とあるスピードファイターのお話19
はーいお久しぶりです。
失踪してませんからね!
なんの運命のいたずらだ!
思わずそう叫びたかった。
トーナメント第1回戦、Aブロック。
対戦相手と対峙していた。
「まさか、まず当たってしまうとは」
「これ私の負け確定じゃないかい!?」
「勝負ってのは最後まで分かんないもんですよ、団長」
「ちくしょう!煽りにしか聞こえない!」
「まぁまぁ……」
「いいよ!やってやんよ!俺やってやんよ!」
「キャラ崩壊してらっしゃる!」
そう
我がギルドが誇る恐らく最強であろうこの男(の娘)、妃翠と当たってしまったのだ。
――
さーてさてさて。
どう攻略しようか。
篭手をはめて軽く構えて、みすりるは盾を構えて、試合開始の合図を待つ。
「手加減してね?」
「それはこっちのセリフだぁぁぁぁああ!」
パーンッ!
合図と同時に左斜めへと駆け出す。
馬鹿正直に正面から行くとカウンター喰らって即死だろう。
ってか俺でもそうする。
「"甲殻化"!」
アリーナの壁にぶつかって勢いを殺して、そのまま壁を蹴ってみすりるの背後に突進する。
「そっち、か!」
俺の突進に合わせてみすりるの剣が振り抜かれるが、その剣が届く間合いに入る前に思いっきり地面を蹴りてムーンサルトを決めて正面に着地。
と同時に再び加速して右側面に回り込み、一撃を入れようと構え「"返"!」寸出の所で地面に拳を叩きつけサイドステップを踏む。
「来てくれても良かったのになっ」
踏み込み上段をバックステップでかわす。
「どうせダメージ反射とかその類なんでしょ!?」
みすりるの剣戟を避けながら言い放つ。
ってかこの人何サラッと俺の速度についてこれてんの!?
「ステータス振りを変えたのさっ!」
まさかの速度重視にしたのか!?
「剣速だけなら負けないよ!」
STR重視のVIT型かよ!
隙をついて蹴りを入れるが見事なまでに受け流される。
「ぐぅっ!防いでこれか!」
苦しそうな声が出た!
これは勝機あるか!
それをきっかけに攻めへと転じる。
みすりるの剣線を、持ち前の速度で避けて盾のない所に蹴りを入れる、が盾に流される。
けど。
「むぅっ!」
さっきの反射が来ないとこを見るとクールタイムは長いようだな。
しかし油断は禁物。
慎重に、かつ大胆に隙を狙って蹴って殴って。
「"シャウト"!」
突然の咆哮に一瞬怯んだ。
「せいっ!」
右袈裟を後ろに飛んで回避。
あぶねぇかすった。
「防いでこのダメージは反則だよ!」
ポーションを砕いてその身に浴びながらみすりるがそう叫ぶ。
見ると七割ほど減っていた。
まぁみるみる回復してるんですが。
「"疾風怒濤"」
「っ!?"キャッスルシールド"!」
妃翠の回りに竜巻が吹き荒れ、みすりるの体を城のエフェクトが包み込む。
砂埃と風がやんだそのアリーナには、まだ二人の姿があった。
「この短時間でポーション三個砕くとは……イイヤツなのに……」
「いや、よく耐えましたね怒涛」
「盾職が落ちてどうする!」
ごもっとも。
ってかみすりるさん怒涛の中飛ばされず1歩も動いてないんだけどどーゆーことよ。
「全く、懲りない火力だな!」
「懲りない耐久力ですねっ!」
そして再び格闘戦へと移っていく。
かなりの早さでみすりるの剣が振り抜かれ、それを避けて避けて反撃、が盾に流される。
常人には到底追いつけないレベルの戦いが繰り広げられ…………
『激闘を制したのは妃翠選手だぁぁぁぁああ!!!』
『これ決勝戦じゃないよね!?』
『僕も今それ思いましたよ』
あーぶねぇぇぇえええ!
何回みすりるの剣がかすったことか。
ダメージ反射のスキルにビクビクしつつ戦った9分ちょい。
時間的にも危なかった。
面白いことに、10分きっかりで俺の体は機能がスーパーダウンする。
それまでに決めれてよかった。
いやマジで。




