第101話:上位種退治にかかるわよ
(いた!)
3体のオークに囲まれたイースの姿を捉えた。
大きなダメージはない様だが、囲まれた状態では攻める事が出来ず防戦一方の様だ。距離も取れず、三方に警戒しながら剣を構えて息を荒げている。
神眼で視ても体力、魔力共に約5割といったところだ。
イースの魔力は冒険者としては高く、火魔法のスキルを持っている事から所謂、魔法剣士タイプなのだろう。
「魔法いきます!」
イースに近付こうとしたら後ろから声がした。
変に動いて俺に当たらない様に動きを止めユイン達の援護を待つ。
「ウインドランス!」
「アイスバレット!」
手前側にいた2体のオークへ魔法が当たる。
それぞれ1撃では仕留める事が出来なかったが、十分な威力はあった様で攻撃魔法が当たったオークはダメージを負いふらついている。
(チャンスだ!)
一気に距離を詰めようと駆け出したが、ふらついた1体のオークがイースの方に倒れ込み、オークの下敷きになってしまった。
「グエッ!」
オークの下敷きとなり苦しそうにしているイースだが、200㎏前後もの巨体の下敷きとなれば当然だな。
デカイオークの身体に守られる形となり、他のオークから狙い辛くなったので、直ぐに命の危機に陥る事は無くなった。(イースは苦しそうだが……)
体力を温存する為にも無駄な動きを控え、目の前の3体のオークを確実に倒す事にする。
普通に歩き俺を威嚇するオークに近付く。
冷静に刀を振り、顔や首を切断し1撃で仕留めた。
相変わらずイースの上に乗っているオークは生きてはいるものの、ジタバタともがいて起き上がれない様だ。
「エリアス」
ぴょん
あうんの呼吸ではないが、エリアスも慣れたものでオークの頭を溶かし始める。
「おい、大丈夫か?」
「誰も助けてくれと言ってないぞ!」
「お前以外の連中に頼まれただけだ。無能なガキが足を引っ張っているとな」
「クソが! バカにしやがって!」
えらくご機嫌ナナメだな。被害妄想が入ってるし……。(俺のせいじゃないぞ)
『イース!』
此方が片付いたので、後ろの連中がイースの元へ駆け寄ってきた。
ぴょん、ぴょん!
エリアスも作業が終り、いつもの場所へと戻る。
「大丈夫か! イース!」
「無茶な事はしないでよね!」
「無事の様だな」
「凄いです、ヨシタカさん!」
「まったく、尋常ではない強さですね」
「褒めても何も出んからな」
そう言って一口サイズのチョコを手渡す。
「何です?」
「チョコと言うお菓子だ。甘いものは疲れた時に食べるといい、食べておけ。ホラ、エリアスも」
ぽむ、ふるふる
「美味しー!」
「美味しいです」
俺も食べておこう。
パクッ
あ~、甘いチョコが染みるわ~。栄養ドリンクよりもこっちの方が効きそうだな。
「ヨシタカさん、イースを助けてもらってスミマセン」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
イースのパーティーメンバーが礼を言ってくるが、当のイースは俺を睨んでいる。
「気にするな、本隊に合流しよう」
『はい!』
オークの死骸を回収し、レイライン達のA班の本隊に合流すると、ちょうど近くのオークを倒し終えたところだった。
実力者が多い事もあるだろうが、前衛組と後衛組の連係が出来ているからか、被害が少なくオークの数を減らしている様だ。
「おばーちゃーん!」
「あら、早かったわね。流石はヨシタカといったところかしら?」
「ユイン達の援護があったからな」
「いえ、ヨシタカさんの実力は本物でしたよ」
「シュウがそこまで言うなら本当に強いのね。さてと、ヨシタカも疲れていると思うけど、上位種退治にかかるわよ」