第26話:ガランの声が聞こえた
本日0時に新連載の作品を公開しました。
皆様のお気が向きましたら、覗いてみて下さい。
宜しくお願い致します。
来た道を戻り、ベルハルト達に合流する。
◆◆◆◆◆
なんか馬が増えている。
「ヨシタカ殿、戻られましたか」
若い騎士に声をかけられた。
「ああ。馬が増えてないか?」
「はい! もともと私達の馬だったモノや、盗賊達の馬を見つけまして。これで移動速度が落ちる心配はないでしょう!」
「それは助かったな」
「はい! 問題は水や食料かと思われます!」
「普通に話してくれていいよ」
「いえ! そのような訳にはいきません。ヨシタカ殿に粗相があってはならないと、ガラン隊長から言われておりますので!」
どうやら、ベルハルトやガランとしては、俺の能力の一端を知って、街まで穏便に向かう事にしたんだろう。
「水や食料か」
「はい! 燃やされた方の馬車でまとめて運んでいたので、ほぼダメになりました!」
「そっちは俺がなんとかしよう。ベルハルトの所に行ってくる」
「はっ!」
最後に敬礼までする騎士。そこまで畏まらんでもいいと思うのだが……。
無事な箱馬車の近くで、ベルハルトとガランが話をしていた。
「取り込み中かな?」
「ヨシタカさん、戻られましたか。アジトの方はどうでしたか?」
「あっちの森の中にちゃんとした建物が6軒あった。今後は使えないように、井戸以外は破壊してきた」
「そうですか。こちらは少々、厄介な事がありましてね」
「水や食料だろ?」
「ご存じでしたか」
「さっき、若い騎士に聞いたよ。その辺は何とか出来と思う。盗賊のアジアから多少の食糧や毛布をいただいてきた。毛布は使えそうなのを選んできたから安心してくれ」
「それは有難いですね。ガラン、これで出発しても大丈夫ですね?」
「はい、ベルハルト様。馬が確保出来たとは言え、街に帰れるのは明日の午後になるでしょうから、早速出発しましょう」
「俺は盗賊達の傷を治すわ。それと言い難いが、俺は馬に乗れないんだ。馬車に乗せてくれると有難い……」
ベルハルトとガランが顔を見合わせて吹き出した。
「ププッ、お前にも苦手な事があるんだな!」
「ガラン、失礼ですよ。しかし、ヨシタカさん程の旅のかたが馬に乗れないのは以外ですがね」
「故郷では馬に乗る機会が無くてな」
「大丈夫ですよ。貴方は命の恩人ですから馬車に乗っていただく予定でした。さあ、盗賊の傷を治したら馬車に乗ってください」
「悪いな。それとガラン、出発の前にこれを渡しておく」
そう言って、アイテムボックスから水の入った寸胴を出した。
「アイテムボックスか。荷物が見当たらないから、もしやと思っていたが。ホントにお前には驚かされる事が多いな。中身は……水か。ありがたく貰っておく」
「ああ。空になったら返してくれ、晩飯で使う」
「わかった」
そう言って、騎士を集めて水の補給を始めた。
俺も盗賊の治療を済ませよう。
◆◆◆◆◆
出発の準備も整い、移動を始める。
と、言ってももうすぐ夕方なので、大した距離を進む訳ではない。
先程までの場所は戦闘があったので、盗賊の死体があったり、血の臭いがしていたりと、もっと野宿に適した場所へと移動するだけだそうだ。
馬車にはベルハルトと俺の2人が乗り、エリアスは俺の太股の上で寛いでいる。
狭い空間で男2人だが、息苦しさは感じない。(金髪イケメン坊っちゃんの効果か?)
2人で他愛ない話をしていたが、ちょっと突っ込んだことを訊いてみる。
「どうして、エスタに行ってたんだ?」
「視察ですよ。ウチの領地にとってエスタは大事な港町ですからね。定期的に抜き打ちで、代官や諸々の視察に出向いている訳です」
「抜き打ちなのに、予定がバレたのは?」
「ある一部の者しか、日程を知りませんからね。襲わせた人物の目星は付いています」
「喰えないねぇ」
「何とでも言って下さい。こちらにも事情があると言ったでしょう?」
「そうだったな」
「それよりも、ヨシタカさんも随分と面白い人ですね」
「俺がか?」
関西人として、面白い人と言われて悪い気はしないが、言葉通りの意味では無いことは明らかだ。
「この辺では黒目黒髪は珍しいですし、強くて多才だ。何よりも貴方は珍しい刀を使っている。それも業物の刀を。貴方は何者ですか?」
「日本っていう島国育ちの旅人さ。この刀は旅立ちの餞別に貰った大事な刀だ」
嘘は言ってない! 全部を話してないだけさ。
これ以上は話せる事がない。
自分は元異世界人だの、転生しましただの、普通の人間には理解出来まい。
少し空気が重く感じた時に馬車が止まった。
「ベルハルト様、今日はここで野営をしましょう!」
外からガランの声が聞こえた。




