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第36話:最後の品を作ります

馬車に揺られること20分、着いた先はスーパーマーケットだった。


いや、正確にはスーパーの様に商品が陳列された大きな商店だったのだ。


店内を一回りして一通りの商品を確認すると、スーパーと言うよりも、1つの大きな建物に商店街が納まっている感じがした。

商品のジャンル毎に担当の店員がいて、商品の説明や値段の交渉をしている。


売られている物は日本とあまり違いはなく、 梱包されたお菓子や缶ジュース等があれば、日本のスーパーと間違えてしまいそうな程、売られている野菜や果物がソックリなのだ。


神の知識で調べてみれば、その謎が明らかになった。


この世界は基本的に、俺が元々いた世界の平行世界だ。

管理する神様は違えど、構築された世界の理や自然の摂理に大きな違いはないそうだ。

従って、作物等も地球の物と変わりないのだった。


因みに、ジャガイモやニンジン等の呼び名に関しては、ギフトの恩恵で翻訳されているだけだよ。


店内で物色していて興味深かったのが、魚醤だ。

使用されている魚の種類や、寝かせた期間に造られた村等、バリエーションが豊富で驚いた。


この商会は富裕層を相手に商売をしているらしく、どの品も決して安くはないがモノは良かった。


精肉に関しても、冷蔵のガラスケースを使用しており、これは魔道具の様で、購入するなら金貨が100枚単位で必要らしい。


トマスはとても詳しく丁寧に説明してくれて、とても勉強になった。


この後の料理に必要な物や、自分用に買い物をしようとしたら、トマスに止められ、


「旦那様からお代を預かっております」と言って、料金を払ってくれた。


バルム子爵ありがとう。



時刻はもうすぐ10時になる。屋敷に戻って調理をせねば!




◆◆◆◆◆




屋敷に到着したら調理場へ直行した。


ニードラング家の調理場には、調理に関する魔道具が豊富で、これだけで莫大な財産になるんだろうね。


ガスコンロの様な魔道具の使い方を教わり、神の知識にフィードバックする事で、この世界の魔道具の仕組みを理解した。(メッチャ便利な代物だぜ)


では調理を始める。


ラオンやその弟子が側で見ていたが、事前に了承していたので問題ない。

彼にも料理を食べさせる様に子爵からも言われているしね。


食材はこの屋敷でも使われていて、珍しくない物を揃えた。


今回のテーマは【カレー粉】を使った料理なので、それに従って3品作る。


昼食には1時間半もあるので焦る必要もない。

ラオンに調理の説明をしながら、作業を進めていく。


仕上げに入ろうかとした時に、バトラが進捗の確認に来た。

何故かその際に、悪戯心が芽生えてしまい、彼に無茶な事を言って驚かせた。(成功すれば面白い事になるはず)




◆◆◆◆◆




時刻は12時ジャスト。正午を告げる鐘が鳴る。

街や村の役所や教会では、日の出・正午・日の入りの1日3回鐘が鳴るのだ。


食堂には俺とニードラング家の家族、その他にバトラとラオンにメイドさんがいる。


俺の前には簡易の調理台と食器が用意してある。


悪戯心の正体はこれなのさ。何がって?

要するに、食堂でニードラングの人々の前で仕上げをするのさ。


バトラに相談した際は即座に一喝されたが、ワケを説明したら子爵に確認し、俺の提案が採用された。


「いや~、目の前で料理を仕上げると聞いた時は驚いたが、ワクワクするね~」

「そうですね、父上。流石はヨシタカさんだ、私の想像を越える事をする」


ベルハルトよ、お前の中での俺の評価を聞いてみたいよ。


「簡単に説明しますと、皆さんの知らない香辛料で作った料理、その仕上げを知っていただく事で、それらの料理の全てを味わっていただきたいのです」


バトラには、もう少し詳しい説明をして納得させた。

ラオンがいるのは単純に、手間が省けるのと、プロの料理人の感想を子爵に伝える為である。


「まずはカレースープです。」


温めておいたスープを皿に注ぎ、メイドさんが配膳する。


「初めて嗅ぐ香りだが、胸が騒ぎ出す匂いだ。」

「魚の干物で出汁を取り、具材は貝の身とナスにズッキーニです。それと、少量の魚醤を加えています」


本当は出汁にブイヨンを使いたかったが時間が無かったし、こっちでは骨で出汁は取らないそうだ。

苦肉の策として、アジの干物みたいな物で出汁を取り、カレー粉で味のベースを整えてから、少しの砂糖と魚醤を加えた。


魚の出汁に、具材ではむき身の貝を使っているので、魚醤のコクは相性が良い。魚醤独特のクセもカレーの風味で感じなかった。

値段の張る魚醤なので、エグい様なクセも無いのに救われた。


ナスとズッキーニは軽くフライパンで焼いてからスープに入れているので、火は通り過ぎていない。食感も残っているハズだ。


「香り以上に奥深い味がする」

「身体の芯から温まりますわ」

「ナスがスープを吸っておいしいですね」

「カレー粉でスープも作れるのですね」


出だしは上々か。次は炒め物だ。


カセットコンロ2台で炒め物を作る。


熱したフライパンに油をひき、ベーコンとカットして茹でたジャガイモとブロッコリーを加えて炒める。

蜂蜜酒とガーリックパウダーにカレー粉で味を付け、塩で味をととのえ、少し炒めて完成だ。

ガーリックパウダーは夏に収穫されたニンニクを干して乾かし、粉末にした物だ。売っていたので使った。(実はこれも香辛料に分類される)


ふと見渡すと、一同の視線が俺に注がれている。(これがライブクッキングってヤツだな)


「カレー粉を使った炒め物です」

「カレー粉というのは本当に香りが素晴らしい!」

「お芋に刺激があって美味しいわ」

「食べ出すと止まりませんね」


女性陣にはジャガイモが好評の様だった。


因みにエリアスはさっきから、女子2人に餌付けされていた。(オイ!)


「次が最後の品になります」

「もう終わりなのか!」

「はい。昼食のかわりとはいえ、3品用意しましたので、普段の昼食よりも量は多いハズですよ?」


実は貴族の昼食って、軽く済ませる事が多いそうだ。

諸説あるらしいが、1番有力なのが、朝昼晩の3食に加えて、午後にお茶と一緒にお菓子を食べる事が多いので太りやすいからみたいだ。

その為、貴族の昼食は軽めにするのが一般的なんだって。


3品とパンを食べれば充分だと思うが。(普通に1食になるぞ)


「それもそうか」

「しかし、もっと食べたくなるくらい美味しいですね」

「少し暑くないですか?」

「身体から汗をかく様な感じですね」

「カレー粉に使われている香辛料の効果ですね。発汗作用により、体内の老廃物を除去して身体の調子を整え、余分な脂肪を減らす効果があります」

「そのような効果があるのかね?」

「食べるだけで健康になって、痩せるのですか⁉」

「本当ですか⁉」


健康と痩せるのワードに夫人達が食い付いた。


「では最後の品を作ります」

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