第115話:この2人はアホか!
すみません! ホントすみません!
「いただきます。ヨシタカ! さっさとその酒を渡せ!」
勿論渡してやるさ。
「さあ、飲んでくれ」
トン。トクトクトクトク。
ワイングラスを置き、白ワインを注ぐ。
「ああ、美味しそう……」
レイラインはウットリとした風に呟く。
「ワインなんて久しぶりだ……」
反してレグはしみじみと呟いた。
「そうなのか?」
「ああ。現役だった頃は羽振りも良かったが、引退したらワインなんて飲めん。こんな薄い色のワインなんて美味いのか?」
「レグ。バカな事は言わないで飲んでみなさい。貴方がこれまで飲んできたワインよりも美味しいわよ」
フフッ、レイライン。嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか。
「俺の故郷の酒は美味いぞ。さあ、飲んでみろって」
「おっ、おう」
ゴクッ
「……う、美味い……」
ほらな?
「あ~。やっぱり美味しいわ~。ずっとこれが飲みたかったのよ~」
(ずっとって、昨日の晩も飲んだだろうが!)
「シュウ、お酒って美味しいの?」
「私も飲んだ事はありますが、美味しいモノではなかったですよ?」
「あのお祖母ちゃんがあんなに美味しそうに飲んでるよ? 私もお酒は飲んだ事があるけど、エールもワインも美味しくなかったよ?」
「もしかしたら、ヨシタカさんの故郷のお酒は本当に美味しいのかもしれません……」
あー。そりゃあ、この世界の酒は美味く無いもんな……。
「ユインとシュウにはこんな酒はどうだ?」
トン
そう言って俺が出したのは梅酒。チョ○ヤの緑色した瓶の梅の実が入ったヤツだ。
「あら! 新しいお酒?」
「変わった色の瓶だな?」
「この酒は梅酒と言って、梅という木の実を漬け込んだ酒だ。甘めの酒だから、これなら2人でも飲めるだろう」
「美味しいんですか?」
「私はお酒はちょっと……」
レイラインとレグは梅酒に興味を持った様だが、ユインとシュウの反応はイマイチだった。
「騙されたと思って飲んでみろって」
カラン、トクトク、シュワシュワシュワ、
「エッ⁉」×4
2人が飲んでいたサイダーに氷を入れ梅酒を注ぎ、サイダーを足した。
「梅酒はそのままで飲むよりも氷を入れたり、水で割ったりする方が良い。2人ならサイダーで割った方が飲みやすいだろう」
梅酒をサイダーで割ったらさらに甘くなるが、酒に対して良いイメージを持っていないこの2人には、ジュースの延長線上で酒を飲ませた方が良いだろう。
「ホラ、飲んでみな」
レイラインはこの梅酒のサイダー割に興味津々だが、ユインとシュウはそこまで惹かれた様子ではない。
「俺が不味いモノを出したか?」
「それは……」
「確かに……」
「ホラ、飲んでみなって」
「そうよ、勿体無い! 貴女達が飲まないなら私が飲むわ!」
(うわばみミエルフは黙ってろ!)
「お祖母ちゃんに取られるくらいなら!」
ゴクッ!ゴクッ!ゴクッ!
(おー、豪快に行ったな)
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「どうだった?」「どうでした?」
「あら♪ 良い飲みっぷりじゃない♪」
思わず、シュウと被ってしまった。
「お、美味しい……」
「だろ?」
やはり甘めの酒の方がウケが良かったか。
「私も……」
ユインの反応を確認してシュウが飲む。
コクッ……! ゴクッ、ゴクッ
「……ええ。確かに美味しいです。これなら飲めます。むしろもっといただいていいですか?」
「私もお代わりください!」
「ああ。梅酒はまだまだある。俺達が酒を飲んでるのに、仲間外れにしないさ。気にせず飲みな」
「ありがとうございます!」×2
日本で売られている酒にハズレはないぜ。
「ねぇ、ヨシタカ」
「何だ?」
「お代わり。それと、梅酒もちょうだい」
「俺もだ!」
見ると、レイラインとレグのワイングラスは空だった。
お代わりの白ワインと梅酒のサイダー割を渡そうとしたら怒られた。
「割らずに貰える?」
(そーゆー事か……)
改めて白ワインを注ぎ、ロックグラスに数個の氷を入れて梅酒を注いだ。勿論、レグにも。
「なかなか良い香りね」
「甘い香りの中に変わった香りも感じます」
レグが食レポを覚えた!
2人は梅酒の香りを確かめると、躊躇なく飲んだ。
「ん~。悪くないわ」
「蜂蜜酒よりも甘いが美味いな」
「でも……」
(でも、何だ?)
「確かに蜂蜜酒よりも美味しいけど甘いわ。やっぱり今は白ワインよ」
ゴクッゴクッゴクッ!
そう言うや否や、一気にワイングラスの白ワインを飲み干した。
「ハァ~~~。やっぱり白ワインよ!」
「確かにこの白ワインの方が美味いですな」
ゴクッゴクッゴクッ!
「アーーー! 美味い!」
レポも一気に飲み干した。
「お代わり‼」×2
青○のCMか!
こうなりゃヤケだ。
「おう! 飲め飲め! ユインとシュウも遠慮するな! 吐くまで飲め!」
「いただきます!」×2
◆◆◆◆◆
その後は酷いモンだった……。
「セリカ……マーガレット……ダーリ……ミケランジェロ……リメロ……ラルク……トメル……サース……シリス……シリカ……。会いたいよぉ~」
「ユイン! もっと飲めよ! 酒だぞ酒!」
「そうよ。折角の美味しいお酒なのよ、もっと飲みなさいよ」
「カァーーーー!。美味めぇな、この白ワイン」
「でしょ? レグももっと飲みなさい」
「ええ、いただきます! ヨシタカ、もっと飲ませろ!」
「そうよ、お代わりよ」
◆◆◆◆◆
「ウウゥ……、気持ち悪い……」
「俺は最強だ! オークなんてブチのめしてやるぜ‼」
「若いって良いわねぇ……。お代わり」
「全くですなぁ! こんなに美味い酒は久しぶりだ! シュウじゃないが、明日はオークリーダーだって倒せそうだ!」
(そりゃ良かった……、オマエ等2人で白ワイン12本も空けたんだぞ?)
そう! このバカ2人は飯もそこそこに酒ばっかり飲みやがる!
折角、俺が用意したスープやオークのステーキを余所に酒ばかりを煽りやがる。
挙げ句の果てに、ユインとシュウはあんな感じになってる……。
「酒ばかり飲まずに何か食えよ」
俺がこんな風に言っても
「この白ワインがあれば他に何も要らないわ~」
「酒があれば生きていける!」
だのとほざくバカが2人いた。
◆◆◆◆◆
「ねぇ~、ヨシタカ~?」
「お代わりか?」
「他には無いの~?」
「飯か? もつ煮込み意外にも色々あるぞ」
「バカ! お酒よお酒~。そろそろ違うモノが飲みたいわ~」
「何だとー、他にも持ってるのかー!」
「そうよ~。この子はねー、日本酒っていう美味しいお酒を持ってるのよ~」
「よし出せ! 直ぐ出せ! さっさと出せ!」
この2人はアホか!