表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/125

第29話:両方です!

うわーー、エリアスが興奮してるよ。


「エリアス、嬉しいのはわかったから落ち着けって」

「そのスライムは昼間に尋問で使っていたスライムですよね?」

「ああ。今日テイムしたスライムでエリアスって名前だ」


ぴょん!


「ヨシタカさんの言葉を理解している様ですね」

「そうなんだ。魔物をテイムするのが初めてだし、ましてやスライムだから、わからない事が多すぎて困るよ。さあ、食べようか」

「ベルハルト様、こちらにどうぞ。」


食べ終えた騎士が、俺達の食べる場所を準備していた。

安物のペルシャ絨毯みたいな敷物に、肉やスープにパンが並べられてゆく。


「ヨシタカ、飯の礼じゃないが、今夜はウチの連中が寝ずの番をするから、お前はゆっくりと休んでくれ」

「それは有難い。昨日はあまり寝てないんだ」

「そうか。この街道の夜は魔物よりも 、盗賊を警戒するんだが、もう捕まえてあるから危険も少ない」

「ふーん。まあ、温かい内に食べよう。エリアスはこっちをお食べ、熱いから気を付けろよ?」


敷物に降りたエリアスの前に焼いた手羽を置いた。

手羽は美味いが、食べ難い欠点があったので、この部位をエリアスに食べさせる。(ホントは俺も手羽先は大好きだ)


どれどれ、パクッ


おっ! 旨い。

ムネ肉の方はカレーの風味で食欲を掻き立てる。

食感もムネ肉のパサついた感じが全く無い。

脂身の少ないモモ肉を食べているようだ。


モモ肉は……、肉汁溢れるプリプリの食感に、甘辛の焼き肉のタレが絡んで旨い!

適度な脂が肉の旨みを倍増させている様だ。

パンチはあるが、クドく無い。(魔物の肉ってこんなに美味いのか⁉)


「やはり、美味しいですね。匂いから想像していた以上です」

「そうですね。街でもこれ以上の料理が食べれるかどうか……」


2人を見ると、肉の旨さに舌鼓を打っていた。

ベルハルトなんかは染み染みと感想を漏らしていた様だね。

エリアスはぷるぷるしながら、骨ごと肉を溶かしている。


「ベルハルト、ガラン、1杯やらないか?」


そう言って、瓶ビールを出す。栓抜きも忘れずにね。

消費魔物は瓶ビールが6で、栓抜きが2だった。

この旨味の強い肉と一緒に飲めばサイコーだろう。


「何だそれは?」

「酒だよ。エールに似た酒でビールと言うんだ」



説明しよう!


このグレーバス大陸の酒は主に蜂蜜酒・エール・ワイン・蒸留酒の4種類が一般的だ。

庶民はエールを飲み、金持ちはそれ以外を飲む。

蜂蜜も葡萄も貴重な部類だから、酒の値段も高くなる。

蒸留酒ともなれば、手間暇が余計にかかる分だけ、希少価値が増す。一握りの僅かな金持ちの嗜好品だ。

ちなみに、ある国では【どぶろく】に近い酒もある様だ。




「異国の酒か? 興味深いな」

「ええ、是非ともいただきます」


シュポン!


トクトクトクトクと、木のジョッキに注ぐ。


「どーぞ」

「おう!」

「ゴクっ、いただきます」


ゴクッゴクッゴクッ……


「はーっ! 失礼……。冷たくて、爽やかな苦味が良い。咽にくる刺激が癖になりそうです。エールを飲んだのは初めてですが、こんなに美味しい物なのですね」

「クハーーっ! ベルハルト様、エールに似ていますが別物です。エールはこんな上等な酒じゃない、我々が飲む安酒です」

「まだあるから飲んでくれ。肉にも合うはずだ」


パクッ


「本当です、肉の脂をビールが洗い流してくれるのもありますが、香辛料の刺激的な味や、甘辛い肉の味との相性がバツグンですよ!」

「本当に美味い。どれも美味い。あいつらが浮かれるのもわかる味だな」

「スープも飲んでくれよ、せっかく作ったんだから」


と、言いつつビールを注いでいく。

エリアスにも木皿にリンゴジュースを注ぐ。途端にジュースに飛びついた。


「スープも具沢山で良いですね、野菜がおいしい」

「贅沢なスープだ。普段のスープとは別物で、貴族の食事の様だ」

「いえ、ガラン。我が子爵家でも、このように美味な食事を食べる事は出来ません。父が知ったら何と言うか……」

「親父さんがどうかしたのか?」

「我がニードラング子爵領が、周辺の領地よりも豊かな事はご存じですか?」

「それくらいなら知ってるさ」


ホントはもっと詳しく知ってるが。


「当家の歴代当主の方々はとても優秀で、領地を豊かにしてきました」


俺もガランもビールを飲みながら、ベルハルトの話しを聞く。


「勿論、当主も人の子ですから、何かの趣味に金銭を使うこともあります」

「まあ、当然だろう。生きる楽しみや趣味がないと、人生はつまらんだろう」

「そうですね。父の場合は、その金銭の使い道が【香辛料】なのです。だから、私がここで食べている料理を知れば、何を言われるか……」



空気が止まる。


金髪イケメン坊っちゃんが、深刻な面持ちで語るから、どんな内容かと身構えたらこれだ。


食い意地の張った親父さんに恨まれるかも? とは……。


「親父さんとの仲は?」

「とても良好ですよ。私は嫡男ですしね。他には妹しかいませんから、昔から大事に育てられました」

「そうですな、バルム様はご家族を大切にされ、我々のような家臣や領民をも気にかけて下さる、素晴らしい御方だ」

「そうですね。毎度のこの視察にも、本当は裏の目的がありましてね」

「大層ないい方だな?」

「口外無用ですが、この視察の真の目的は、香辛料の買い付けなのです」




また空気が止まったよ。


「じゃあ何か? お前さんは定期的に、エスタまでお使いに行ってるのか⁉」

「簡単に言えば、そういう事です。ですが、視察もちゃんと行っていますよ。以前の代官は汚職にまみれていましたから、再発防止の抜打ちという形で圧力をかけています」

「汚職の代官の事は聞いていましたが、バルム様が香辛料好きとは知りませんでした」

「美食家と言う程、大層な趣味でもありませんし、当家の経済状況からすれば浪費でもありません。香辛料を使った料理に目がないだけです。変な宝石等に大金を使うよりは全然良いですよ」

「今回も仕入れて来たのか?」

「勿論。手ぶらでは帰れませんからね」

「後でどんな物を買ったのか見せてくれないか?」

「それくらいなら構いませんが、知ってどうするんです?」

「こっちで重宝されてる香辛料ってヤツを見てみたいだけさ。子爵家がわざわざ買うくらいなら 、品質も良いだろ?」

「そういう事でしたらいいですよ。それよりも、私はこの肉の味付けに興味があります」

「どっちだ?」


「両方です!」

今日、1日を使って色々な資料を探す内に、この作品以外のアイディアや、書いてみたい話が出来ました。


この構想を活かせる時が来るように願っております。


明日以降も、皆様に少しでも楽しんでいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ