とあるスピードファイターのお話16
大変遅くなりました。
戦闘シーンが書けない病に陥りまして。
今日から3日連続更新するので許してください。
「盾持ちの戦士職は前にでろ!アタッカーと後衛陣は盾の後ろへ!集団じゃねえと勝てないぞ!」
そう叫びながら妃翠目掛けて駆け出したのが、赤髪の両手剣の戦士アイン。
彼はβテスト時代みすりると1位2位を争っていた猛者だ。
「´´速・斬刀´´!」
アインがアーツを叫ぶと両手剣が輝きを放つ。
火力と速度を高い水準で持つ者しか得られないアーツ、速・斬刀。
それは5m弱の距離を即座に踏破し視認困難な速度でもって両手剣を叩き付ける。
ドゴッっと、鈍い音が発せられるがそこに妃翠の姿は無い。
刹那、アインは体を倒そうとするがもう遅い。
バックアタックの恩恵を受けた妃翠の拳がアインの体力を一撃で0にする。
「ぐぁ…っ!……速すぎだっての……っ」
「それが売りですから」
その言葉を受けつつ、光の粒子となり退場するアイン。
「ってかナニ?このレイドボスに挑んでます感は」
振り返る妃翠の目には、陣形を固めつつあるプレイヤーたちが映る。
「バトルロワイヤルには見えないね、これ」
そう呟いて一気に駆け出す。
少し合流が遅れた軽戦士を3人瞬殺する。
「彼の者を燃せ!ファイアボール!」
の詠唱とともに陣形の後方から炎の球が飛んでくる。
このファイアボール、詠唱時間に比例して追尾性能が強化されるという特性がある。
妃翠が開幕で魔法使いを数人落とした瞬間から今の今まで詠唱を続けたそれは――妃翠は飛んできたファイアボールをギリギリまで引き付けてから、空中へと飛ぶ。過去にガーネットと対戦した時に学んだ回避方法だ。大体の場合ならこれで避けられる筈、が――妃翠の跳躍を追跡するのに十分な性能を有していた。
妃翠が空へ躍り出た瞬間、魔法使いは´´取った!´´と確信した。
空へ飛ぶ、それはその後の動きが自由落下しかないことを意味するからだ。
一部例外を除いて、だが。
妃翠はその一部例外だった。
空間跳駆とステップを偏用して、空間を蹴り加速。
真っ直ぐ魔法使いの方へ弾丸のように飛んでいく。
「いい魔法だったよ」
の言葉と一緒に魔法使いの体力を0にする。
「さて、これでおしまいだよ。´´疾風怒涛´´」
アーツを唱えた瞬間、妃翠中心に突風が吹き荒れ砂埃が舞った。
風と砂埃が止んだコロシアムには。
妃翠一人だけが立っていた。
『勝者は、プレイヤー番号1357番!妃翠選手だぁぁぁあ!!』
――
いやーやっぱ強いね。
え、なにがって?
そりゃーね。
疾風怒涛ですよ。
え、初耳?
しょうがないなー。
『アーツ:疾風怒涛
取得条件:韋駄天の一撃の練度向上
消費MP:0 クールタイム:300 発動:発声
現戦闘中に与えた累積ダメージの1/3のダメージを、防御力無視で与える。
スキル発動時、累積ダメージは0となる。尚、このアーツによるダメージは累積ダメージに換算されない。
韋駄天の加護によって突風を起こし、敵となるモノを吹き飛ばし排除する。』
これ。
もはやチート級。
あーあとね、韋駄天の一撃の練度がMAXになったらしくアーツが昇華した。
韋駄天の連撃(二撃目からのダメージが30%増加)と韋駄天の痛撃(威力減衰で防御力無視)の二つがあったんだけど、痛撃にしました。
『アーツ:韋駄天の痛撃
取得条件:韋駄天の一撃の練度限界値
消費MP:0 クールタイム無し 発動:各種攻撃行動
ダメージ30%減少、防御力無視』
一撃を重視したかったからね。
あ、ちなみに練度とはどれだけ使い込んだか、だね。
数値としては表れず、0と10しか分からないんだって。
『元にいた場所に戻りますか?』
遅くね?
はい、と。
ふっ、と視界が真っ白になり次の瞬間にはギルドホームにいた。
「ただいまー」
「あら、お疲れ様」
ロビーには翡翠石一人。
「あれ?ほかの人たちは?」
「みすりるたちなら外で見てるわ」
「ギルホにテレビ置いたのみすりるだろうに……」
「外だと屋台とか出てるらしいから」
「なるほど納得」
ま、外もいい感じに涼しいし環境的にはほぼ一緒か。
「そういえばこんなもの作ってみたんだけど…」
と大きめのコップを取り出す翡翠石。
おぉ、こんな物も作れるのか。
陶器で出来た樽みたいなコップ。
すげー、このゲームも翡翠石の腕もスゲー。
なんて思ってたら。
「そっちも作ったけど、本命はこっち」
って出してきたのが、ストロー。
ただのストローにあらず。
入口が一つで出口が二つあるあれ。
「ナンスカソレ」
「あら、初めて見る?これストローなのよ」
知ってますけども!
なんで俺しかいない時にそんなもの出すんですか!




