいが、次男はマノンに似て野心家らしい。3人の娘は浪費癖があり、親の脛をかじっている様だ。マノンに似たのだろう。頭が痛いよ」

「個人的に嫌がらせくらいなら、やりますよ?」

「どんな嫌がらせだい?」

「それは内緒です」

「無茶な事はしないでくれよ? 君には公爵の件があるからね。」


何時の間にか、バルム子爵が普段の感じに戻っていた。


「そういえば、マノンは昨日、何故あの場にいたのですか? 頻繁にこの屋敷に来るんですか?」

「昨日は、…………、ベルハルトの帰りが予定より遅くて心配していた所にマノンが来たのだ。あいつはこの屋敷には滅多に来ることはない」

「では、ベルハルトが死んだとでも言っていたんですか?」

「もうちょっと曖昧な言い方だったがね。マノンは管理すべき街を部下に任せて、普段からこの街に住んでいるよ」

「そうですか、ありがとうございます。訊きたいことは聞けました」

「そうか、随分と話し込んでしまった様だ。もうすぐ晩餐の時間かな?」


窓の外からは夕日が見える。もうそんな時間か。


バルム子爵の机の上に目がいき、チェスの駒(?)が見える。


「バルム子爵、あれはチェスの駒ですか?」

「チェス? あれはレーティングボードだよ」

「レーティングボードですか?」

「貴族の嗜みさ。私はあまり得意ではなくてね……」


聞けば、チェスの様なボードに、チェスの様な駒を使うテーブルゲームで、貴族としては必須、女性でも出来て当たり前だそうだ。(実際はそうでもないらしいが)

ルールを教えてもらったがサッパリだった。複雑過ぎて理解が追いつかないのだ。


これが貴族の娯楽であれば、さぞかしつまらん娯楽だ。


「これよりも双六の方が私には合っているよ」

「俺もそう思いますよ。ルールが頭に入らない」

「あまり大きな声では言えないが、レグナール公爵もこれが大嫌いでね。だから双六を贈りたいんだよ」


へぇー。


部屋の中も薄暗くなった頃、部屋の照明器具が淡い光を灯した。

これらも魔道具の一種で、個別にオンオフが可能だが、一斉に操作が出来るらしい。


「よし、食事にしよう」




◆◆◆◆◆




食堂に行くと、俺達以外は揃っていた。


家長を待たせる事はご法度なんだろうな。


今日のメニューは、カリカリベーコンが載ったサラダと野菜たっぷりのクリームスープ、プレーンオムレツに白身魚のムニエルだった。


この世界では、普段の食事としては豪華なんだろうが、薄味というよりも味が薄かった。


約束通りに白ワインを提供したら、これも評判がすこぶる良かったよ。


食事も終わり子爵が、


「ヨシタカ君、今夜もどうだい?」って言ってきた。(どうだい?って……)


「双六ですか? 今夜は違うゲームにしませんか?」

「ほう、他にもあるのかね?」

「勿論ですよ、子爵」


そう言ってイメージする。


「これです」

「これは?」

「オセロです」


本日ご用意しましたのはこちらのオセロでございます。

見てくださいこの盤面、綺麗でしょう?

それにマグネット仕様です。

今回は1つ購入されますと特別にもう1つおつけしま…………、違った。


レーティングボードのルールを聞いたとき、最初は面白そうだと思ったが、ルールが複雑で俺は挫折した。

所謂、シミュレーションゲームは俺も好きで、炎の紋章やスーパーなロボットが戦うソフトはヤり込んだ。


俺は思ったんだよ。


運も実力の内だが、もっと単純に頭を使うゲームも大事だってね。


だからこのチョイスさ。


オセロなら小学生でも出来る。


この世界の修学レベルは小学生程度だ。中学生レベルには至っていない。

それだって、貴族や商会幹部辺りの限られた者の話だ。

庶民においては文字を読めないのが普通だ。


談話室に場所を移して、オセロのルールを説明し、子爵とやってみる。(モチロン手加減して)


「ほう、ルールが簡単でいい。ここだ!」

「一気に来ましたね」




「私の勝ちだね、ヨシタカ君」

「ええ、負けました」

「オセロかこれもイイ。シンプルだ」

「父上、次は私にやらせてください」

「お兄様、私もやってみたいですわ!」

「じゃあ、私はその次で!」

「大丈夫ですよ、オセロは2つありますからね。負けた人が交代すれば、直ぐに順番が回って来ます。どうぞ」

「おお、それは助かるな。では皆でやろうか」

「皆さんが楽しんでいる間に、俺は風呂に行かせてもらいますね」

「そうか、我々はこのオセロを楽しむから、ゆっくりと風呂を楽しんでおいで」

「ありがとうございます。では少し失礼します。エリアス、行こうか」


ぴょん!


エリアスが頭に載り、風呂へ向かう。


後で様子を見に行くか。




◆◆◆◆◆




30分後、風呂から出て談話室に行くと、6人が必死になってオセロをしていた。


「私の勝ちだ! オセロなら負ける気がせん」

「アナタ、今のは大人気ないですわ! もう1度です!」

「母上、次は私の番ですよ!」

「お黙りなさい、ベルハルト!」


「負けましたわ、お姉様……」

「双六のお返しです!」

「では、私の番ですね♪」


家族の仲が良いって素晴らしい!



寝よ。

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