第10話:行ってきます
気分的には、異世界王に俺はなる‼
って感じだけど、そんな事に興味はないんだ。
バイトしたり、社会人になれば気付く事だが、人の上に立つと急に仕事量が増え、責任が重くのし掛かり、部下や周囲も気にかけないといけなくなる。
折角、実力社会(物理的な意味で)のファンタジー世界で生きるなら、余計な柵はお断りだ。
「……さん、藤原さん!」
「っ! ごめん、考え事に集中してたよ」
「いえ、地上に行く為の準備も、もう少しで終わりますので、あとちょとだけお付き合いください」
「任せなさい。で?」
「魔法系スキルの適性ですが、確認も終わり付与も終わらせましたので、藤原さんも確認してください。」
「OK!」
ステータスを開いて確認すると、にやけてしまう内容になっていたよ。
この世界こそ、俺が真に生きる世界なんじゃないかって、錯覚するくらいの内容だったゼ‼
「それと、技術系と強化系のスキルを5つ、この中から選んでください」
そう言って、1つのウィンドウを見せる。
「俺のステータスに合わせるには迷うな~」
そう! ウィンドウには大量のスキルが並んでいたよ。
数えてみたら43種類もあったぜコノヤロウ♪
例えば、
[技術系]
統率・指導・索敵・採取・栽培・鍛冶・調合・家事・調教・並列思考、等々…
[強化系]
ダッシュ・跳躍・気配感知・魔力感知・高速思考・身体強化・魔力強化・物理攻撃耐性・魔法攻撃耐性・体力回復強化・魔力回復強化、等々……
調教欲しい‼しかし5つだ、迷う!
調教があれば、条件に合ったモンスターをテイムする事が出来るのだ。
竜のクエスト5が好きな俺としては必須!
ここには43種類のスキルが並んでいるが、実はまだまだ沢山のスキルが存在する。
転生にあたり、上位神様が用意してくれたのがこの43種類なのだ。
あと4つどうする?
そこのあなた!
あなたならどうしますか?
この選択は人生のターニングポイントに間違いないだろう。
自力でスキルを取得する方法もあるが、ここにはレアなスキルも並んでいる。
選ぶだけで5つもスキルが手に入るなんて、人生でこれっきりだ。
◆◆◆◆◆
あれから2時間弱。
やっと決まったよ……。
あまりにも時間がかかったので途中、タバコを吸おうとしたらクラウちゃんに止められ叱られた。その流れで禁煙の約束までさせられた。
その後、クラウちゃんの好感度アップの為に、チョコやマシュマロにクッキーを貢いでみた。
やっぱり女の子だね。甘いお菓子にご機嫌でしたよ。
そんなこんなで、もうすぐ出発。
「最後に、幾つか注意事項を説明します」
こんな内容。
①神様サイドから用事がある際は、神託として連絡がくるかもしれない。
②俺から神様サイドに連絡を取りたい際は、膨大な魔力を込めつつ、クラウちゃんに強く呼び掛ければ連絡を取れる。
③俺の身体能力や体の構造が、こっちの世界仕様になっている。(ステータスの能力値が高いのは神様からのサービス)
④万物創造で、生命体以外にもお金は造り出せないとの事。(めっちゃショックやで!)
自分でお金を造れたら働かなくなるかも、と上位神様は思ったそうな。(俺も思ったよ)
⑤餞別に金貨10枚と銀貨10枚。それと装備品をくれるんだって。
「装備品の希望はありますか?」
「日本刀が欲しい」(即答)
「刀と言うのは剣の種類で、藤原さんの故郷の剣でしたよね?」
「そうだね。あとは動きやすい皮鎧なら何でもいいよ」
「う~ん……。任せてください♪」
少し考え込んだクラウちゃんは早速、胸の前で手を合わせる。
ポン
と、いう音とともに、俺の身体を光の粒子が覆い、暫くすると粒子が消え現れたのは、ファイヤーな紋章に出てきそうな格好だった。
黒のインナーにベージュのズボン。膝近くまである茶色のブーツ。ややグレーっぽい黒色の皮鎧を着た俺の姿。
右手には貨幣の入った皮袋を握り、左手には灰色の外套を持ち、左腰には日本刀をさしている。
革鎧やブーツ、外套も多少の使用感があるのが良い。
左手の腕時計は元々、ダークブラウンの皮ベルトだったので、今の格好でもあまり違和感がない。
文字盤も黒を基調としたソーラーパネルなので安心して使える。(こちらの世界も1日は24時間)
完璧じゃんか‼
いいよ! いーよ‼
皮袋をズボンのポケットに突っ込んで、準備は完了。
「クラウちゃん、ありがとう」
「全ての準備が整いました。これから藤原さんをイシュルガーツの地に送り出します」
「ああ」
「直接的お会いすることはもうないでしょう。しかし、私がずっと見守っている事を忘れないでくださいね」
「うん、ありがとう」
「それでは宜しいですか?」
「ちょっと待って!」
「忘れ物ですか?」
「そんなとこ、かな?」
俺は目を閉じて、ありったけの魔力を込めて創造する。
そして目を開けると、右手には俺の全魔力の約9割をつぎ込んだ大きなビニール袋が3つ握られている。
「クラウちゃん、プレゼント。」
そう言ってビニール袋を美少女女神様に渡す。
「これって!」
「そう、お菓子。次はいつご馳走出来るかわからないからね♪」
ビニール袋の中身は全てお菓子。
ケーキ・シュークリーム・チョコ・クッキー・アイスクリーム等の甘いものが入っている。
「大切にいただきます」
「うん。それじゃあ行くわ」
「はい、行ってらっしゃい♪」
女神様は笑顔で送り出してくれた。
「行ってきます」
やっとイシュルガーツに行けました。ここまで書くのに11話もかかりましたね。