表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

出会い

 『キシャ〜〜!!!』

モンスターが襲いかかってくる。

大きさは小型犬くらいの大きさで見た目はリスのようであるが、リスと違う点は尻尾が茨のようになっている事だ。

この魔物モンスターはブライアウィーゼルという。


 私はそれを左手の小太刀を使い最小限の動きで躱して右手に装備している刀で攻撃する。

切り伏せるとモンスターは消滅し、アイテムと金貨をドロップした。


「ふぅ……今日はこのくらいにしておこうかな……」


 周りにモンスターがいない事を確認した後、独り言をつぶやきながら私は腰の鞘に刀と小太刀を納める。

アキバの街から少し離れたゾーンでの戦闘訓練を切り上げて私はアキバの街へと帰る事にした。


 帰還呪文は今日は既に使用していたので、徒歩によってアキバの街に帰りながら私は《大災害》以降の戦闘を思い出していた。

あの頃は急にゲームの世界が現実になった事に色々驚いたものだった。

一番驚いたのは食事だった。

まさか、全ての料理アイテムが『味のしない湿気った煎餅』で飲み物アイテムは『味のしないただの水』だったことだ。

これから帰ってその食料を食べないといけないことに気が滅入る。

まぁ、今は忘れておこう。


 もう一つは、現実になった事で戦闘が今までどおりに戦うことが出来なくなっている事だ。

つまり、実際に自分の前にいるモンスターに攻撃したり、攻撃を受けたりして戦闘を行うという事だ。

こちらに関しては色々な人も試して判明していることもあるので知識は大丈夫そうだが、やはり実際に戦闘する事の恐怖等はあるので戦闘の訓練は欠かせないだろうと私は思っている。

勿論、戦闘をしないで街で過ごす方法もあるが、私は必要があるかもしれないと思い戦闘の訓練をしている。

今でこそ普通に戦闘ができるようになったが初めはかなり苦労した。

まだゲームだった時代にある人から少々教えてもらった事が今も役にたっているのを実感している。







 「あ〜……これはダメかな……」


夜の森の中で数体のモンスターに囲まれてしまった私は誰に言うでもなく呟いた。

表示されているステータスによると相手はダイアウルフというらしい。

本来はこういう対多人数戦に強い盗剣士スワッシュバックラーだが、この時の私はまだレベルもそんなに高くなく、このゲームも始めたばっかりだったのでどうしたらいのかも解らなかった。

まぁ、その為にこうして一人で経験値やアイテムを稼ぎに来たのだ……しかも、帰還呪文も既に使用していて今日はもう使えない……

つまり、こうなってしまったのは自業自得だった。


 折角稼いだ経験値やアイテムを失う事は嫌だったがこういう時はあきらめが肝心。

仕方ないな……と思っていると、いきなり誰かが飛び出してきた。


「失礼しますにゃ!」


 その乱入者は一撃でダイアウルフを一掃してしまった。

確か、これは盗剣士スワッシュバックラーの特技の一つ、〈ワールウィンド〉だったはず……

私が使うものよりも範囲も威力も凄かった。


「危なかったのでつい割り込んでしまいましたが、大丈夫でしたかにゃ?」


「……にゃ?」


 私はその語尾に違和感を覚えて暗い中にいる相手をじっくりと見た。

そこには紳士のようなピッチリと服を着こなし猫人族がいた。

声からしたら男性だと思う。

しかも、年上のような感じの声だった。


「我々猫人族の公式語尾ですにゃぁ」


目の前の人は私が呟いた事に対して語尾に疑問をもった事に気がついたらしく、説明をしてくれた。


「そうなんですか?」


「そうなんですにゃ」


そんなやりとりをしていたが、私はまだ助けて貰ったお礼を言うのを忘れていたことを思い出した。


「先ほどは助けていただいてありがとうございます。私はサクラといいます。レベルは20で盗剣士スワッシュバックラーです」


と、私はお礼を言い自己紹介もしておいた。


「ご丁寧にどうもですにゃぁ。我が輩はにゃん太といいますのにゃ、ちなみにレベルは90で同じく盗剣士スワッシュバックラーですにゃぁ」


 一応相手のステータスを表示させると、確かに間違いないようだ。

それにしても、つい最近の拡張パックでレベル上限が90になったばかりなのに、すでに90になっている人がいるのに驚いた。

しかも、大手のギルドの人間ならともかく、この人のギルドは<ねこまんま>という失礼ながらもまったく知らないギルドの人だった。

それだけでも、この人は強い人なのだろうと私は思った。

私はあんまり人に話しかたりするのは苦手なほうなのだが、それでもこの人に強さの秘訣を聴けたら強くなれるのではないかと私は思った。


「ふむ……お一人でこんな所まで来るのは危ないですにゃぁ……もしよろしければアキバ街までお送りしましょうかにゃ?」


と、にゃん太さんは私を気遣って言ってくれてそう申し出てくれた。


「お気遣いありがとうございます。そうですね……問題なければお願いしても大丈夫ですか?」


強さの秘訣を聴くのに渡りに船だったので私はこの申し出を受けた。


 帰り道でも私よりもレベルの高いモンスターが何度か襲ってきたが、にゃん太さんはいともあっさりと撃退していった。

それにしても、やはりここら辺は私よりもレベルの高いモンスターが出現するゾーンだった。

どこでゾーンを間違えてこんなゾーンに来てしまったのやら……今度からはゾーン情報には気を付けようと少々反省した。

……と……反省も大事だけど、今はこの人に強さの秘訣を聴くのが先だった。


「あの……少々お尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


そう私はにゃん太さんに切り出した。


「はい、我が輩で答えられることなら大丈夫ですにゃ。」


にゃん太さんは快く返事をしてくれた。


「では、質問させていただきたいのですが、にゃん太さんは先日の拡張パックでレベル上限が90になったばかりでもうすでに90ですが、どうしてそんなに早くに90になれたんですか?」


私はにゃん太さんが既に90レベルになっているという点に注目し、そこに強くなる秘訣があるのではと思い質問をした。


「ふむ……」


にゃん太さんは腕を組み右手のを顎にそえて少し考える素振りを見せた。

そして、にゃん太さんから返ってきた答えは私の予想していたものとは違う回答で返ってきた。


「そうですにゃ〜……なんで……と言われても、仲間と楽しんでいたら上がってた……という感じですにゃ」


「いえ、そういうことではなくて、どうしたら効率よくレベルを上げたり強くなったり出来るかということが知りたいんです」


にゃん太さんからの返答を聞き、私の質問の仕方が悪かったのかと思い、質問を訂正して再度質問しなおした。


「なるほどですにゃぁ……サクラさんは効率よく強くなりたいんですかにゃ?」


「はい、まぁレベル上げくらいはストレス無く上げたいと思いまして」


にゃん太さんの質問に対して私が思っている事を素直に答えた。


「それでは、レベルを上げてからはどうするつもりですにゃ?」


「それは……まぁ、レイドやいろいろな事に参加して楽しみたいと思っていますよ?」


私はにゃん太さんの質問に対して即答は出来なかった。

それは、正直に言ってしまえばあんまり考えていなかったからなのであったが、答えた事も考えには出てきたのでそのように答えてしまった。


「なるほどですにゃぁ」


にゃん太さんは何かを納得したように呟き、更に


「そうなると、サクラさんはレベルアップの過程は楽しまないのですかにゃ?」


と聞かれた。


「過程……それは、どういう事でしょうか?」


私は疑問に思ったのでつい聞き返してしまった。レベルアップをして強くなりクエストを楽しめばいいのではないかと私は思ったからだ。


「まぁ、これは我が輩の場合にゃのですが……我が輩は、先程も言ったように仲間と一緒冒険を楽しむ事が主ですにゃ。その結果レベルが上がる……という事が起こりますにゃ」


「勿論、サクラさんの言う方法等も楽しみ方の一つですにゃ。それ自体を否定はできないですにゃ。ただ、同じように強くなるんなら楽しみながら強くなった方が面白いと思っていますにゃぁ」


とにゃん太さんは自分の主張を纏めて、更に


「なので、サクラさんも過程を楽しんでみてはどうですにゃ?もよろしかったら今度、我が輩や我が輩の知り合いと一緒に冒険をしてみませんかにゃ?」


とお誘いの言葉までかけてくれた。

私は、その言葉を受けて今までを考えた。今までは強くなる事が楽しかった。しかし、それはやはり一人での作業みたいになっていて、どこか楽しくは無かったように思えた。そして、私は折角誘っていただいたのでお誘いに乗って楽しんでみようかなと思ったので、


「……はい、もし問題なければ今度よろしくお願いします」


少しだけ考えて私はそう答えていた。


「それでは、後日連絡いたしますにゃぁ」


と、にゃん太さんは告げた。


「あと、盗剣士での戦い方について解らない感じなので、その点もアドバイスをいただければいいかなと思います」


とレベルとは関係ない事で悩んでいる事を相談してみた。


「ふむ……まぁ、基本的には盗剣士の特徴……バッドステータスの効果や範囲攻撃、手数などの他の職にはない強みを強化するのはいいことだとおもいますにゃ。まぁ、最終的にはサクラさんが戦いやすいように自分で組み合わせていくのがいいのがいいかとはおもいますにゃ」


「まぁ、それも込みで今度一緒に冒険でもしましょうですにゃ。今でにない事をしてみると見えてくる事もありますにゃ」


とスキルについての相談も少しさせていただいた所で、アキバの街の門が見えてきた。


「あ、それではここまでで大丈夫です。今日はありがとうございました」


私は、そう告げた。するとにゃん太さんは


「わかりましたにゃ。それでは、後日お誘いさせていただきますにゃ。皆いい人たちなので、心配せずに楽しむといいにゃ」


と約束した後に、私が街に入るまで見送ってくれていた。






 「……そういえば、そんな事もありましたね……今思えばいろいろと独りよがりだったというか無理をしていたというか……」


と、つい呟きながら思い出し、今思えばレベルアップばかりにこだわっていた自分が少し恥ずかしい気もしないでもない。

そんな風に思って歩いていると、周囲にはまた魔物モンスターの気配がしてきた。


「……今日はもう帰りたいんですけどね……まぁ、これも修行と思ってがんばりましょうかね」


私は空腹に鞭撃ってから呟き、刀と小太刀を抜きはなって構えをとり、駆け出した。

今回は猫の旦那、にゃん太さんとの出会いの回想でした。

次回も回想の話になると思います。

次回は誰が出てくることやら。


※素人の拙い分ですが、もしも読んでいただいて何かあればご指摘等を頂けたらと思います。宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ