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第37話:単刀直入に伺います

「では最後の品を作ります」


フライパンを綺麗にして、メインの食材を焼いていく。

途端に香りが充満するが、これまでよりもマイルドな香りだった。


焼き上がったら皿に盛り、ルッコラのサラダを添えて出来上がり。


「ヨシタカ君、この料理は?」

「はい、この料理はタンドリーチキンと言います」

「タンドリーチキン?」


俺がメインとして作ったのはタンドリーチキン。

正確にはタンドリー風チキンだ。

ヤギのヨーグルトにカレー粉とガーリックパウダーを入れ、シャドーバードの肉を漬け込んでフライパンで焼いたのだ。

漬け込む時間が短いし、フライパンで焼いたので、正統なタンドリーチキンではない。

もう少し時間があればオーブンでジックリと焼いたのだが、ヨーグルトを見た瞬間にこれを作ろうと決めた。


「肉が柔らかいね、味も染みている」

「今までの料理よりも辛くないわ」

「このお肉とパンの相性がいいですね」

「そうですね、パンに挟んで食べても美味しいですよ」

「今度それも食べてみたいですわ」

「エリアスちゃん、美味しい?」


ぴょん


エリアスにも好評みたいだ。


一仕事を終え、バトラとメイドさんが調理台を片付ける。


俺も席につきお茶をもらう。


他の人達は料理を堪能しつつ、感想を述べ合っているが、その顔は愉しそうだ。


皆が食べ終わり、バルム子爵が真面目な顔になる。


「ヨシタカ君、とても美味しい料理だったよ。ベルハルトから今回の話を聞いた時には、カレー粉に興味を持ったが、これ程の物とは思ってもみなかった」

「ありがとうございます」

「さて、ラオン」

「何でしょうか」


待機していたラオンが返事をする。


「君はヨシタカ君の調理を見て、実際に料理を食べて、カレー粉やその料理についてどう思った?」


言葉は丁寧だが、その奥には強い力がこもっている。


「一言で言えば、驚きました」

「それだけかね?」

「……詳しく言えば、今回使った食材はカレー粉以外は普段から使っている物です。調理法に関しては、初めて見る調理法もありましたが難しくはない、直ぐに真似出来ます。それなのに、こんなに美味い料理に仕上がっている。味も良い、香りも良い、こんな香辛料は初めてです。まるで、魔法の調味料ですな」

「ラオンがそこまで褒めるのか。………よし、わかった。ヨシタカ君、私の執務室へ行こうか」


エリアスを連れて、子爵の後についていく。(俺はハラが減った)




◆◆◆◆◆




簡素な執務室の中、2人きりでの話が始まる。


「先ずはヨシタカ君、先程の料理は本当に美味しかった。ありがとう」

「いえ、ベルハルトとの約束ですので。でも、作った料理を喜んでもらえて俺も嬉しいですよ」

「そうか。2人きりで話すのには訳がある。他の者には聞かれたくない話もあるからね」

「ええ、わかります。俺もお訊きしたい事があったので、助かります」

「君もか。先ずは私の話を始めさせてもらおうか」




永く難しい話……、ではなかったが纏めると、


①カレー粉がメッチャ気に入ったから沢山欲しい。どれくらいなら分けてくれるかな?

②カレー粉の料理はまだあるんやろ? もっと食べさせて~。

③醤油の料理にも興味があるから早く食べたい!

④双六オモロかったから、あれちょうだい。

⑤他にも面白い遊びない?

⑥昨日のお菓子美味しかった。皆には内緒で分けてくれるかな?


と、こんな感じの欲望丸出しの内容だった。


「善処します……」

「そうか、ありがとう」


にこやかに話す子爵。




「本題に移ろうか」


様子が一変した。


「君に面白い話をしたい、と言った事を覚えているかい?」

「覚えていますよ。あの時の貴方からは、今の様に異様な圧力を感じた。」

「そうか、君はとても優秀だ。いいな」


トントン、


「旦那様、お茶をお持ち致しました」

「ああ、ちょうど喉が乾いていたんだ」


タイミング良くバトラがお茶を持ってきたが子爵の様子は変わらない。


互いに1度、カップに口をつけ喉を潤す。


「どこから話そうか……」




こっちは真面目な話で内容は、


①レグナール公爵の誕生日は来月の下旬であり、プレゼントにはカレー粉を贈る事に決めた。

②可能であれば、双六も贈りたい。

③プレゼントを渡す際、俺にも一緒に来て欲しい。

④毎年、春にリステリア王国の王都で武術大会があり、俺に出場して欲しい。


と、こんな内容だった。


①と②はわかるが、③と④には疑問が残る。


「2点、疑問があります」

「答えられる範囲で答えよう」

「まず1つ目。何故、俺もレグナール公爵の所に行くのでしょうか?」

「それは単純だ。君の持つ異国の知識や、カレー粉の調理法等も 、公爵への手土産になる。それに……」


一呼吸置いて、


「武術大会へ出場する為の根回しも兼ねている」

「詳しく教えてください。それが2つ目の疑問です」

「よかろう」




これには政治的にも、内容的にも濃かった。


①2年に1度、お隣のアルムハイド帝国にて、大きな武術大会が開催され、この武術大会には周辺国からも大量に参加者が集まり、1大イベントとして賑わう。次の開催は来年の6月。

②大会自体が公営ギャンブルとして運営され、開催国のアルムハイド帝国には莫大な収入となる。

③試合の利益の一部は試合の勝者にも還元され、一攫千金を狙って大会は盛り上がる。

④アルムハイド帝国や周辺国には推薦枠があり、来年春のリステリア王国の武術大会の上位4名に推薦枠が与えられる。

⑤各国の推薦枠で出場する戦士の試合に関しては、勝てば試合の利益が所属する国にも分配され、バカに出来ない金額が所属国にも入る。

⑥ある意味、国家の威信をかけた大会である。


更に、神の知識によれば大会の歴史は古く、第1回の開催から230年も続く由緒ある大会なのだ。


この大会の当初の目的は魔物に対する戦士の育成及び 、戦士個人の戦力の向上が目的だったらしいが、いつのまにか娯楽に変わってしまった様だ。


元は4年毎の開催であったが、ある年の優勝者が次の開催時には日々の鍛練を怠っていた様で、戦える状態ではなかったらしい。その後、2年毎の開催に変更されたとの事。



「春に行われる武術大会も政治的な意味合いが強いのだ」

「何となくわかりました」



一応、話を聞けば、


①4大公爵の派閥以外にも、様々な利益や繋りで纏まる勢力が大小あり、この大会で手勢が結果を残せば、今後の発言力が増す。

②俺の戦闘力を評価し、東部派閥から出場して欲しい。


って言われた。


「公爵の所へ行くのはいいとしても、その後の事は行ってから考えさせて下さい」

「何故だい?」

「その公爵がどんな人物かわからない状態で、来年の春やそのあとの事まで約束は出来ません。俺は旅の途中でここにいるだけです」

「君は私の家臣でもなければ、この国で産まれた訳でもない。君の方が正しい。………、わかった。レグナール公爵の件までお願い出来るかな? その後の事はその時にでも話そうか」

「わかりました」


「では、次は君の話を聞こうかな?」

「ええ、単刀直入に伺います」

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