あいさつ
投稿の日がばらばらですみません。
これからもこんな感じでやっていきます。
猫は自分の死が近づくと何も告げずにいなくなるという。
あまり信じていなかったが、どうやら本当のことらしい。
親も、友人も、知り合いも、兄弟もみんないなくなった。
何も告げずに。 いなくなってしまった。
一言、言ってくれればいいものを。
帰ってくると信じて、待っている者の気持ちも考えて欲しいものだな、まったく。
だから私は、いなくなるということを告げに行く。
友人に、世話になった人間に、知り合いに。
橋を渡って、裏路地を通りすぎ、猫の集会所も通りすぎ、またもうひとつ橋を渡った三軒目の青色の屋根の家。
居るんだろうか、あいつは。
「おい。」
聞きなれた声。あいつだ。
「何してるんだ?昨日会ったばかりじゃないか。いつもなら、もう少し経ってから会いに来るのに。」
少し不思議そうな顔をして言うコイツは、いつもと同じ。
何も変わらない。今も、これからも。
「なに、ちょっとあいさつにね。」
「あいさつ?」
「あぁ。近々この街を出ようと思ってね。それであいさつに」
「ほう、それはいいな。いつ頃帰ってくるんだい?」
「いや、帰ってこないかもしれない」
その言葉を聞いた途端、彼の表情が曇る。
すると、何かを察したのか、途端に泣きそうな穏やかな笑みを浮かべ始めた。
「....そうか、どこに行くつもりで?」
「さぁ、どこだろうな。まったくわからない。」
「なるほどな、お前らしい。」
「だろ?じゃあ他の奴らにもあいさつをしにいくから。じゃあな。」
「あぁ。良い旅を。またな。」
その言葉を背にまた歩きだす。悲しそうな鳴き声を無視して。
少し歩いて、猫の集会所に到着。
土管の上で空を見ている、茶色の毛並みの猫。
こちらの気配に気づいたのか、ゆっくりと頭をおろして、土管から降りてくる。
「やぁ、今日、集会はないはずだけど。どうしたの?」
口調から物腰の柔らかさが伝わってくる。
「いや、少しあいさつに。」
「あいさつ?なんの?」
「近々、旅に出ようと思ってね。そのあいさつに今日は来たんだ。」
「ふーん.....」
興味があるのか無いのかわからない物言いをする。
コイツもいつもと同じ。何も変わらない。
「そうかい。楽しんでこいよ。土産話、楽しみにしてる。」
「あぁ、楽しみにしといてくれよ。」
振り返り、その場をあとにしようとすると背後から、感情の読み取れない声でこんな言葉が聞こえてきた。
「逝ってらっしゃい。」
少し間をおいて答えた。
「逝ってきます。」
∞∞∞∞∞∞∞∞
猫は、自分の死が近づくといなくなるという。
その行為の意味がわからなかったが
なるほどな
仲間に別れを告げるのは悲しい。それも一生の別れを。
あぁ、貴方たちはこんな気持ちだったのですか?
仲間の前から消えるのは。
もう、会えないと、覚悟するのは。
悲しい。悲しくて寂しい。
いや、でも私はあいさつをして皆の前から消える。
心残りはない。
最後に顔が見れたから。話せたから。
死が一生の別れではない。
また生まれ変わって、どこかであうかもしれない。
「今の自分がしていることは、前世の自分がしていたことである。」
どこかで聞いた、雑学。
前世の自分と同じ行動をとるのなら、前世で知り合った仲間とも会うはずだ。
だから、このあいさつはしばらく会えないという報告。
また会おうという約束。
来世の自分に期待して
また会おうという約束を守って
では、またね
お元気で




