表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

悪役の苦労

今度は、一人語りではなく、『誰か』と話しています。

『誰か』は最後に出てくるので、楽しみ?にしていてください。


今回は、やたらと『?』が多い話となっておりますが、気にせず、楽しんでいってください。

オレは、悪役だ。

いや、比喩とかではなく、本物だぜ。


あ、もちろん今流行りの悪役令嬢とかじゃないぞ? っていうか、こんなゴツいおっさんが、悪役『令嬢』とか、オカシイだろ?

うぇっ、……て言うか、想像したら気持ち悪くなってきたな。考えるのは、ヤメだヤメ。


ほら、そうじゃなくて、あるだろ? 子供向けの戦隊物。『なんとかジャー』とかつくさ、あれだよあれ。

オレは、ああいう話の、悪役なんだぜ? 凄いだろ?

って、誇れることでもないか。


え? 凄い? 役者なんだろ? って、ああ違う、違う。役者じゃないさ。

地球を侵略したって言う、本物なんだよ。

ってことは、宇宙人だって?


……まあ、そうだな。その言い方が、一番しっくり来るかもしれないな。


あ、と言っても、別に侵略しに来たとかじゃ、……あ、いや、ある意味侵略っちゃあ、侵略ってことになるのか?

はっ、いやいや、まてよ、まて。

そんな怖い顔をするんじゃないってば。別に侵略するために来た訳じゃあ、ないぞ。


単に、共存って言うか、オレが、宇宙人であることを気付かれないように密かに生きているだけであって、まあ、誰も気づかなければ宇宙人とか、いないのと同じだろ?


え? オレ一人で地球にきたのか? お金はどうしているのか? 仕事はどうしているのか?


って、おいおい、そんなにいっぺんに質問されても答えられないってば。

ええっと、まずは、何だっけ? あ、そうそう、オレ一人だけが、地球に来ているのかってことだよな?

もちろん、オレ一人だけじゃないぜ。大勢で来たに決まっているだろ? この地球で『宇宙船』って呼ばれる、大きな船に乗ってここまでやって来た。まあ、ざっと100人ぐらいは乗っていたかな?

んで、一ヶ所にいて、集まって暮らしても仕方ないだろ?


だから、みんなバラバラになったんだ。オレも、仲間全員がどこで何しているかまでは、知らないぜ?


あっ、でも、何人かは、連絡取り合ってるけどな?

まあ、お前も友人とかとの関係なんて、そんなもんだろ?

連絡取り合っているものもいれば、全く交流の無くなったものもいるんじゃねぇのか?

そうだろ? いるだろ? だから、そんなもんなんだって。


ええっと、次は、……ああ、そうそう、お金や仕事の話だったっけ?

つまり、言ってしまえば、生活ってことだよな?

生活は、……まあ暮らしていけてるって言う程度かな?


今のところ、派遣で食いつないでいるけどよ。

え? 履歴書とか、どうしてるかだって? 戸籍とか必要じゃないのかって?

必要に決まってるじゃん。オレ、戸籍持ってるし。


あ? 戸籍とか、どうやって手に入れたかだって? ……まあ、ちょっとした催眠術みたいなもんかけたんだよ。それを一瞬かけて、処理させたけどな。


って、言ってもオレがやったんじゃなくて、別のやつがまとめてやったからな、詳しくは知らねぇんだけどな。


え? そんな便利な力、持ってていいなって? まあ、普通はそう言うけど、そんなに、便利なもんでもないと思うぜ?

確か、この催眠術ってのは、長続きしないものだったはずだからな。

使えるやつでさえ、持って1時間ぐらいしか、効力はないな。オレなんて10分程度しか持たないから、生活するのには全く使えない代物だな。


それからは、まあ普通の人に混じって暮らしてる?、って感じかな?


郷に入っては、郷に従えってやつだよ。


あれ? なんか、また話、脱線してるか。

……ああ、そうそう、生活の話だったよな? だから派遣で暮らしてるんだよ。

まあ、実入りは少ないけどな。生活出来てんだから、良しってことだな。


え? これまでにどんな仕事をやって来たかだって? そりゃあ、色々だな。初めは、アルバイトで、力仕事系だったかな。手っ取り早く、お金を稼ぐには、ピッタリだしな。

だけどよ、やっぱり続かないわけだよ、体力がな。だからさ、ちょっと危険な仕事と夜のお仕事して、お金貯めて、頑張ったんだぜ。

その合間を縫って、事務系の資格とか取ったんだよ。んで、今は、派遣の事務職で働いてる。

まあ、充実した日々って訳さ。




……ああ、そういやお前、さっきオレが役者とかって、言ってなかったよな? ほら、宇宙人とかって、話してたときの。そうそう、戦隊物の悪役の話の時のだよ。

まあ、時間があるだろ? よかったらオレの天国から地獄の話、聞いていけよ。



1年ぐらい前だったかなぁ。実際に、戦隊物の悪役になろうとしたことがあったんだよ。

ほら、素人集団の……、なんてったっけ、自主レーベル映画って言うの? それの悪役をどっかの大学生がさ、募集してたんだ。


まあ、その時は、派遣契約も切れてたし、ちょっと戦隊物って、興味があったからさ、その製作立ち上げようとした人に、会いに言ったわけよ。


そいつ、ちょっとムカつくくらいのかっこいい系の男でさ、爽やかな笑顔をしてたんだよな。

戦隊物のヒーローっていうの?

まさに、その為だけに生まれてきた男だって、思えたね。こいつがヒーローの戦隊物に出てみてもいいかなって、つい思ってしまうくらいにはさ。

って、そんなことどうでもいいか。


それで、そいつに会いに行った時にさ、まあ、そこでつい口を滑らせたわけよ、『オレが悪役だ』ってな。


そのイケメンは、ちょっとビックリした顔をしたが、すぐに破顔したんだ。そして、戦隊物のことを熱く語ってくれて、他のメンバーのことも絶賛していた。

その上、『悪役は、いなければならない存在』とまで、言ってくれて、感動したね。

この青年は、戦闘物の映画を作るのにふさわしい男だって、思えたんだよ。

魂が震えるって、こういうことを言うんだなって、思った。

この男に最後まで付いていけるって、確信した瞬間だったんだよ。


でもなぁ、あれはないだろ?


あ、悪い悪い。え? それで、引き受けたのかだって? まあ、引き受けはしたんだよ、その時にはな。歯切れの悪い言い方をするって?

まあ、最後まで聞きなよ。

その時には、引き受けたんだよ。

相手、学生さんだったし、給りょ……いや、この場合は、ギャラって言うんだっけか、ギャラなしでさ、引き受けたんだよ。

ま、オレにとっては一種の記念撮影って言うやつかな。


とは言え、その間でも、もちろん、就職活動をしていたよ。んで、その時の就職活動で決まった、今の会社で働いているって訳よ。

まあ、余談だけどさ、来月から、派遣から、契約社員として雇用してくれるって言われたからな。嬉しい限りだよ。


って、そんなことどうでもいいか。

そして、それから直ぐかな。配役が決まったから、顔合わせがしたいって連絡が入って、まあ、意気揚々と顔合わせに行ったわけなんだが。


ここまでは、天国だったな。


いやぁ〜、天国だったんだぜ? まあ、派遣だけど次の就職先も決まり、映画を撮る仲間との顔合わせ。これを天国と言わずになんとする。って、お前も思わねぇか?

で、ここからが地獄。って言っても、まあ、地獄って程じゃ、ないんだけどな。ただ、期待していた分だけ、地獄に思えたんだよ。


何が起こったかって? あぁうん、いやキャスティングがなあ、いやほら、オレが会ったって言う青年が、イケメンだって言っただろ? だから、他のヒーロー、ヒロインも、イケメンに可愛い子か、綺麗な子だって、思うじゃないか。それが、蓋を開けてみたら、全然違うんだよ。あれは、詐欺だよ、詐欺。


他4人は、子供に老人にデブに妊婦だったんだ。

ほら、お前も、分かるだろ?

期待していた分の、この残念さが。

それに、戦隊物なんて出きるわけないだろ? 妊婦がいるわけだし。

っていうか、何故このメンバーをヒーロー、ヒロインにしたのか、あの青年に、問いただしたかったね。コメディ映画なら、まあ、一部は成立したのかもしれないけどよ。


っで、断ったわけよ。


あ、確かにコメディ映画だったら成立していたかもな。そして、悪役かぁ、ちょっともったいないことしたも。




……そういや、今何時だ? っげ、もう昼休憩終わるじゃねぇかよ。そろそろ帰らねぇとな。お前さんも確か面接があるとか言ってなかったか?


え? ああ、最後に宇宙人の証拠を見たい、だって?

まあ、ここには、誰もいないしな、構わんけどよ。地球人とほとんど同じだぜ? オレが悪役令嬢だって言うより、全然インパクトなんてないぞ?



だろ?



お昼、一緒に食べてくれて、サンキューな。また機会があったら、こうやって話し相手になってくれよ。じゃあな、面接頑張れよ。









「おい、何が悪役令嬢より、インパクトがない、だ。十分インパクトあるだろうが。っていうか、あれこそ詐欺の部類だろうが。厳つい顔に、あのしゃべり方。極めつけは、ウサ耳にスキップかよ」


俺は、スキップで、俺が今から行くビルに消えていった男を、目を光らせて、見送りながら思った。


面接までは時間があるし、昼時を狙って、面接を受ける会社の事務員に的を絞り、一緒に食事をとった。目的は、会社のリサーチのためだ。

そこで、思わぬ話が聞け、時間がつぶれた。


おっと、危ない、危ない。……そろそろ時間か。


俺は、ゆるりと立ち上がった。



それにしても、……同類って結構いるものなんだな。


先ほどから爛々輝いていた猫目が、完全に隠れたことを確認すると、俺は、面接会場へと向かうことにした。


まあ、二人とも宇宙人だったと言う落ちなんですが。


ええと、次は、友達にするか、ヒロインにするか、迷い中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ