第18話:新記録更新だ
エリアスを左肩に載せ、森を抜ける為に移動を始めた。
昨夜、全力疾走したおかげで、昼頃には森を抜けられるだろう。
天気は雲1つ無い快晴、気温も上がり少し汗ばむ。
そういえば昨夜は風呂に入ってない。街では風呂に入れるのだろうか?
日本での当たり前が、こちらの世界では通じない。
改めて、故郷のありがたみを感じた。
◆◆◆◆◆
森を移動中、エリアスに話かけて幾つかわかった事がある。
エリアスはある程度ではあるが、俺の言葉を理解していた。
流石に、難しい言い回しは無理だったが、日常的な会話は理解出来ていた。
しかし、スライムは喋れないので、会話は不可能。
そこでエリアスには、意思表示を身体で表現させる事にした。
イエスなら跳ねる、ノーなら左右に揺れる。わかりやすいだろ?
スライム全般に同じ様な知能があるのか確認する為、他のスライムに話しかけてみたものの、逆に襲ってきやがった。(そりゃそうだ)
その途中、ゴブリンや鳥系のウイングバードが襲って来たが、返り討ちにした。(スライムは見逃した)
何度か刀で魔物を倒して気付づいたが、剣道で使っていた竹刀と日本刀では、戦い方が違った。(当たり前だ)
竹刀で相手を打ち付けても、人体を切る事は無い。(あったら怖い)
しかし、今の俺は刀で相手を切らなければならない。
日本刀で相手を切る際は、摩擦を利用しなければならない。
最初は凄く戸惑ったが、剣術スキルのおかげで、すぐに上達した。
何度かの戦闘で、改めてスキルの偉大さを実感したよ。
ちなみに、エリアスはずっと俺の左肩に載った状態で、大人しくしていたが、全く落ちる事はなかった。
この森にはスライムやゴブリンの他に、鳥系と猪型の魔物がいるが、一般の冒険者が戦っても苦戦する事はないので、新米冒険者がこの森に腕試しに来る事が多い様だ。
森を抜けようとした頃に、森に向かっている人の気配を感じた。
街道から離れ、森に入ろうとしている。
(このままなら、すれ違いそうだな)
めんどくさく思い、少し早いが休憩がてら昼飯にする。
朝からずっと歩いていたが、特に疲れはない。
魔物との遭遇も、戦闘と言う程の戦いでもなかった。
昨日に比べれば、命を奪う事にも慣れて、魔石の回収にも嫌悪感は薄れている。
(慣れって怖いな)
木陰で、ビニールシートを出して休憩を取る。
時刻はもうすぐ11時。
昼飯には早いが、朝飯が少なかったので、腹に何か入れたい。
「エリアス、ちょっと休憩しよう。腹は減ってるか?」
ぴょん!
ずっと肩にいたのに腹が減ったのか?
まあいい、早く大きくなって強いスライムになる事を願おう。
「準備するからちょっと待ってな。」
ぴょん!
肩で1度跳ねてから、ビニールシートに降りた。
ちゃんとわかってる様だ。
魔力も全快に近いし、飯の前にランタンの創造に挑むぞ!
カセットコンロが成功したので、ランタンもイケるはず。
目を閉じて、ランタンをイメージする。イメージ……。
目を閉じた方が集中できるので、戦闘時以外は目を閉じる事が多い。
おっ! きたきた。ズッシリとした感覚がきた!
目を開けると手の上にランタンがあった。
魔力消費はどうだろう? 84か、ゴツいな。
新記録更新だ。