第22話:まずは尋問だ!
「ベルハルト様!」
ガランが慌てだした。
多分、ニードラング子爵家のボンボンだろう。
金髪イケメン坊っちゃんときたもんだ。(この世界ってお約束が好きなのか?)
「助けていただき感謝します。私はベルハルト・ドン・ニードラングと申します。お名前を伺っても宜しいですか?」
箱馬車にいるのが子爵家の人間だとは思っていたが、名前に【ドン】が付いてるって事は、封地貴族として当主か次期当主って事を示すそうだぜ。(神の知識より)
「俺はヨシタカ。旅の者だ」
「ヨシタカさん、不躾ですがポーションをお持ちでしたら譲っていただけませんか? 必ずお礼は致します」
「ベルハルト様!」
「いいんだガラン。先程の戦いを見ても、この方は強い。下手をするとガランよりも」
「しかし!」
「話中すまん、ポーションは持ってない。かわりに聖魔法が使える。」
「回復魔法が使えるのですか?!」
イケメン坊っちゃんがそこまで驚くことか?
聖魔法は通称【回復魔法】と呼ばれ、使える魔法は癒し系が中心だ。
聖魔法持ちはその殆どが、教会や国に仕えるらしい。
「ああ、これぐらいなら大丈夫だ。礼は期待させてもらう」
「わかりました。お願いします。」
「神よこの者の傷を癒したまえ、ヒール!」
わざと詠唱する【振り】をして【ヒール】を使う。軽い怪我や打撲を直す一般的な魔法の名前。
これまで俺は何度か魔法を使ったが、1度も詠唱なんてしていない。
そもそも、この世界の魔法って実は、詠唱や魔法名なんて必要ないのだ。
どんな魔法を使いたいかをイメージする為の補助に詠唱し、発動のタイミングを補助する目的で魔法名を口に出す。
つまり、頭の中で完璧にイメージし、制御出来れば考えただけで、魔法を使う事が出来る仕組みだ。
しかし、そんな芸当をこなせるものは、そうそういない。(ほぼ0に等しい)
因みに俺の場合は、魔法を使う際に【万物創造】の補助が効いて詠唱要らずだ。(万物創造ありがとう)
でもあまり他人の前で、むやみに無詠唱で魔法を使うのはちょっとね。
「神よこの者の傷を癒したまえ、ヒール!」
2人に初歩的な回復魔法を使ったが、傷が治り顔色も良くなった。
「直に意識も戻るだろう」
「ありがとうございます。まさかヨシタカさんが、回復魔法使いだったとは驚きです」
「たまたまさ。それよりも、ベルハルト達はどうしてここに?」
「私達はエスタの街へ視察に行った帰りなのです。まさか盗賊に襲われるとは……」
「領主様もたいへんだな」
「いえ、領主は父ですよ。私は嫡男です」
「へ~、だから襲われたんだな」
「!、お前それはどういう事だ⁉」
「落ち着きなさい、ガラン。ヨシタカさん、説明していただけますか?」
おっと、イケメン坊っちゃんからプレッシャーを感じる。
伊達に豊かな子爵家の次期当主じゃないか。
言葉は丁寧だが、拒否させない圧力が漂う。
「さっきの盗賊が【聞いてねえ】とか【簡単な仕事】って言ってたからな。たまたま襲われたんじゃ無い可能性が高い。心当たりは?」
「……いえ、ありません…………」
こりゃあ、訳ありか?
恩は売っても、厄介事に首を突っ込みたくはないな。
ニードラング子爵家といえば、領地は広い方ではないものの、領地経営に関してはそこらの侯爵に勝る。
ドロドロの権力闘争でも開催しているのだろう。(あ~やだね)
「まずは尋問だ!」