とあるスピードファイターのお話6
服屋はどこだー
商店が集まってるのは中央広場だけど、中央広場には行きたくない。
また追いかけられるかもだから。
だから個人でやってる店でいいから裏通りに服屋ないかなぁーっ!
「あのー、このへんにフードとか売ってるお店ありませんかね?」
あれから30分、探すの諦め聞く戦法。
はじめからこうすればよかったじゃん。
「あらその格好は…冒険者さんね?」
聞いた人は、綺麗どころのお姉さん。
女性の方が詳しいかと思ってこの人に聞いたのだ。
「あ、はい。町中用の外隱みたいなのが欲しくて」
「確かにその格好じゃ誘ってるようなものだもんね」
そうなのだ。
完全に陸上選手並の布面積しかない。
お腹丸出しだし、太ももからふくらはぎにかけても全部出てる。
防具としてどうなんだとは思うが、そもそもカテゴリが服なので防御機能はおまけみたいなものなのだ。
「じゃあ、私が作ってあげるわ!」
おっ?
「あなた、中央広場まであまり行きたくないのでしょう?」
あまりに急なのでキョトーンとしてたら
「さっきあなたが追いかけられているところ、見ててね」
いたずらっぽく笑うお姉さん、あらかわ。
「あー、その…」
「いいのよ、理由は聞かないから。」
「ありがとうございます」
お辞儀。
まぁ理由なんてこの容姿のせいなんですけど。
「あとお代はいらないわ」
ここで若干喜んだ俺を殴りたいね。
「いいんですか?」
「ただし、ぎゅーってさせてね?」
え?
「は?」
「そのまんまよー?ぎゅーって」
え?え?
「俺男ですけど…」
「知ってるわよー?」
え?え?え?
「いいかしら?」
「あ、え、あ、はぃ」
「やったーっ」
これでいいのだろうか…
それから小一時間ほどで、外隱は完成し、さらにそこから夜明けまでずーっっっとお姉さんにぎゅーってされ続けました。
いろいろ辛いです。
夜明けになり、お姉さんの呪縛(?)から開放された俺は外隱を纏いさっさと門をくぐる。
ちなみにこの外隱の性能だけど
『ミリリア特製外隱:SPD+10
ミリリアが妃翠の為に作った外隱。
聖なる鷹の翼が使われており、他のステータスを落とすことなくSPDだけを上げることに成功している。
装着権:妃翠のみ』
もう俺はあのお姉さんが分からない。
何者なんだよ一体…
あと名前も今知った。
さて、と。
戦いのコツは昨日つかんだ。
ただ、極振り掲示板にあったスタミナの問題。
これはやってみないとわかんなかったりする。
さすが朝1、狩場が人でごった返しているなんてことはない。
手前の方の狩場は空いてる。
この時間から出てる人たちは籠り組が多いからほとんど皆奥の方にいるんだろう。
取り敢えず遠目に見つけた角兎、ラビットホーンに狙いをつける。
距離約30mほど、いけるな。
ふっ、と息を吐き一気に駆け出す。
だいたい2秒で駆け抜けて、勢いのせたまま韋駄天の一撃を放つ。
ってただ殴るだけなんだけど。
殴る寸前に篭手を付けてないことに気づく。
しかしもう遅い。
痛ってぇぇぇぇえええ!
ラビットホーンは光の粒子となって消えていった。
ただいま!
篭手をつけて狩場に帰還。
外隱すげぇ。
誰にも追いかけられなかった。
買った篭手だが、
『軽い篭手 STR-5 SPD+2
速度を重視した作りにしてしまったがために肝心の攻撃力を落としてしまった篭手。速度重視の盗賊や格闘家の1部が使用するため、店にはだいたいひとつは置いてある1品。』
だそうだ。
スピード狂専用ですねありがとうございます。
さて、わかっただろうか?
ステータス補正の数値が。
STRを5落として上がるSPDが2。
素材とかもあるだろうが、ステータス上昇装備にはデメリットがつきもの。
そりゃ40レベ用装備とかになるとデメリット無かったりするけど。
しかーし!
ミリリアさんの外隱はどうか!
デメリット無しでSPD+10!
これ初心者がつけれる防具としてはぶっ壊れでしょ。
何者なんあの人。